01
少女は夢を見る。
短く静かな夢を見る。
みんなが幸せになれるように。
みんなが幸せでいられるように。
心から祈りながら。
今日も少女は夢を見る。
あさひ「朝だぞ」
あさひ「起きないと遅刻するぞ」
いつもの朝の時間。
いつものように。
あさひは幼馴染を起こす。
少し雑に体を揺らして。
あいが起きるのを待っている。
あさひ「起きないな……」
あいが寝坊するのはいつものこと。
なかなか起きないのも同様だけれど。
今日は何だかいつもと様子が……。
でも……。
幸せそうに眠っているあいを見て。
穏やかに眠っているあいを見て。
あさひ「そろそろ起きないと…‥」
ちらりと時計を見る。
あいはのんびりと寝ているけれども。
時計はしっかりと時間を刻んでいる。
あさひ「遅刻するんだけどな」
あさひ「まぁ別にいいけど」
あさひは大きくあくびをする。
幸せそうに眠っているあいを見て。
眠気がうつったのかもしれない。
あさひ「あまり起きないようなら……」
あさひは部屋の隅を見る。
あさひ「俺も寝てもいいかもな」
そう思った時だった。
あい「うん……」
あい「あれ……もう……朝?」
あいがゆっくりと目を開いた。
眠そうな目であさひを見ている。
あさひ「ばっちり朝だぞ」
あい「そうなんだね」
あい「おはよう」
あさひ「……おはよう」
あさひ「…………」
あさひ「そろそろ準備しないと遅刻するぞ」
あい「うん」
あさひ「今日はぐっすり眠ってたな」
あさひ「起こしてたけど全然だったぞ」
あい「えっとね……」
あい「夢を見てたんだ」
あさひ「夢?」
あい「うん」
あい「夢はいつも見るんだけどね」
あい「今日のは何だかね」
あい「いつもと違ってて……」
あさひ「どんな夢だったんだ?」
あい「それは……」
あいは自分が見ていた夢を思いだそうとするけれど。
ぼんやりした頭で考えるけれども。
あさひが待っても言葉は出てこなくて……。
あい「忘れちゃった」
あい「何か大事な夢のような気がしたんだけど……」
あさひ「まぁ夢ってそんなもんだろ」
あさひ「外で待ってるからすぐに準備しろよ」
あい「うん」
あい「…………」
あさひ「どうしたんだ?」
あい「いつも起こしてくれてありがとう」
突然のお礼の言葉。
いきなりのことだったから。
あさひは驚いてしまって。、
あさひ「…………」
何も言えずにあいを見た。
あいはあいも変わらずベッドの上で。
何だかまたこのまま眠ってしまいそうな。
そんな雰囲気も感じ取れるような……。
あい「あのね」
あい「あさひが起こしてくれなかったら」
あい「ずっとずっと眠ってそうって……」
あさひ「……何だかしゃれにならない気がする」
実際のところ。
あさひが起こしに来ない休日は。
夕方まで起きてこないことがあると。
あいの母親に聞いたこともあって。
あい「だから……」
あい「そう考えちゃったから……」
あい「ありがとうって」
あい「言いたくなったんだ」
あさひ「それなら明日からはもっと早く起きろよ」
あさひ「たまには俺が起こしてもらってもいいと思うぞ」
あい「それは難しいかな」
あい「あさひに起こしてもらわないとね」
あい「何だか起きたって感じがしないから」
あさひ「それは重症だな」
あい「うん」
あい「重症かも」
でも……。
素直に嬉しいとあさひは思った。
今日もあさひはあいを起こす。
今日もあいと話ができる。
それが分かればいいと。
あさひは思って。
あいもきっと。
同じように思ってくれてると分かって。
この時間はいつか。
終わってしまう日が来るのだけれども。
今はこの幸せを大事にしようと。
あさひは思った。




