邂逅の末路
ある少年は1人のサキュバスを、そのサキュバスの夢を守ってみせると、そう決意していた。サキュバスの夢、それは魔王軍や聖龍軍などという区切りをせずにみんな平等に、仲良く平和な亜人界を作る。たったそれだけのこと。その夢を叶えるために魔王軍に説得したが、逆に見捨てられ自分の居場所を失ったサキュバスを守るのだと。その子をサポートし、共に夢を叶えるのだと、1人勝手に決意していた。
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暗くなってしまった空に紅い血が舞い上がった。ミラの足元には凛に斬られ流血している悠貴の姿があった。
「悠貴!しっかりして!どうして!?どうして私を庇って…」
「貴様、そのサキュバスを庇うのであればお前も敵と見なし殺すまでだ」
「ハァ…ハァ……。」
呼吸がある。悠貴はまだ生きている。
「ゲホッ…ゲホッ……なぜ俺がお前を庇うのか…理由なんて…1つしかねぇ…。」
「───?」
「───?」
例えどんなに己の体が壊れようとも、どんなに体から血が噴き出ようとも、必ずミラを守る。戦うことのできない悠貴がミラのために出来ることはこれしかなかった。それが悠貴の決意である。理由などそれしかなかった。
「汚らわしき魔王軍の亜人であるそいつを守ったところで何が生まれるというのだ。人間。」
「マジで考え方が人間じゃねぇな。そもそも正義感を持つ種族だったらもう少し秩序を守れ。」
「無秩序の塊である魔王軍を庇うやつが秩序を語るか。なぜそんなにやつを庇う?殺されたいのか?」
傷が痛い。しかしその痛みを忘れるほどに悠貴は憤りを、憎悪を感じていた。悔しかった。ミラの存在を蔑まれたこと。殺されても構わない、それほど悠貴はバカにされたとこを許せなかった。
「俺がミラを庇う理由?簡単なことさ」
・・・・・
「全力で夢に向かって走り続ける亜人を全力でサポートしてやりたいって、守ってやりたいと思って何が悪いんだ!!!」
「───悠貴…」
「確かにミラとは今朝出会ったばっかで何も知らねぇ。けど、俺はこいつの夢を叶えさせてやりたい。俺の勝手な決意だ。」
「──────ッ…」
「ミラ、下がれ。俺が気を引いておく」
「わっ…わかった。けど、相手に丸聞こえだよ?」
悠貴に言われた通りミラは凛から距離をとる。しかし最後の言葉は思い切ってカッコつけた悠貴に強烈な精神攻撃を与えた。
逃げるミラを追いかけようと凛が動く。が、悠貴が凛の腕を掴みそれを阻止。しかし重症を負っている悠貴の力は弱く簡単に解かれてしまう。
悠貴の目の前でミラが屋上の端に追い詰められていく。そして凛は風になって突進した。
「エルフのスピードの前に散れ!」
「残念だったね。エルフさん。」
闇属性魔法『影分身』
凛は勢いはそのままにして屋上から転落。確かに影分身は成功した。ミラの命も助かった。でもそれだけではダメなのだ。凛も、凛も救ってやらなければならない。凛も同じ亜人。見殺しにはできない。
「待てぇ!!そのまま死んでおしまいなんてオチ、絶対に許さねぇぞ!!」
悠貴は自ら屋上から飛び降りた。何かができるわけでもないのに。何もできないのに。そんな簡単な判断でさえできないほどに悠貴の意識は狂っていた。
奇跡だ。
悠貴はなんとか凛の腕を掴んだ。凛の体を抱きしめた。瞬間悠貴は意識を失う。目の前が真っ暗になる。しかし死んでしまったわけではない。生きている。生きている証拠に声が聞こえる。
「『夢実現』!!!」
ミラの声だ…
温もりを感じる。熱いほどに。溶けてしまいそうなほど熱い。凛の体温を感じる。
しかし悠貴はそれ以上、外から情報を得ることはなかった。




