↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第五部 召喚師 式術師 冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/106

♯76 旅の幕間 ―男女のアレコレと技術革新

週一ペースとか言って舌の根も乾かぬ内に投稿する、ホラ吹きの鑑。


 村長達への要救護者受け入れ要請があっけなく快諾されてからの、明けて一日目。


すでに移送を終えた皆は、元男爵邸近く、村の中心から少し離れた位置に新しく建てられた長屋で一晩を過ごしたらしい。


ラータさんが指揮を執っている医師団(風の人たち)によって診察や治療が始まっており、まだまだ朝といえる時間なのに人の出入りが激しい。


ふと、僕が作った回復薬が使えないか気になって、レクスに挨拶に行く前にレーネさんと長屋を訪れた。


少し不謹慎かも知れないけれどちょっとしたデート気分で、仕事ばかりに感(かま)けていた前世とは違った充実感に心を躍らせている。


ウキウキ気分で向かっている時にちょうど良く顔を出したラータさんに声をかけると、急な訪問にも関わらず相変わらずの姉御肌な対応をしてくれた。


薬を渡して見聞してもらうと、目玉が零れるんじゃないかってくらいに目を見開いていたのが印象的だった。

「こりゃ、また‥‥。いや、助かるよジュウゾウ。夜にでももう一度顔を出してくれると助かる」


とのこと。多分問題なさそうだし、了承の旨を伝えてデートに戻った。

デートに!



予想以上では有るけれど、基本的にはそこまで大きく様変わりしている訳ではないので、なんとなく里帰りした町が少し発展していた。くらいの感覚なんだけど‥‥。


「なんか、こうやってゆっくり歩けるっていいねー」

「そうですねー、レーネさんと一緒だから、なおさらです」


こんなやり取りができるので、収穫は体感以上だったりする。


やだー、と言ってはにかむレーネさん、マジ天使。



そうして目的地に向かっての散歩がてら村内を見て回っていると、いろんなところから声がかかる。

皆が温かく迎えてくれるっていうのは本当に嬉しい事で、つい先日までの個人的に殺伐としていた感じが薄れていく。

リフレッシュ感が半端ない。


あの事件からは一部、遠慮がちな対応に変わってしまった人たちがいるのは少し残念だけど、いつかまた、以前のようなフランクさに戻ってくれると嬉しい‥‥。と、ちょっとだけ心が痛んだ。





 ログロの地下洞窟への入り口に続く道が整備されて、今は村の正面門から出て回り込まなくても良くなっている。


村を囲う内壁が聳え、その外周には農地が広がり、さらにその外側には防壁が建設されるらしく、今は工事中らしい。


なんというか、要塞じみた村になりそうで、少しワクワクしてしまった。

そんな工事現場でもガーバさんの弟子で見習い鍛冶師だったベーレさんと仲間達が手を振ってくれた。


今では見習いを卒業し、村運営の工房を支えているらしい。

土木工事は畑違いな気がしないでもないけれど、ドワーフの皆は物作りが楽しいらしく、大きいものを作るのも好きらしいので、或る意味で天職と言えなくもないのかな?


レクスの返答次第では、地下に人が住める研究施設を建てる予定なので、決定したら話を持って行ってみよう。




▼ログロの地下洞窟 三階層 レクスの地下庭園




 ゆっくり歩きすぎたか、そろそろお昼近い時間になってしまったものの、レクスの居る地下庭園に到着したレーネさんと僕は、レクスと三人(?)でお昼ご飯を食べている。


道中、不意に現れた魔物をレーネさんが簡単に捻った所を見て驚愕したりもしたけれど、朝一に二人で作ったお弁当を囲んで団欒していると、いつの間にかその驚きもどこかへ行ってしまった。


最近は村の人たちが資源採掘の序(ついで)に遊びに来てくれる。と、嬉しそうに話すレクスにも癒されながら楽しいひと時を過ごし、驚きと一緒に何処かへ行っていた本題が戻ってきたのは、お昼すぎの昼寝後だった。


『少し弛み過ぎじゃないか?』

と、六呂に突っ込まれたけれど、そこはスルーの方向で。


あ、六呂はずっと居たけれど、村の中の雰囲気が暖か過ぎて鳴りを潜めていたらしい。

元々を考えれば無理からぬ話だけど、もう少し楽しく暮らせば良いのに、僕みたいに。

僕みたいに!


調子に乗っていたら、六呂が静かに、しかしガッツリとMPを持っていった。

小器用な真似を‥‥。


と、コントみたいな事ばかりしていても仕方ないのでレクスに確認してみると、こちらも快諾してくれた。


「かんせん?っていうのも、びょうきならなおせるかもー」

と、どこから発声しているのかは分からないけれど、舌足らずな子供っぽい声でそう教えてくれた。


願ってもない事なので、もちろん飛びついた。

村に戻ったらドワーフの皆に建設の協力を依頼して、明日には移住予定の感染者も連れてこよう。


少しあわただしいかも知れないけれど、レーネさんも仕事があるらしいので明日は用事を済ませる日にしよう。



棚ボタ展開に何かのフラグかと少し心配になりながら、夕方までの時間を三人で過ごした。


季節による大きな気候の変化はないけれど、その分だけこの周辺は日中、恒常的に暑いくらいなので、いつも涼しい地下庭園はかなり良い条件だった。





■■■



 さて、色々と物事は進んでいるけれど、実は一つ大きな壁が‥‥。

そう、言語問題だ。


移送途中に気がついたんだけど、廃砦から転移してきた人たちはドワーフ語を喋れないのだ。


受け入れ作業を手伝ってくれたラータさんに指摘されて慌ててしまった辺り、相当迂闊だったと言わざるを得ない。


とは言え、後悔ばかりしていても仕方がないので、村に新しく引っ越してきた人たちの中から通訳をしてくれる人と、フォロール侯爵領を擁するセルバ王国等で使われている人語を教えられる人を探してから、教室を開いてもらう事にした。


地下庭園の建設協力の要請と合わせて提案してみると、各国でもそういった試みは無かった様で少し驚かれた。


わざわざ他国での生活の為に言語を習得する人は少ないんだとか。

外を歩けば魔物に当たるのが当り前な世界において自分達の命を危険に晒してまで、敢えて国を跨いで移住する事などそうそう無い事なのだろう。


各国を回るような冒険者や商隊等でもないと、そこまで必要に迫られないのかもしれない。


それでも、折角の機会だとバーンさんが元冒険者の人たちに声をかけてくれることになったので、もしかしたら世界初、外国語学校inヴォルパ村が開校するかもしれない。


話の直後に、バーンさんが知り合いに通訳を頼みに言ってくれるという事になったので丸投げして集会所を出る事にした。


皆が協力し合って発展していってくれるなら、僕もできる事をしていかないといけない。


取り敢えずそろそろ夜になるし、レーネさんと家に帰ってからラータさんの所に出かける事にして、一度帰宅しよう。





■■■




 そして数日経ち、地下庭園の小規模開発に移住者の受け入れ、外国語教室の設置にその他諸々の問題等が漸く片付いたので、少し休んでいた旅を再開する事にした。


建設工事関係はおおむね順調。

地下庭園を含めて殆どが完成し、残すは村外部防壁の一部と、内部の家屋数軒だ。

流石というかなんというか、やはり僕の中でドワーフ達の天職に、建設関係も含まれる事になった。


救護関係も特に問題なしで、ラータさんに依頼されて量産した回復薬が殊の外良い結果を生む事になった。

後は、難しいだろうけれど精神的な傷が癒えてくれる事を祈るくらいしか出来ないし、カウンセリング的な事は門外漢なので医師団に任せる事にしよう。

この村での生活が、彼女たちにとって平穏な物になれば嬉しい限りだ。


言語問題については、まだ体制が確立出来ていないので今後に持ち越しだね。

一応、数名の通訳が持ち回りで当たってくれているらしいし、特に大きな問題は起きないと思う。


地下庭園の感染研究は、今のところ進展なし。

アーミスさんとレクスの見解は、感染とはついていても病気によるものではない。という事で、頭の上に【?】を浮かべた僕に説明してくれた言葉は殆ど理解できなかったけれど、取り敢えず納得しておいた。


『‥‥つまり、魔法やスキル等が原因と思われる特殊な状態異常でして‥‥、うーんと‥‥』

『だいじょうぶ?重蔵、わかる?』

『な‥‥、なんとなく‥‥』

こんな感じで若干、頭がちょいワル親父状態の僕は二人に任せ、時々様子を見に来る事だけを告げて帰ってきた。

言い訳が許されるなら、医療関係者でもないのに専門用語を持ち出されても困る。とだけ言っておきたい。

別に二人(一人と一体)は医師でもなんでもないけれど。


そういえば、最近は特に忙しいはずのガーバさんが、傷心の僕に追加で装備品を持ってきてくれた。

完全にSFチックな全身鎧等に、大小様々な武器を多数。


「趣味に走っちまったぜ」

と、背中を叩いてきた彼はとても良い笑顔だった。

もちろん、僕も大喜びだったとも。


『俺もあいつみたいに、私って言ったほうが良いのかなぁ‥‥』

なんて、お酒を飲みながら一人称が変わったバーンさんについて話した時には

「組織の上の方に立つなら少し落ち着いた話し方にしてみてもいいかもしれませんねー」

なんて言ったけれど、やっぱり自然体なガーバさんの方がしっくり来る。


他にも、そろそろ出発すると聞いた人たちが、慌てて村で採れる食べ物や水を持ってきてくれた。

僕の思い違いで無ければ、荒神への供物ではなく同じ村に住む仲間として持ってきてくれた好意に感じられた。

向けられる自然な笑顔に、ここでも少し心苦しい思いをしたけれど

『気をつけて行ってきなよ、いつでも帰っておいで!』

と、お隣さんの元気な奥さんがかけてくれた一言と、それに続いて皆が口ぐちに投げかけてくれる言葉に涙が出そうになりながら、なんとかお礼を言って解散した。


武器防具にキャンプ用品等を合わせると結構大げさな荷物量になったけれど、[下位空間操作]と[魔法創造]が使えるようになったので、荷物の持ち運びは特に問題なさそうだ。


取り敢えず出来あがった魔法には[魔次元ポケット]と名付けて色々放り込んでおいた。


中々にファンキーな収容量に満足し、調子に乗ってどれくらいのサイズまで詰め込めるのか試してみたら、最大で10立方メートル程度の大岩を収納できるレベルだった。


因みに、その時にMPが体感で三割ほど削れたので、空間を操作する魔法は結構難易度が高いんだと思う。

多少救われたのは、長時間時空門(ゲート)を開け続けるor一度に大量にor大きな物を出し入れしなければそこまでMPが削れないという事。


小出しであれば、特に問題なさそうだ。


そうそう、三割程削れたはずのMPは、ステータスを確認しても相変わらず表示されなかった。

減ったっていうのは分かるのに、表示される訳じゃないみたいだし、これは注意しないといけない。

下手に魔法を撃ちまくったら、多分気付かないうちにガス欠を起こす事になる。


魔法は精神エネルギー的な位置づけみたいで先ほどの三割程度で気分が少し落ち込んだ。

もし使い切ったら、倒れるか最悪死ぬかも知れない、慎重に行かねば‥‥。




こうして旅の準備を整えてから村の皆に改めて挨拶をして回り、温かい言葉に気持ちのこもったお守りや色々を更に結構な数受け取ってから地下庭園に行き、レクスとアーミスさんを含めた感染対策室(仮)の皆にも挨拶をしてきた。

対策室とは名ばかりで、研究者二名(一人と一体)と感染者三名の少数だけど。


最後に機織り作業休憩中のレーネさんとも話して、出発する事にした。

少し拗ねた感じで

「早く帰ってきてね‥‥」

とか言われると、毎晩帰ってきたくなってしまう。

結界転移が有るから不可能ではないけれど、爛れた生活を送るのはまだ早い。

ちゃんと目的を達成してからにしないとね!


あ、そうそう。

帰郷二日目の夜、久しぶりに二人っきり、レーネさんとゆっくり話をして、最終的にお互い納得した上で行為に及んだ事をここに報告しておこう。


お陰さまでここ数日ずっと、レーネさんの機嫌が頗る良かったから、まぁ、これはこれでいいのかな。と納得させてもらう。



それじゃ、ヴォルパ村の皆さん、レーネさん、レクス、行ってきます!!


先ずは当初の予定通りセルバ王国へ向かうため、僕は廃砦への結界転移を開始した。


勿論何が起こるかを知らなかった僕は直後にしこたま驚く事になるのだけれど、それはまた次回のお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。