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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第六部 冒険者 魔獣 チート能力

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♯90 依頼 ―こんなんラブコメ展開とは言わない―

 初めての依頼は『ログロの洞窟、未踏破階層の調査』を受ける事にした。


 商業都市:ヴォルパにも、別の街や都市から冒険者や商人が集まってきている事だし、先に或る程度危険の無い所までは調査して置いて、僕が進めない様な辺りからは、立ち入り禁止にしてしまおう。

という話に落ち着いたからだ。


 因みに、他の依頼では森の中に自生している植物の採取や、魔物の素材集めから、自警団の補佐に家の掃除等、種類も数も、結構増えてきていた。

冒険者ギルドも、にわかに活気づき始めたという事で、個人的には嬉しかったりする。


 さて、ヴォルパにとって、地下資源(鉱物に限らず、水や植物、魔物の素材等)は重要であり、これから貿易規模を拡大するにしても、都市機能を拡充していくにしても、先ずは自力でどうにかできる所に手をつけるべきだ。と、都市長となったバーンさんに、村の運営に携わっていた皆を交えた都市会議で、満場一致の可決を得、以前ログロの地下迷宮に潜った事も有る僕に白羽の矢が立った訳である。


 「‥‥そこまでは何も問題無かったんだけどなぁ‥‥」

 「お姉様、何かお困り事でありますか?」

 『良かったな、重蔵。妹が出来たぞ』

 「あん?お前ら姉妹だったのか?」


 僕の独り言に、後ろを着いてきている人種から、それぞれ声がかかった。

お姉様ってなんだ‥‥。


 一人は何週間か前にヴォルパに来て活動を始めた、ボッチ‥‥もとい、ソロ冒険者のベゲットさん。

階級は騎士(クェラ)級で、北のハマヌ大陸のセイルン共和国で生まれ、冒険者になってからは力を付けながら各地を転々、ここロ・ルゴナ大陸に来る前は東のパロバ大陸で活動していたらしい。

年齢は32歳で、筋骨隆々の坊主頭で前衛職。

額に大きな傷が有って、なんでもワイバーンと戦った時に出来たとか。

ワイバーンとか一回は見てみたいなー。


 そして、もう一人がまさかのバレイン・ストーツ。

前回の感じからも推察できる通り、ストーツさんも前衛だ。偏り過ぎてる気がする‥‥。


 とは言えともあれ、彼女も今回の調査に同行する事になったのだ‥‥。


 会議の際に同行者を数名と考えていた訳なんだけど、前回同行してくれたドワーフ達は、皆が要職に就いていて身動きが取れず‥‥、というか、ぶっちゃけた話、僕以外の殆どの皆が働いているので、

・一定以上のステータス

・実戦経験

・時間を融通出来る人材

という条件で立候補の上、有用性の熱弁を振るわれて面倒になって同行を許可してしまった‥‥。

立候補からの演説で三十分。 そこからのプレゼンで三十分。 最後に僕を説得すると息巻いて一時間の、計二時間。

面倒になって首を縦に振った僕の気持ちも理解して貰いたい‥‥。


 「‥‥独り言なんで、話しかけないでもらえます?」

 「‥‥も、申し訳有りません‥‥」

 「そりゃ人種も違うし姉妹な訳無ぇか」


僕の返答に、鉄面皮のまま慌てるという小器用な真似をする、頬を染めたストーツさんと、何とも微妙な顔のベゲットさん。


 本当なんだこれ‥‥。おい、笑うな六呂。笑うな。この依頼が終わったら覚えとけよ‥‥。




■■■





 結局、会議が完全に終了してから更に一時間かけて調査の支度を終えた僕は、レーネさん宅に一泊してから待ち合わせ場所へ向かった。


 出がけに、レーネさんからはお守りにと、綺麗な陶器片をこれまた綺麗な織物で包んだ首飾りを貰って、お返しに王都への旅の途中に小さな宿場町で買った花の髪飾りをプレゼントして出発した。


 行ってらっしゃいの完璧な笑顔は、僕の心に永遠に保存され続けるだろう。

っていうか、これだけでもう出かけたくなくなるんだけど、流石に依頼を受けた身としては反故には出来ない。

 っていうか、自己都合で勝手に依頼をキャンセルすると違約金+ギルドでの評価ダウンに繋がって、最終的には冒険者証の剥奪も有るらしい。


 当然と言えば当然か。



 「お姉様!此方であります!!」

‥‥‥ハァ‥‥。


 無表情な筈なんだけど、若干潤んだ瞳で此方を見ているストーツさんの顔を見て、苦虫を噛み潰した様な顔の僕を笑う六呂は、本当に楽しそうだ。

ベゲットさんは普通に手を振ってる。





▼ルゴナ大森林アブロ山西側 ログロの洞窟入り口 管理門前



 ロ・ルゴナ大陸の50%以上を占める、ルゴナ大森林。

人跡未踏の広大な森林地帯は、この大陸に人の手が入って200年程が経過した今持って尚、地形や生息している魔物や動植物についても、殆どが知られていないらしい。


 「ストーツさん、確認なんですけど」

 「お姉様!私の事はバレイン!と!お呼び下さい!」


 『‥‥重蔵、此奴大丈夫か‥‥?』

親しい間柄の人達からはバリーという愛称で呼ばれているので、もし良ければ‥‥とか、頬を染めながら捲し立てるストーツさんを見て、流石にそろそろドン引きしだした六呂。

僕はと言うと、仮面で顔が隠れているのを良い事に白目を剥いて固まっていた。


 「私、自身の犯した罪を少しでも雪ぎ、お姉様やヴォルパの皆様に少しでも」

 「あー‥‥、そういうの要らないんで、打ち合わせをしましょうか」

 「‥‥申し訳ありません‥‥、よろしくお願い致します」

 「おい、何が有ったかは知らんが本当に大丈夫なんだろうな‥‥」

一気にしおれたな‥‥。怒られた犬みたいな感じだ。


 『なかなかの欲だな‥‥』

 『何!?欲って何!?誰の!?怖いんですけど!』


 まだ地下にも潜っていないのに、疲労度だけが嵩んでいくのは、きっと気のせいじゃないと思う‥‥。


 ‥‥いつまでもコントみたいな事してないで、本題に入ろう。


 「先ず一つ、ヴォルパの皆は‥‥、まぁ済んだ事として気持ちに整理は付けてるでしょうし、蒸し返す様な事が無ければ僕から貴女に言う事は有りません」

 「‥‥はい」

紅潮していた頬が一瞬で蒼白になったストーツさん。

案外メンタルは豆腐らしい。


 「それともう一つ、慣れ合うつもりは有りません。呼び方も変えませんので悪しからず」

 「‥‥はい、承知しました」

 『この娘、案外表情豊かよの‥‥』

 『表情筋は余り仕事してないのにねー』

そんな遣り取り。なんか若干だけど絆(ほだ)されそうな自分が嫌になった。


 ので、気を取り直して。

 「それじゃ、行きましょうか、これは飽くまでギルドからの依頼です。体調を含めて何か異常が有れば報告して下さい。これは順守して下さいね」

 「おう」

 「はい‥‥!」

 「行きましょうか‥‥」

 「面倒にならないと良いんだがな‥‥、頼むぞ」

 「えぇ、無理はしない方向で行きましょ」


 嗚呼、平穏無事な生活に早くも帰りたい今日この頃。皆様如何お過ごしでしょうか。





▼ログロの地下洞窟 三階層 レクスの地下庭園




 すでにお馴染の地下庭園。レクス達が生活する邸宅を前に、ベゲットさんもストーツさんも完全に無表情で硬直している。


 ここまでの道中、この庭園が防波堤の役割を果たしている為、魔物の影は一切無しだったので説明はしておいたのだけど、やっぱり実物を見るとそりゃ驚くよね。


 何せ日の光が届く地下空間に、この世界ではまだヴォルパにしか無い鉄筋コンクリート造の邸宅がドーンとおっ建っているのだ。


 しかも水道光熱関係の設備は充実していて、サイズもかなりの物。

これで驚くな。という方が難しいと思う。

若干の優越感が湧く辺り、僕もまだまだ大人になれない。


 と、そんな僕らの前にレクスとアーミスさんが向かって来た。


 「重蔵ーーーー」

 「あら、いらっしゃいませ、ジュウゾウ様」

 「やほー」

白黒の斑模様をした巨大な毛虫が結構な速度で突進してくる様は更に衝撃的だった様で、斜め後ろからくぐもった短い悲鳴が二つ聞こえた。

2人そろって同じような反応とは。


 「ジュウゾウ様、何か御用ですか?」

 「重蔵、何かご用時ー?」


 こっちもこっちで息ピッタリか君ら。

ほほえましいな。


 仲良くやってるようでなによりな2人に、レクスを撫で繰り回しながら事の顛末を説明すると、アーミスさんが演技半分と言った風情で驚いた振りをした。


 「あら、ジュウゾウ様は冒険者だったのですか?」

 「違うよー、重蔵はねー‥‥、んーと、重蔵だよー」

 「なんだそれ‥‥。いえ、つい先日、冒険者として登録したんです、駆けだしどころか、初依頼ですよ」

 「まぁ!それでは、何か有りましたらここに戻っていらっしゃるのね」

 「わー、重蔵、早く帰ってきてねー」

 「出発前に早く帰ってこいってのも色気の無い‥‥」

レクスとの会話は癒しだな‥‥。常に笑顔で居られるってのも嬉しい所だ。

仮面だから分からないけどな!


 終始圧倒されていたベゲットさんとストーツさんを伴って、改めて地下へと続く洞窟を進む事にした。





▼ログロの地下洞窟 六階層





 とまぁ、なんやかんやとありつつも、ここまで何の障害も無く到達してしまったんだけど、そろそろお腹もすき始めたのでここらでお昼休憩を取る事にした。


 「お姉様!私はまだ大丈夫です!」

 「いや、僕がお腹空いたんですけど‥‥」

 「あっ‥‥、‥‥‥済みません‥‥‥」

 「ハハハ!余裕の有る内に休憩を取るのも、冒険者の心得の一つだな!」

なんてやり取りが有ったりして。


 ベゲットさんは強面の割に面倒見の良いお兄さんと言った感じで好感が持てる。

装備的には2人ともモロに前衛なんだけど、ストーツさんをフォローしつつ的確な行動を取っている所を見るに、今までに何度も複数名で依頼をこなしてきた経験の多さが窺える。


 僕は魔法やスキルで補助にも回れるので、中衛的な立ち位置に就いている。

回帰(リグレッション)は、どうやらHPダメージも回復出来る様なので、何とも使い勝手の良い魔法を手に入れられたと喜んだ物だ。


 そんな今までの、弱い魔物ばかりとは言え何度か戦闘が有った分の反省会みたいな事をしながら食事を摂っていると、不意にストーツさんが声を発した。


 「あっ‥‥」

 「うん?どうかしたのか?」

 「‥‥いえ、なんでも‥‥」

 「何か異常が有ったら報告するって話じゃ有りませんでしたっけ?」

かなりつっけんどんな言い方をしてしまった僕に、見かねた様子でベゲットさん。


 「なぁ、何が有ったのか詮索するつもりは無ぇけどよ、苛立って何か言うってのも大人げないんじゃねぇか?」

 「っ!お姉様は何も」

 「‥‥済みません、‥‥ちょっと頭冷やしてきます」

分かってるんだ、大人げない対応に感情的な言動をしてる事くらい。

あー、もう!何なんだ、この苦行は!!


 呼び止める2人を尻目に、今までの道を少し戻った地下湖に向かいながら、相手への、自分への苛立ちを落ちている石くれにぶち当てながらズンズンと進んで来た道を戻った。


 本当、何やってるんだ僕は‥‥。

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