09
目の前に小悪魔が浮いている。
夜になって。
気がついたらドミドゥがいた。
ちゃんと戸締まりはしてたのだけれど……。
まぁそういうのは関係なさそうだな。
そうあさひは結論づける。
ドミドゥがいることが普通に思えて。
なぜだかあたり前のことのように感じた。
あさひ「それで……」
あさひ「何か用でもあるのか?」
ドミドゥ「ソウダナ」
ドミドゥ「ヨウスヲミニキタ」
ドミドゥ「ッテトコロダ」
あさひ「様子って俺の?」
ドミドゥ「オマエイガイニナニガアル?」
あさひ「そうする理由は分からないんだけどな」
あさひ「…………」
ドミドゥ「ドウカシタカ」
あさひ「いや……」
あさひ「何だか変な感じがして?」
ドミドゥ「ヘン……?」
あさひ「こうやってドミドゥと喋るのが」
あさひ「懐かしいというか……」
ドミドゥ「ソウナノカ」
あさひ「そうなんだよな」
と考えても。
やっぱりドミドゥとは初対面のはずだし。
何かの気のせいだろうとあさひは思う。
ドミドゥ「ホカニハ?」
あさひ「他に?」
ドミドゥ「ホカニナニカキニナッタコトハナイカ?」
あさひ「気になったこと……。
と考えて。
そちらの方はするっと出てきた。
あさひ「街に見覚えがあるようでない家があるんだ」
あさひ「何だかすごく気になって」
あさひ「何かすごく大事なものがあるような……」
ドミドゥ「ホウ……」
あさひ「えちるに聞いても普通の家って言うし」
あさひ「多分他の人に聞いても同じだと思う」
あさひ「見た感じは普通の家だし……」
ドミドゥ「ソレデモオマエハソレガキニナルンダナ?」
ドミドゥの質問にあさひはうなずいて答える。
やっぱりあさひはあの家のことが気になって。
家の中に何があるのか確かめたくなって……。
あさひ「それに……」
そう言ってあさひは視線を動かす。
ドミドゥのすぐ横。
置いてあるくまのぬいぐるみ。
いわゆるティディベアというもの。
あさひ「ずっと置いてあるけ」
あさひどこれって俺のだったかなって……」
どう考えてもあさひの趣味ではない。
でも……。
ずっと前からそこにあって。
誰か大事な人から貰ったような気がして……。
でも、それは……。
えちるではなくて……。
あさひ「何か大事なことをすっぽりと忘れてるような気がするんだよな」
ドミドゥ「……オモイダシタイカ?」
あさひ「……俺は何か忘れてるのか?」
ドミドゥ「ソレハオレニモワカラナイ」
ドミドゥ「デモ……」
ドミドゥ「ソノイエニハイレバナニカワカルカモナ」
あさひ「…………」
あさひ「……まぁ気が向いたらな」
何か大事なことを忘れてる。
そんな感覚はあるけれども。
意識したらさらに大きくなったのだけれども。
そういうことはよくあることかもしれない。
ドミドゥ「シカシココハイイセカイダナ」
あさひ「そうだな」
ドミドゥ「ミンナシアワセデ」
あさひ「うん」
ドミドゥ「ケンカモイジメモギャクタイモナクテ」
あさひ「うん」
ドミドゥ「ソシテ……ダレモシナナイ」
みんなが幸せなのは当たり前。
喧嘩、虐め、虐待はフィクションの世界のものだ。
もちろん誰かが死ぬことだって……。
あさひ「でもそれって当たり前のことだろ」
ドミドゥ「コノセカイデハナ」
あさひ「そうじゃない世界もあるってことか?」
ドミドゥ「ソウダナ」
ドミドゥ「ソウジャナイセカイモアル」
ドミドゥ「デモココハ……」
ドミドゥ「ホントウニユメノヨウナセカイダナ」