♯88 再会 ―別離―
新章突入!です!
よろしくお願いします(・`ω・)ノ
▼ヴォルパ村 レーネの家
「じゅうぞう、次はねー、コレ!」
満面の笑みと共に、僕の前に差し出される料理の盛られた皿。
最近、ヴォルパ村ではちょっとした焼き物ブームが起きているらしい。
村の規模拡大に伴って冒険者が多く集まる様になって、にわかに活気づいたこの村は、今ではちょっとした宿場町といった様相だ。
見た目だけだと、堅牢な分厚い外壁のお陰で要塞じみた感じだけど‥‥。
物資の流入も多くなり、その結果、粘土をこねて皿を作るという、物作り大好きなドワーフたちにウケそうな娯楽(?)が増えてきたみたい。
このまま順調にいけば、そう待たずに以前立ち寄ったフォロール公爵領の都市程度まで発展しそうだ。
別大陸、ゴウ・パサーツの都市も、スチームパンクな感じでワクワクしたなぁ。
あそこはドワーフの国なんだし、似た様な感じになっていくんだろうか?それも良いかも‥‥。
「すごい、めっちゃキレイだ‥‥」
地球でなら、オシャレな雑貨店に4桁後半の値で並べられていてもおかしくないレベルの出来で、素直に驚いてしまった。
「えへへー」
美味しい料理と愛らしい笑顔のおまけ付き‥‥。
いや、寧ろ愛らしい笑顔に、料理と皿のおまけが付いているというか‥‥。
あぁ!でもレーネさんの手料理と手作りの食器‥‥!どれも甲乙つけがたい魅力が‥‥。
「食わんなら儂が貰うぞ」
「させるかぁぁぁあああ!」
「ひゃあっ」
牧歌的な食事風景だ。
日常に返ってきた幸せを噛み締めつつ休養を取れる辺り、相変わらずこの村の平和さはかけがえの無い物だと再認識できて、それもまた幸せなんだと思える。
うむ!良き哉良き哉。
■■■
対女神の使徒戦が終息するまでに、重蔵と六呂は数日間、各地を転々とした。
廃砦跡地から遠く異大陸の孤島を経て、その大陸のドワーフの国、ゴウ・パサーツ。そして再び廃砦跡地、もう一度ゴウ・パサーツ。
実際、戦闘行為そのものは一度目の魔法発動で終了したし、その後の調査(の様な物)も呆気無く終了したのだから、各地をウロウロする必要はそれ程でも無かったのだが、海を渡った際に懐かしい顔に再会する事と成り、最終的に冒険者として登録出来る事にもなったので成果は期待よりも大きかったと言える。
因みに、その際に覆理魔導を何度も使用してみたが、重蔵が危惧していた様なSAN値直葬の憂き目に遭う事も無かった為、取り敢えずは問題無いだろうと結論付けた。
因みに、アーサーとの再会に際してザ・異世界のイケメン冒険者然とした男、バル・エネス・ソルザードとも再会を果たす事と成ったのだが、この件に関しては重蔵が記憶を取り戻す事は無かった。
「まさか‥‥、毛色は違うがミシロ殿では有りませんか!?」
「‥‥‥、ドチラ様ですか‥‥?」
「え?」
「え‥‥?」
と、コントの様な遣り取りを経て、重蔵が装備している一型黒鷹紋の外套の色違いである白鷹紋の外套(バルの言通りならば、黒鷹紋の外套の元となった、ソルザード家伝来の物)を見せられ、自身の記憶喪失を鑑みれば事実であると推察する事となった。
情報を交換し、お互いの受難を語り終えた時、二人は種族を超えた友情を芽生えさせる事と成ったのだが、それはまた別のお話だ。
ともあれ、重蔵の収穫は敵対した女神の使徒、アウリョイナの身柄(覆理魔導・空間魔法で拘束中)と、大海を統べる異世界(地球)から召喚された海神、冒険者としての活動を開始する為の冒険者ギルド・ヴォルパ村出張所での登録推薦状(英雄級)、重蔵が記憶を失う前に戦ったらしい、新たな女神の使徒の断片的な情報。
そして、二人の勇者、アーサー、バルとの再会だ。
その容姿と地位から全員がかなり目立つ為、一応城下町外苑、大防壁外部の街道に移動して話しを始めた。
その間、重蔵に対して敵対的な視線を向けてきたエルフの子供、ロルド・アルゼノと、ファンタジー世界でよく見る、耳だけ獣の獣人、ネイアの態度については、バルが以前使用していた魔法を失い、結果大変な思いをした事を聞いた時点で納得した。
重蔵自身、ヴォルパ村での事件が有ったればこそ、間接的にでも関与した物を許しがたいという気持ちは痛いほど理解できたのだから。
「まぁ、気持ちは分かりますが、殺気を向けるのはお互いの為に良くないと思いますよ」
とだけ伝えておく事にした。
式神然り、召喚獣然り、殺気を知覚して自動で迎撃なんて事になると目も当てられない。
実際、六呂などは
「なんじゃい小娘共。この場でナマスに切り刻んでくれようか?」
と重蔵が引くくらいの威圧感で物騒な事を言い出して、街道近くの森に居た動物や魔物の避難行動に寄って大騒ぎになった位だ。
ネイアが腰を抜かし、ロルドが戦闘姿勢に入ろうとしたので、当然六呂には拳骨を。
冒険者達には謝罪をしておいた。
六呂は現在進行形で実体化しているので、勿論拳骨もクリーンヒット。
涙目である。
禍神も形無しだが、敢えてそこまでは言わない。
そんな悲喜交々を経て、数々の情報・アーサー、バルの推薦状を手に、ヴォルパ村へと向かった重蔵。
そして、冒険者としての活動を続けるらしいアーサー一行は、それぞれの旅路に着いた。
■■■
「いらっしゃいませ!冒険者ギルド・ヴォルパ村出張所へようこそ!!」
見知った顔のドワーフの受付嬢が、笑顔で僕を迎えてくれた。
なんでも、語学学習や商会の設立、自警団の設置に特産品の産出と、現在のヴォルパ村は相も変わらず規模を拡大に伴って、有る程度の教養を備えた者から順に村内部の各所で種々の仕事に従事し始めているらしい。
近々、村から街へと名称を変えて、未開の森や地下迷宮を調査する冒険者の宿場町へ。
そして、特産品や生産物の輸出入を行い、近隣国家との間で本格的な交易を行う自治領として、立場を確立していくつもりらしい。
僕が直接話した訳ではないから詳細は分からないけれど、バルとアーサーがゴウ・パサーツの女王陛下に事件の事を確認したところ、例のドワーフ、クローシュメル元男爵からの報告も有り、近々使節団を送って謝罪と独立権を贈る手筈だったという事を村長であるバーンに伝えると、大層驚いていた。
なんでも、女王陛下が直々に権利を認める事などそうそう無いのだとか。
此方としては、懐かしい名前が出た時に怒りが再燃しそうになったけれど、レーネさんが許すとした以上、蒸し返すのは良くないと自制した。
‥‥出来ていたかは正直自信が無いけれど。
と、こっちでも諸々進行している様子で、冒険者登録の為に(結局他国では無く)ヴォルパ村のギルド出張所へ紹介状を持参してやって来た訳なんだけど‥‥。
「余り人は居らん様だの」
「あ、こら」
慌てて視線を向けると、受付嬢がガックリと項垂れている。
「えー‥‥、済みません、冒険者登録に来たんですが、此処で受付して貰えますか?」
控えめに咳払いをしつつ六呂に視線で黙っている様に伝えて声をかけると、首が捥げるんじゃないかと心配になる勢いで受付嬢が顔を上げた。
満面の笑みである。
「もちろん!こちらで受付致します!!え、と、現在当ギルド出張所では冒険者登録も行っておりますが‥‥」
どうやら、話を聞く限り登録については可能だけれど、最終的に正式な冒険者として活動できるのは本部からの冒険者活動許可証、通称:冒険者証が届いてからになるらしい。
この冒険者証、所謂自動車の免許証の様な物で、最近開発された新しい魔法技術に寄って作られたドッグタグの役割を果たすらしい。
冒険者のランクによって装飾が異なり、その装飾自体もかなり精緻に施されているとか。
そういえばアーサー達の冒険者証は金属の銀色に光る一枚板に、金色の縁取りやら青銅色の文字やらが煌めいていてとても綺麗だった。
彼らは一握りと言われている世界有数の冒険者なので、冒険者証も最高峰なのだろう。
‥‥そういえば、アーズナーさんだったか‥‥、彼はステータスこそアルゼノさんには劣っていたけれど、スキルが凄かったなぁ‥‥。
閑話休題して、冒険者登録自体は可能という事だし、この出張所にも日に一度、昼に一便出るギルド本部への伝書鳩(アブェという種類の小型の魔物らしい)が飛んでいるので、審査が通れば数日中には冒険者証が届くらしいので、勿論登録は済ませて置く。
記載事項は名前だけというガバガバさなので若干不安にはなったけれど、一部のステータス確認の魔具(見た目は完全に水晶玉の):鑑定玉(下位)を使用する事によって有る程度の前科等も調べられるらしく、余りにも素行が悪いと、そもそも冒険者になる事すら出来ないらしい。
上手く出来ているものだ。
因みに、鑑定玉の等級次第ではステータスの数値まで見る事が出来るらしい。
一部の上位冒険者の私的利用や、力のある国家での徴用の際に使われる事が有るらしいので、ステータスを隠蔽する常時発動型のスキルも作って置いた。
やっぱりスキルと魔法をある程度自由に作る事が出来るのは便利だね。
と、ゴチャゴチャ考えている間に仮登録完了。
こうして僕も、晴れて冒険者の仲間入りと言う訳だ。
推薦状が有っても、ランクは最高で「冒険者」かららしい。
期日を設けられた上で一定数の依頼達成を果たさなければ資格を剥奪される下位二ランクの内のスタートに成らなかったのは僥倖だけれど、何となくズルをした気分になってしまう辺り、小市民だ。
「では!仮登録ではございますが、ジュウゾウ・ミシロ様!貴女にはこれよりパンドナ級冒険者として活動して頂きます!先達の働きに恥じない、素晴らしい活動を期待致します!」
かなり回り道をした上、結局最初の土地での再出発という締まらない形には成った。
ともあれ、僕の冒険者人生は今ここで始まったのだ。
精々活躍して、先を行くアーサー達に追いつける様に頑張っていこう。
▼ソベルオ大陸 ゴウ・パサーツ王国領近郊 ガーグランの森
昼間でも薄暗い森の中を、依頼達成に向けて黙々と歩く冒険者パーティ。
ロルド・アルゼノ、テヘラフェルト・アーズナー、バル・エネス・ソルザード、アーサー・レベット・フォン・グレッドナッド、ネイアの五名の、【ジークフリート】(アーサー命名)だ。
つい先日、バルとアーサーの既知の獣人であり、バルが魔法を失う切っ掛けになったとも言えるジュウゾウ・ミシロなる者と、パーティ全員が顔を合わせる事になったのだが、それ以来、若干このパーティの空気はぎこちなくなっている。
テヘラフェルトは涼しい顔でいつもと変わらずに自然体。バルとアーサーは、彼の獣人の話題だけを避けて、二人に気を使っている様子。
ロルドとネイアは、初顔合わせでついつい感情的になってしまい、獣人の後ろに控えていた人語を話す魔物に威圧されて盛大に肝を冷やした。
ネイアなど、少し※※した(彼女の名誉の為に伏せさせて頂く)くらいだ。
経緯を見れば、それは冒険者としては逆恨みだし、殺気を伴った視線を先に向けたのは此方なのだから文句は言えない。
しかし、友人として、或いは従者としては、やはり少しばかり腹に据えかねる部分が出てしまうのも仕方の無い話と言える。
「ねぇ、バル坊、もしかしてあの獣人の事好きなの?」
「は‥‥、え?‥‥はっ!?」
「え、マジで!?ウソだろお前!」
「アルゼノ様?!バル様!?」
一同騒然もとい、一名以外騒然だ。
勿論テヘラフェルトがその一名だった。
「いや!戦士として強さ等尊敬できる所は多いですが、決してそういう感情は!」
「でも、魔法も使える様にしてくれたんでしょ?」
「それは、確かにそうですが‥‥」
驚く事に、バルが以前失った[黒い魔法]とほぼ同じ効果を持つ[影魔導]を使える様にするという、本来有り得ない事を、あの獣人はしてのけたのだ。
失った直後は、それこそ師匠二人に叩き起こされるまで悲嘆にくれていたバルの心だったが、それすら無かった事にする程の御業だ。
そも、魔法の類は他人から与えられる物では無いし、他人が与えられる物でも無い筈だ。
古代の神々や英雄達ですら、そんな事が出来たなんて聞いた事も無い。
アーサーは重蔵の出自を知っている以上、異世界に放り込まれた際の不思議な特典か何かでは無いかとの推理をしたものだが、アーサー自身には魔法を作ったり付与する力は無い様なので、固有の能力なのだろうと結論づけた。
「ですが、だからと言って彼女によこしまな感情など‥‥!!」
「バル、それ寧ろ自白だから。自爆してるから」
「バル様‥‥」
「‥‥おもしろくなーい‥‥」
「そろそろ魔物の巣だ、そこまでにしておいてくれ」
ロルドは見た目に反してバルよりも年上だ。けれど自分よりも幼い彼が懸命に頑張る姿を見続けた結果、いつの間にか恋心を持つにいたった。
ネイアは、バルの身の回りの世話を始めてから直ぐに、彼に惚れている。
‥‥‥複雑に絡み合った人間関係は、一体どこへ向かうのだろう。
「テフィーだけいつも通りでなんかムカつく‥‥」
覇の拳王が呟いた一言は、魔物の群れの唸り声に掻き消されて、空中に消えて行った。




