18.ダイエット方法模索
困惑している時間はない。
考えたって答えが出る現象でもなんでもない。
私は直ぐに便箋を出し、今起こった事を大雑把に綴ると置物侍女へ突き出した。
「今すぐ王弟殿下の元へ走りなさい」
「え、私の仕事は…」
「命令された仕事しか出来ない者はその内切られてしまいますよ」
わざと冷たい視線に低く威圧的な声で侍女を急かす。
今は少しの時間も惜しいのだ。
置物見張り侍女でも使える者は使っておかなくては。
「急ぎなさい!」
「は、はい!」
声高に命令すれば、手紙を受け取って転がるように部屋から出ていった。
二人で気まずい思いをいながら黙り込んでいると、直ぐに王弟が駆け込んできた。
「聖女様に変化があったと聞きましたが」
だからノック…
「リョウイン様見て下さい!」
いつの間にか空になった皿を手放して満面の笑みを浮かべて走り寄る聖女。
ここ私の部屋なんだけど、その恋人の再会みたいなキラキラした空気出すの止めて。
「えっと…少し戻ったみたいだね」
「そうなんです!何かこう金の粉がパァッて飛んだら体が軽くなってて!」
素直に痩せたねと言えない王弟は口籠りながら詳細を聞こうとするも、聖女の説明は抽象的過ぎて伝わっていない模様。
助けを求めるようにこちらの方に視線が向いた。
「私にも良く分からないのですが、お腹を空かせている聖女様にサンドイッチをご用意したら王太子殿下に怒られてしまいました。その後直ぐに聖女様のお体から金色の粉のような物が飛んで天井付近で消えていきました。金色の粉を目で追っていて、その後聖女様を見たら明らかにお痩せになっていたので王弟殿下をお呼び致しました」
「一瞬目を離した隙に何かがあったようだね」
「はい。本当はこちらがお伺いしなくてはいけないのですが、緊急事態なので申し訳ありません」
「それは構わない。ところで聖女様は体に変化があった時に何か感じたりしていないのかい」
呼び立てるなんて不敬だと怒られずには済んだのは幸い。
興味深げに聖女を観察している王弟にほっと一息吐く。
「何にもありません。気がついたらこんな感じでした」
聖女自身も不思議そうに自分の体を見下ろしてお腹の辺りを撫でていた。
そこで私はハッとして聖女と王弟の間に体を滑り込ませた。
二人とも不思議そうに私を見る。
本当に分かっていないのか。
「離れて下さい。聖女様もそんな寝間着の薄い装いで殿方の側に寄るものではありません」
きょとんとした顔を睨み見返すと二人同時に顔を赤くして慌て出した。
「ごっごめんなさい!忘れてたの!」
「こちらこそ申し訳ない。もっと配慮するべきだった」
照れる二人をうんざりした気分で観察していると胸が詰まるような気がした。
「で、何故このような事が?」
心底面倒臭くなった。
「そ、それは少し調べてみる必要がある。ヘライルに怒られたと言っていたが、何故か聞いてもいいか」
「私が太ったのは自己管理出来ていない証拠だから食事制限を設けるって言われたの。でもお腹が空く一方でキッチンに行ったら断られて困っていました。そこにレイディアさんが通ってこの部屋に連れてきてくれてサンドイッチまでご馳走してくれたんです」
「食事制限は関係ないと思うのだが」
「私もその意見に同意致します。聞けば王弟殿下達の食事と同じ物だったとか。それに食事のせいでここまで急激に太ったという事ならば、何かの病気等の可能性が大きい上に健康被害もあると考えられます」
「確かにな」
「ですが、聖女様は健康のように見受けられます。それなのにサンドイッチの事を誰に報告されたのか、怒鳴り込んで来たのです」
そこで気配を消して置物侍女になっていた彼女を睨むと逃げ出したそうに震え始める。
もうどこかに行ってくれないかな。
「後は聖女様は怒鳴られた後に好きで太った訳ではないと泣いてしまわれました。その後落ち着きを取り戻したら金色の粉が舞い上がったのです」
「そうですか。涙が引き金か…」
「……旅の途中でも泣いたけどこんな金粉出てこなかったし、痩せなかった」
私達の勝手な事情で呼び出して旅をさせていたのを心苦しく感じた。
私と同じ歳。
知らない土地で知らない人達の為に頑張るなんて私に出来るのかしらなんて考える。
無理。親元を離れただけでも寂しく悲しいのに知らない無関係の人間を助けろなんて可笑しいもの。
「聖女様」
王弟も重苦しい表情をしながら気遣わしげに聖女を見ていた。
「歴代の聖女様の記録には浄化したとしか書かれていないのが現実だ。それがそれぞれ浄化の仕方が違うのなら美華様独自の浄化方法があるのかも知れない」
「レイディアさんが頭を撫でてくれた時に凄く安心したからとか?」
何故か爆弾投下してきた。
「撫でてなどおりません」
「え、撫でてくれたじゃないですか」
「ゴミ…ゴミが着いていたから取っただけです」
嘘だぁという聖女と置物侍女の視線を見なかった事にした。
「レイディア嬢の行動が何かの引き金だったのかもしれない」
私の否定は無かったことにされて王弟が私を見つめながら考え込んでしまった。





