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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第六部 冒険者 魔獣 チート能力

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♯93 一時帰還 ―イレギュラーに襲われると行軍が止まる不具合、修正されろ―

 「ん‥‥、ふぁあああああ‥‥‥」

ボリボリと頭を掻きながら視線を巡らせると、半透明の六呂と寝息を立てているバレインさんが見える。

体感で恐らく朝の5時くらいだろうか‥‥。


 ちょっと早いけれど、移動の準備も考えて身支度を整えておこう。

タープに追加した布を捲って外を窺うと、相変わらず天上にぶら下げられたまま簀巻きになっているベゲットが見えた。

拘束から3,4時間は経っているんだけど、まだもがいているのか左右にユラユラしている。


 よく考えたら魔法で拘束すれば良かったかな?アウリョイナさんみたいに。

ぐるりと見渡し、ベゲット以外にも動体反応が無い事を確認して、結界を解除。ゆるりと水場へ向かった。




 身支度を整えて食事の準備をしていたら、六呂とバレインさんも目を覚ましたらしい。

六呂は寝る必要あるのかと思いもしたけれど黙っておいた。


 「済みません、全部おね、ミシロ様にさせてしまって‥‥」

 「偶々早く目が覚めて、手持無沙汰だっただけですし、お構いなくー」

 『重蔵、儂も食いたい、体出せ』

 『はいはーい』


 六呂を見て取り乱したバレインさんを宥めて、大声におびき寄せられた魔物を倒してから片づけを終えるのに、結構な時間を使う事になった‥‥。

てへぺろ。







▼独立商業都市:ヴォルパ 冒険者ギルド ヴォルパ支部





 地下洞窟から戻って時間は正午過ぎ。

最短距離を、刀鴉(とうあ)の結界を乱用して、時に激しく、時に大胆に、時に優しく魔物と戦って、途中から死にそうになっているバレインさんを背負った上、レクスには悪いけれどそのままの勢いで通り過ぎ、ヴォルパまで返ってきた。

多分この返り時間はギネス記録だ。

こっちには存在しないけど。


 精魂尽き果てた様子のバレインさんは都市長舎で休んで貰っている間に、ギルドの受付で事のあらましを伝えると、そのまま支部長室に通された。

待っていたのは、ゴーノさんと、秘書官のバヘルさんだ。

バヘルさんは壮年の男性(人間)で、ギルド本部から派遣されたらしい。


 「おう、ジュウゾウ、迷惑かけて済まんかったな‥‥」

開口一番、ゴーノさんに謝られてしまった。

迷惑は迷惑だけど、ゴーノさんが悪い訳では無いし、身柄を引き受けて然るべき処置をしてもらえるならどうという事も無い。


 「いーえー、大丈夫ですよ。それで、こういう場合はどんな形で処分されるんです?」

 「それについては私からご説明いたします」

ゴーノさんの後ろに控えていたバヘルさんが、分厚い辞典みたいな物を開きながら一歩前へ。

どうやら冒険者ギルドの決まり事が書かれている本らしい。ちょっとした図鑑くらいの厚みが有るんじゃ無いだろうか。


 その後、色々と説明して貰ったんだけど、ギルド側の処分としては冒険者証の剥奪と、今後一切、ギルドの関係している施設等の利用不可だそうな。

関係施設って言うと武器・防具・道具屋も含まれる筈なので、旅すら出来なくなるね。


 で、実際に罪を問うのは王都の裁判所らしい。

ギルド側も全面的に協力する形で余罪の追及等も含めて、拷問にもかける事が有るとか。

冤罪だったら、たまったモンじゃないけど今回は普通に自供してたし、その辺も確りと伝えておいた。


 因みに、ベゲットが言っていた【英雄(オウラ)級の女】についてはバヘルさんも分からないらしい。

世界中で現在は13名しか居ないらしいけれど、女性が6人らしく、その6人についても世界中を忙しく飛び回っているらしいので、誰が該当するか分からないんだとか。

つい最近までは10名で、男女比が4:6だったらしい。

この世界の女性は思ったよりも逞しいのかも知れない。


 「そうですか。では、ベゲットの証言は先程の紙に書いて有りますので、捜査にお役立て下さい」

何せ奴隷にして楽しんだ後は売るなどして稼いでいたのだろう。

全部の罪は問えずとも、可能な限り確りと罪を暴いてほしい。


 「また何か有ったらいつでも来てくれ、お前さんならいつだって歓迎する」

 「うん、ありがとう」


 結構疲れたけれど、考えていたよりも法律関係は整備されているみたいだし、これならそのままヴォルパでも裁判所は作れそうだ。

学校施設も含めて、バーンさん達と話してみよう。







■■■





 ギルドへの身柄の引き渡しを終えて一段落ついたところで、重蔵は少々迷っていた。

深度が不明の地下洞窟に挑む以上、一人で出向いて何か有ってはいけないと、殆ど重蔵専用の依頼で有りながら、受注条件は2名以上になっているのだ。


 会議の際には勿論それで納得していたし、彼自身も覆数名での地下洞窟探索については、若干楽しみにしていた部分も有る。

特に公的な調査結果としてギルドに提出するならば、第三者の同行が必要だと思った為、重蔵から申し出た程だ。


 所が結果は、2名の同行者の内1名が犯罪者であり、その上最悪の場合バレインが捕まって行方不明になっていた可能性すらある。

‥‥勿論、魔法・スキル・式神・召喚と、打てる手が飽和的に有るので、その可能性は0なのだが。


 自身の過剰スペックに気が付かない重蔵は、今回の件で大いに反省している。

最初にステータスの確認等を行って居なかった上、自分よりも弱いと思っていた相手のスキルにまんまと出し抜かれたのだ。


 今回の一件は、重蔵の未熟さが招いた結果とも言えるだろう。

では、面接の様な事をして、最初にスキル等を確認しておけば良かったのか?

本部に問い合わせて、素行等を調べてから‥‥?

そもそも誰かを連れて行く必要性は有るのか。


 ギルドの案内板の前で腕を組んだまま唸る重蔵のせいで、この日の依頼受注数は前日の半数近くに落ち込んだのだった。









▼ログロの地下洞窟 一階層





 「昨日はゆっくり休めました?」

ヴォルパに戻った日、そのまま翌々日を再出発日と定めて解散したので、あの珍事から丸一日。

結局新しいメンバーを呼び入れる事無く、バレインさんと僕は洞窟内の暗い道を、ランタン片手に歩いていた。


 「はい!ご迷惑おかけして申し訳ないで有ります‥‥」

しょーんとしたバレインさん。この人僕の中でドンドン犬化していってる気がする‥‥。

 「僕の確認不足の方が致命的ですから、謝らないで下さいな」

 「おね、ミシロ様‥‥」

んー、まだ慣れないか‥‥。

呼び方についてはもう様付けでも良いから淀まずに言えるようになってもらいたいなぁ‥‥。

なんて考えていると、バレインさんから人数について質問が飛んで来た。


 「そうですね、前回踏破した7階層目までは、2人でも問題無いのでこのまま進みます」

 「8階層目からは、どうされるのですか?」

 「必要が有れば六呂に出て貰います。今の内に心構えだけお願いしますね」

 「っ!‥‥はい‥‥」

 『くくっ、怯えておるわ』

 『六呂‥‥』


 まぁ、デスヨネー。

バレインさんと僕のファーストコンタクト。

これは結構壮絶なインパクトだったろうし、仕方ないと言えば仕方ない。

正直うろ覚えな部分も有るけれど、拷問めいた事をしたのは覚えてるし、あの黒虎状態の僕を‥‥。ん?


 あれ?そう言えば何で狐仮面は大丈夫で六呂は大丈夫じゃないんだろう‥‥。

どっちも黒い狐なんだけど。あ、今は白い狐仮面だった。


 うーむ‥‥謎は深まるばかり‥‥。


 なんて、色々と話したり魔物と戦ったり考え事をしながら進んでいると、4階層目の中間辺りでお昼休憩の時間になった。


 前回はベゲットに調理を任せた結果、薬を盛られるという間抜けな事件が起きたので、今回は朝一で作って来たサンドイッチを持って来た。


 [空間操作]の‥‥あ、時空間魔導に変わったんだった。

[時空間魔導]と[覆理魔導]を同時に発動する[隔離(アイソレイション)]で、時間の経過についても少しだけいじれる様になった為、これからは食材他諸々の劣化を気にせずに旅が出来る。

今回はこちらに食材関係を保存して、その他腐ったりしない物については今まで通り[空間操作]で作り出した場所に放り込んである。


 時間の経過については、少しだけいじれると言っても作り出した隔離空間の時間経過を遅く出来るだけだ。

時間を完全に停止させたり、巻き戻したりは出来ないので、そこまでトンでも無い性能では無いと思う。

思うけど、周りにはバレ無い様にしておこう‥‥。


 「お、ミシロ様、とても美味しいでありますね‥‥。お料理もお出来になるのですか‥‥」

 「お口に合ったなら何より。余り凝った物は出来ませんし、普段は動き回っていて作る機会も少ないんですよねー」

それこそ、こっちに来る前は一人暮らしをしていた訳だし、雑把な男の料理くらいならしていたけれど、最近はレーネさんが作ってくれたり、出歩く時は野草や動物の肉を焼いただけという料理からは遠い物ばかり食べている気がする‥‥。

うーむ。


 早く調査を終わらせて、レーネさんの手料理が食べたい。

少しばかり不順な動機を胸に、食休みを挟んで再び歩き出した。







▼ログロの地下迷宮 六階層





 「うーん‥‥、今日はこの辺にしておきましょうか」

 「私は‥‥、まだ‥‥、動けるで有ります‥‥!」

膝に手を吐いて肩で息をしているバレインさんを尻目に、タープを改造した大きめのテントを広げる。


 「まだ行けると思っても、時間や体力等を考えて早めに休んでおく方が、生存率は上がると思いますけどねー」

 「ですが‥‥、前回よりも進めておりません」

 「言うと思いました。行軍速度は前回よりも落としてありますので、僕にとってはこれくらいが妥当なんですけどねー」

どうしても納得できないなら進むか聞く為に振りかえると、バレインさんは涙目で下唇を噛んでいる。

無表情でソレをやられると、単純に怒り心頭と言った風情なのでご遠慮頂きたい。


 「お姉様はどうやってそれほどまでにお強く成られたのですか!?」

おい、呼び方‥‥。

移動中も何度か戦闘はしていたし、前回と違って僕も前衛として殴ってたからなぁ‥‥。

何か言われるカモとは思ってたけど‥‥。


 「生まれた時からこんな感じなので、戦いながら生活してきたから。とか?」

ぶっちゃけ、レーネさんに助けて貰ってからこっち、戦ってレベルと能力値が上がって、レベルが下がって能力値は上がり、戦ってレベルと能力値が上がって‥‥。を繰り返して来たので、簡単に説明できる状態じゃないのだ。

なんでレベル下がっても能力値上がるんだよ‥‥。


 「戦い続ければ私も‥‥」

何その戦闘民族。怖い。


 「‥‥折角ですし、明日からは少し訓練してみましょうか?」

 「訓練‥‥でありますか?」

何時の間にか隣に来ていたバレインさんが、地面に置かれたままのテントの骨組みをいくつか持ち上げて、運んで行く。


 「戦闘訓練、簡単な物でよければ、ですけどね」


 テントが出来上がるまでに少しだけ内容を説明して、晩御飯を済ませた僕らはそのまま眠りについた。

なんやかんやで、僕も楽しんでいるんだろうか。

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