♯87 旅の終わり チート魔法
若干尻切れトンボ成分が強めですが、ここで第五部終了です!
長かった‥‥!かな?
まだ物語は続く予定ですが、進行速度とかを考えると物語内の描写簡略化も視野に入れております。
自分で見返しても冗長な感が否めないので、進行速度向上(更新速度とは言ってない)か、今まで通りか、ご意見ご感想頂けると嬉しいです。
コダの島の浜辺に、どういう理屈かは判然としないが6隻の軍船が多少の傷は有る物の、殆ど無事な状態で打ち上げられる事になった。
どれほど高度な魔法術式であっても、大質量が落下中に地表に転移させられれば、本来なら運動エネルギーはそのままに、地面に衝突するはずである。
しかし、何の因果かそれは起こらずに、皆が自身の生存を信じられないとばかりにポカンと口をあけて座り込んでいる。
目の前に突如として出現した船団に面喰った居残り組――バル、ネイア、テヘラフェルトと以下数名――は、慌てて人員の安否確認に走り、救護班は自陣にテントを広げていく。
鼻血を流しながら目を回しているアーサー以外には、けが人というけが人は居ないのだが‥‥。
いきなりの展開に皆が右往左往している中、一隻の軍船が島に戻ってきた。
アーサーが間に合わないと嘆き、ロルドが空中で追い越した最後の一隻だ。
島からでは、遠くに巨大な水柱が立ったとしか認識出来ていなかったが、どうやらロルドの機転で助かったらしい。
乗員は軒並み目を回し、その為ロルドの空拳で海面を叩きながら戻ってきたのだろう。
彼女は全身汗まみれで、今にも倒れそうにフラフラとしている。
「ロルド!」
老齢の剣聖、テヘラフェルト・アーズナーが駆けよると、その胸にすっぽりと収まる形でロルドと呼ばれた子供エルフが倒れこんでくる。
「なんか分かんないけど、やってやったぜぇ‥‥」
そう言いながら瞼を閉じる彼女を抱え、遥か遠く。
つい先刻水柱の上がった海を見やれば、そこに巨大な影は無かった。
ただ静かに、何事も無かったかの様な水面が、今までの戦いが夢か幻で有ったかの如き静謐さで存在するのみ。
「‥‥これが、神々の戦の一端‥‥。いや、今はそれどころでは無いな」
神の悪戯か、悪神の戯れか。
運命を嘲笑う現実味の無さが、ただただ不気味だった。
▼フォロール侯爵領近郊 廃砦跡地
死ぬかと思った。とは、重蔵が後に語った対・覚醒アウリョイナ戦の感想だ。
彼女はその姿を歪に作り替えられ、代わりに強大な力を得て重蔵に向かってきた。
因みに、重蔵が確認したステータスは、以前戦った別の女神の使徒、ロンネリオ・ガブス・ジリル・ケルツォーバ(通称:メシ夫)を全てに於いて上回っており、かなりの苦戦を覚悟したらしい。
過去の女神の使徒戦では、敵の必殺技を敵に当てるという、どちらかと言うと正攻法とは言えない勝ち方では有ったけれど、別段ヒーローを目指している訳ではない重蔵にとってはその違いなどどうでもよい話である。
あわよくば今回も敵の自滅を誘う算段を六呂と立てたものだが、しかしそれは叶わなかった。
何せ相手はステータスに任せた物理的な近接戦闘を挑んできたからである。
つい先頃までは魔法に依る搦め手を多用していたアウリョイナの豹変ぶりにはさぞ驚かされた事だろう。
唐突ではあるが、そんな切り合いの中、重蔵は有る事に気が付いた。
この世界の全ての生命がもつと聞いたテータスとは、かなりの強制力を持つという事。
そして、その数値が全身で複雑に作用し合っていると言う事だ。
例えば、全身の平均防御力が100の者に、攻撃力50の者が攻撃をしても大してダメージを与えられないという事になる。
現に、重蔵はアウリョイナに対して有効な一打を与える事が出来ずに数分間、無駄な攻撃を繰り返した。
全力で撃ち込めばカウンターが来た時に対応できない。と、常に数手先を読みつつの攻撃だった事も原因ではある。
必然、体重の乗っていない斬撃はアウリョイナの硬質化した両腕に阻まれ、弾き返される事となった。
翻って、どれだけ平均的な防御力が高かろうと、関節や硬質化していない部位で有れば致命傷と成り得る。という事。
これについては、相手ではなく自身で体験する事となったが、それでも大きな収穫と言える。
そして最後に、HP(所謂、生命力が数値化された物)だが、こちらも致命攻撃と同じく有効な部位に攻撃を当てると、防御力の高い部位に比べてHPを多く減らす事が出来た。
つまり、何処に当たろうと一律で削られる様なゲームとは違うと言う事。
以上の点から、理性を失って暴走するだけのアウリョイナと、武術を以て攻防を演じる重蔵とが相対するならば、勝ちの目は十分に重蔵に有ったのだから、今回の決着もまた、必然と言えるのかもしれない。
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『重蔵!』
短く、しかし大音声で頭に響く六呂の声を知覚し、反射的に身をかがめる。
直後に風を切る音を頭上に聞いて、ひりつく様な感覚が僕の心を殊更に静める。
パルヴァレイトと呼ばれた男に何かされたと思しき、異形を為すアウリョイナさんとの第二ラウンドは、現時点では五分の戦況と言える。
アウリョイナさんの攻撃は、重く、鋭く、そして的確だ。
ステータスを見ると、以前戦ったメシ夫の1,5倍ほどにまで数値が跳ね上がっていたものだからかなり焦ったけれど、今までの魔法をメインにした戦い方からは考えられない位に近接一辺倒にシフトした今では、少し前の僕でもそこまでの苦戦はしなかった様に思う。
とは言え、最初の数合の打ち合いで鎧の隙間に一撃を貰った僕が余裕を見せるだなんて、本来ならしてはいけない事だけど‥‥。
『重蔵!何故手を抜いておる!』
相手の速度が著しく上がっている今、六呂のサポートは有りがたいけれど、六呂からすればのらりくらりと戦う僕の姿は余り良い印象では無い事は理解できている。
『いやいや、手を抜いてる訳じゃないんだけどね‥‥』
半分本音、半分嘘。
負け惜しみに聞こえるかもしれないけれど、六呂のサポートが無くてもこれくらいなら多分勝てるくらいに、今の僕は強くなっている。
ステータスは彼女に比べると低いけれど、今まで見てきたどの人間や魔物よりも上回っているし、スキルと魔法、そして式神達の併用で、アウリョイナさんの攻撃も徐々にかする事すら無くなっているのだから。
では何故、僕が本気で彼女を潰しに行かないのか。と言うと、それはアウリョイナさんが最後に言っていた言葉に起因する。
「私を殺したら魔獣が暴走する」
と言う旨の発言。
どうにも引っかかるのだ。あの一言が。
命惜しさから出た虚仮脅しとは思えない声音。
前髪で半分隠れてはいたものの、必死に見えた口元の表情。
そして、あの光の暴力とも言える魔法を喰らった後、ぼんやりとした意識の中で聞いた気がする、僕を呼ぶ声と、目を覚ました僕が手に入れた、新しい力。
「キナ臭いというか、なんと言うか‥‥。どう思います?アウリョイナさん‥‥」
『何じゃい、儂にも教えろ、重蔵!のう!』
呼びかけに応えないアウリョイナさんの代わりに、六呂が反応して来た。
うん、まぁ、分かってはいたけどね。
■■■
アウリョイナと生死を切り結びながら考えを纏められる辺り、[思考最適化]の効果はかなり有用だ。
生前は持て余していた武術も、人間離れしたステータスと言う身体能力のお陰で、余す事無く振るう事が出来る。
詰まる所、手加減をしながら戦っていても、自身の行動の最適解を導き出す為にリソースを割く事が出来るのだ。
このステータスとスキルを備えた時点で、重蔵にとってこの世界で起きる殆ど全ての事象が困難さを伴わない物事に変わっているのだが、当の本人はそれを自覚していない。
勿論、自覚・無自覚関係無く、使えるものは使う主義の重蔵にとって、大差は無いけれど。
ともあれ、アウリョイナに致命傷を与えずに、自身も攻撃を食らわずに封殺するという荒行も、事ここに至っては何の障害にも成らない。
そうして重蔵が思考の海に身を沈めながら得た答えは、これまたこの世界では本来有り得ない情報の集め方だった。
『そうだ、魔法かスキルでアウリョイナさんが言っていた魔獣を探せば良いんだ』
余りにも楽観的な思考の到達点。
そして、それを実行できる地力。
ここに、今までこの世界に存在しなかった、新しい分類の魔術が誕生する。
扱う事が出来るのは作り出した本人のみという、ピーキーな魔術。
トンでも性能のポンコツ魔獣、重蔵の快進撃が幕を開けた。
▼ソベルオ大陸南部 ゴウ・パサーツ領南端 コダの島
「結局、何が起きてたんだ‥‥?」
状況が落ち着き始めた頃、島の中心部に近い小高い丘の上のベースキャンプでは、先程までの戦いで得られた情報のすり合わせが行われていた。
所が、最前線で戦っていた者達が口にした事と言えば魔獣のトンでも無いサイズや見た目がおぞましい何かで有ったという、全員が知っている知識程度。
ロルドやアーサーですら、敵の攻撃手段や防御手段、超常的な力も魔法で有ったのかそれ以外だったのか、そんな事すら分からずに頭を捻っている。
このパーティで唯一の地球出身転生者であるアーサーも、ハイスクールまで嗜んでいたビデオゲームや海外のアニメ、映画等から似たような物が無かったか記憶を掘り起こしているが、結局手掛かりとなる記憶は出てこなかった。
精々が、あー、特大サイズの毛むくじゃらなクジラと言えば、そう言えなくもないのかなー。くらいのものだ。
因みに、重蔵が直接確認していたとすると「南方妖怪め!」と、言ったかも知れない。
言わなかったかも知れない。
ともあれ、結局のところ歴戦の最上位冒険者ですら理解不能な魔獣の諸々なぞ、その他の有象無象には当然分かろうはずも無く、翌朝にはゴウ・パサーツに向けて全軍凱旋となる。
結果だけを見るなら、強大な魔獣を撃退せしめたという大偉業な訳だが、この場の誰ひとりとして、そんな印象を持つ事は出来ず、悶々と帰途につくのだった。
▼フォロール侯爵領近郊 廃砦跡地
「ほいやさぁああああああああ!!!」
『なんじゃい!?いきなり!!』
アウリョイナさんとの攻防も漫然とこなす作業に変わってきたころ、頭の中でゴネゴネしていた魔法――というか、魔術体系――が、漸く形になった。
{[覆理魔導 専] [解析]対象解析 [追跡]対象追跡 [転位]多方移動 [拘束]対象拘束
理を覆す、とは、なんとも大それた名前だけれど、中二神が囁いた結果という事にしておく。
別に誰かに見られてる訳じゃなし、恥ずかしくない!
‥‥いや、六呂とかアーサーには笑われるかも知れないけれど‥‥。
ともあれ、実用度最重視で魔法を作ろうとした結果、通常であれば魔法を構築する為に必要な魔法(この世界で魔法を使用する為に必要な呪文を空間に投影する技術{魔動輪を構成する})文字が途方もない量になった代わりに、消費する魔力(ステータスで言う処のMP)をかなり節約出来た。
本来ならば魔動輪の構築にも魔力を使うみたいだけれど、僕の場合はスキルの[無詠唱]、[虎神身・黒]、そして[思考最適化]の補助効果が適用される様だ。
有形無形を問わず。と、効果は正に最大。その上で消費は極少、発動は瞬時という驚異的なパフォーマンスを発揮してくれるという、チート性能。
普通に詠唱や魔動輪を構築するなら数時間はかかるだろう事を考えると、何とも便利なスキルばかり揃った物だと、我ながら感心してしまう。
今のところデメリットは無いけれど、乱用すると某コズミックホラーで有名なSAN値(正気度)が直葬される等、有り得ないとも言いきれないので、いきなり出てきたパルヴァレイトだかいうおっさんの言葉も念のため、胸に留めておこう。
直接敵対した訳でも無いし。
‥‥訳でも無いとも言えないのかな‥‥?
まぁ、良く分からないから取り敢えずは棚上げだ。
「ゴメンゴメン、魔法が出来て、思わず喜声をあげちゃっただけだから‥‥」
うん、頭の中でゴチャゴチャ考えながらでもスムーズに会話出来る。[思考最適化]、便利便利。
『ほう!ならばそこな女も今度こそ粉々じゃな!!』
‥‥アグレッシブな僕の式神は、いつでも平常運転だなぁ。
さて、それでは早速、試験運用といってみよう。
刀と硬質な腕が奏でる連続音の中、超高密度の魔動輪が出現し、魔法が発動した。
お読みいただき有難うございます!
引き続きブクマ、お気に入り、評価、感想等募集中です(照)
折角の機会ですし、是非この機会に!(=ω=*)




