山の噂
屋上での出来事から1週間が経った。すっかりと習慣になってしまった。喜ばしいことであるため嫌だとは思わない。むしろ嬉しい。まぁ誤解を生むかもしれないが。
あの出来事以来、毎朝悠貴の家に凛が呼びに来る。そして毎朝悠貴は凛とミラと一緒に学校へと向かう。もちろんミラは認識阻害の掛けているが。
「悠ちゃん、今日もいい天気だね。」
「あの毎朝言ってるけど、悠貴は私のものなんだからね。凛。」
「でも私の方が悠ちゃんのいい所いっぱい知ってるもん。」
「私なんて悠貴の入浴シーンも見たし、一緒に悠貴のベッドで寝たし。つまり悠貴は私のものなの。」
「どちらのものでもねぇよ!」
凛がとてつもなく羨ましそうな顔をしている。
かわいい。これが率直な感想である。
最近凛に「悠ちゃん」という愛称で呼ばれている。というか凛は悠貴に好意を抱いているらしい。しかし困ったことにミラも悠貴に好意を抱いているのだ。
あの出来事以来仲良くしているミラと凛だが毎日のようにこの会話が繰り返される。
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時を遡ること1週間前。悠貴が凛を抱きしめて意識を失った以降の話。
ミラの『夢実現』で作り出した巨大トランポリンに無事着地した悠貴と凛。しかし悠貴は意識を失ったままであった。その後悠貴が意識を取り戻したのは翌朝のことだった。
話を戻そう。
無事着地した悠貴だが、流血がひどかったため凛が木属性の魔法である『治癒魔法』を掛けてくれたおかげで一命取り留めた。
これが『邂逅の末路』の末路である。
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時を戻して現在。
この2人が悠貴のことを好いてくれることは悠貴にとっても利益があった。凛が協力してくれるようになったため、敵が現れても主戦力として戦ってもらうことができる。そしてミラは凛のサポートととして立ち回っていってもらえる。
(悠貴は特に何もしないが)これで戦力を得ることができた。
{こうでもしねぇとな。この世界にやって来る亜人どもはタチが悪いんだ。}
心の中で悠貴はそう呟いた。
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学校での昼休み。
「なぁ悠貴知ってるか?」
話かけてきたのは前の席の山田だ。
いや。いきなり知ってるか?って聞かれてもわからねぇんだけど…
「何を?」
「なんだ悠貴知らねぇのかよぉ~。」
いやいやいやいや。知らん知らん。マジで何の話だよ!
「鬼山に竜が出るって噂。まぁ誰も信じねぇだろうけど」
「さすがにこの年でその噂は無理があるよなぁ」
山田に続けて話したのは、太った体が特徴的な川上だ。
まぁ数日前の悠貴ならもちろんそんな噂信じなかっただろう。
しかし『亜人』という存在を知ってしまったため疑うことをしなかった。
{調べてみる価値はありそうだな}
{悠ちゃんが言うなら着いて行くよ}
最近凛と意思疎通ができるようになった。
今のがその一部始終である。
とりあえずその鬼山に調べに行くことに。あとはめんどくさいので話はテキトーに聞いておいた。
その日の夜。
月明かりに照らされる鬼山に非常に大きな体躯をした生物の影が映った。




