↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第五部 召喚師 式術師 冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/106

♯73 旅の途中 ―スニーキング・ミッション! 終

 顔色が良くなり、静かな寝息を立てているお母様の寝顔は今までの苦しそうな状態から、とても穏やかな状態に回復しました。


誰にも内緒でお母様の寝室に入りこんだ事はちょっと心苦しいですが、それでもあの方のお陰でお母様が病魔から解放されたので、今は心から「良かった」と思っています。


ノノとアルの二人が、行方も知れない状態から戻ってきてくれたのに、奴隷になってしまったからという理由でお別れをしなければならないのはとても悲しいです。


ですが、お母様を治療して下さったあのお方のお供として新しい人生を歩むと聞かされて、寂しいけれどきっと大丈夫だとも思います。


だって、あんなにお優しい方と一緒なのですから。


最後には再会の約束も出来ました。

いつかきっと、またノノとアルに会える。そう思うのです。


だから、いつか二人が帰って来てくれた時にちゃんと迎えてあげられる様、私も頑張らないといけません。


身分なんて関係ない、そんな素晴らしい世界を作ってみせます!






▼フォロール公爵領中央部外周付近 第一公子邸




 「‥‥まだ戻らないのか?」

この建物の中で、恐らくひときわ豪華な一室でふんぞり返っている男が静かに、しかし不機嫌さを隠そうともしない声で執事風の男に確認している。


ここは公爵邸が置かれている中心部から、街の東側、潜入時から光を放ち続けている、恐らくは酒場や娼館が集まっていると思しき一角の少し手前に存在する、公爵家第一公子邸の屋根の上だ。


外観からして「お金持ちが住んでいます!」といったけばけばしい屋敷で、先頃忍び込んだ公爵邸とは雲泥の差といった感じ。


ここが成り金趣味の主張が激しい偽ブランド品とすると、公爵邸は趣のある芸術品といった感じだろうか。



公爵の部屋で見つけた書面から鑑みるに、ここら辺の歓楽街といった風情の一帯を治めているのが、第一公子との事で、奴隷の売買以外にも結構あくどい事をしている予感がビンビンだ。


公爵邸で、公女さんと涙のお別れをした後のノノリアさんから事の経緯を聞いた時、僕の毛皮はまた黒く変色したものだった。


『癖になったらイヤだなぁ‥‥』

『おい、脱臼みたいな感じに言うな。戻ったぞ』


屋根の上という目立つ位置に居ながら警備の目なんてお構いなしに寛いでいたら、偵察に出た六呂が戻ってきた。


ここまで便利だと隠密系スキルとかの話を聞けた今、改めて僕が恵まれた環境に居る事を痛感してしまう。

普通の人間なら、数年間の厳しい修行の末に、ほんの一握りの者が得られるらしい各種スキルや魔法が、式神の力を借りるだけで使えるのだから。


っと、閑話休題して


まず、ノノリア・アルルア姉妹は、公爵邸に務めていた時から第一公子に口説かれていたらしい。

しかし、公子も流石に自分の親であり、自分が住む土地の領主でもある公爵の家で奉公する人間に手を出す事は出来なかった様だ。

そして、ここからは僕が調べた結果からの推測だけど、最終的には冒険者と盗賊を使っての回りくどくはあるけれど、足がつきづらい方法で二人を公爵邸から追い出し、行方不明にし、最終的には感動的な救出劇を演出してから二人を正式に妾にしようとしていた感じだ。


ノノリアさんの話と、六呂が調べてくれた話、それから廃砦と公爵の執務室に置かれていた記録物等から考えて、多分こんなところだろう。


吊り橋効果でほれなおし作戦といったところか‥‥。

橋は崩れて、惚れたはれたの話からは遠ざかるけどね。




 「さてと、ノノリアさんはどうします?」

調べ物から戻ってきた六呂の話を聞いた後、今の推理を伝えてから確認すると、ノノリアさんは案外普通に僕に任せたいと言ってきた。


曰く

「憎くないと言えばうそになるけど、どれだけ恨んだってもう戻れないなら明日からを考えたいです」

との事。


何と言うか、或る意味立派な考え方だ。まだ若いのに達観しているというか‥‥。


と、此処で六呂に意識を向けると、興味を失ったのか退屈そうに半透明のまま僕の頭上に仰向けで寝転がっていた。


尻尾が顔の前に来ていてすごく邪魔くさい‥‥。じゃなくて

『六呂、大人しいじゃん、普段なら何でここまで来て!みたいにガッカリするか怒ると思ってたんだけど‥‥?』

『んー?んー、どうでも良いから用事を片付けて砦に戻ろう。あ、あの坊主も改心させる為に食らってからいこうかの』

『え?ちょっと‥‥、‥‥んん?』


僕の制止を聞かずに部屋の中に消えてしまった‥‥。


感情と言うか、【欲】なんかも六呂にとっては良い栄養になるはずだし、分からなくは無いけど‥‥。


「あの‥‥、どうかしたんですか?」

僕達の遣り取りが聞こえない上、幽霊状態の式神を見る事が出来ないノノリアさんからすると彼女の決意を聞いた直後に挙動不審になった上、変な方向を向いて頭を捻る僕は、さぞかし変な奴に見えた事だろう。


「あぁ、いや六呂が第一公子さんを食べに行っただけです、いつもと様子が違ったので少し考え事をしちゃってました」


と言って、撤退すると伝えていると、後ろから視線を感じる。

あっという間に戻ってきた六呂に、開口一番で女々しい奴だと言われてしまった。



言い訳した訳じゃないから!状況説明しただけだから!





■■■





 「はぁー、成る程‥‥、じゃあスキルが成長すれば気配を消したり毒薬の精製が効率化されたりする訳だ」


「はい、音が立ちづらいとか、人の記憶に残りづらくなるとか、そういった効果も得られますよ」


「どれも微妙だのー」


今ノノリアさんが教えてくれている効果を既に備えている結界を伴って歩ける以上、スキルとしてより式術師として結界を使った方が効率は良いよなぁ‥‥。なんて思いながら、僕達は公爵邸の有る街から出る為に出入口の大きな門に向かっている。


驚くほどスムーズに進んだ公爵夫人の治療と公女さんへのノノリアさんのお別れ、そして、奴隷売買の黒幕を突きとめ、原因となった欲を六呂に食って貰うという或る意味特殊なオチで、先ほど潜入作戦が終わった。



正直なところ、もう少し金属歯車実体(某有名潜入ゲーム)的な展開を期待してしまった部分も有った。

結局、現実は非常に非情であり、特殊なイベントと言える様な事件や時代劇よろしくチャンバラ劇を悪の親玉と繰り広げる事も無かったので、世の中は案外平和なのかも知れない。


無欲な人間の末路がどんなモノになるかは分からないけれど、願わくは心を入れ替えて真面目に働いて欲しいと思う。

十を超える女性の人生を踏みにじった悪人なのだから、乱暴な物言いになるけれどいっそ苦しんで反省して晒し首にされてしまえば良いとか、考えてしまったけれど。



数日経てば、この街の歪んだ力関係も変わっていくだろうし、少しはマトモな街になれば嬉しい。


「オレ、こう見えても勉強は得意だったんです!だから‥‥あ、済みません、御名前を教えてもらえませんか?」


「あー‥‥、シロとでも呼んで下さい」


そう言えばお互いちゃんと名乗った訳じゃない。

当然、往路での六呂と僕の会話だけで名前を断定する事が出来なかったであろうノノリアさんに、視界の端に映った外套と、僕の名字から少し捩(もじ)った適当な名前を教えておく。


誤解は解けたとはいえ、恰好がかなりトンガっている状態だから下手をすると未だに死神呼ばわりされていたかも知れない事を思うと、背筋がむずがゆくなった。


いい年して俺は死神だ。なんて、流石に僕には出来ない自己紹介だ。


近い内に冒険者としてギルドに登録しに行く予定の、ただの獣人。

それくらいで丁度良い。



大分不完全燃焼な感じだけど、それでも状況はそこそこに望んでいた結果に近いものだったので、今回は大人しく砦に戻る事にした。


戻ったら一人ずつ職業や状態異常が再発していないかを確認する事に決めて帰路を進む。




結局朝焼けを拝みながら砦に戻った後、レクスにお礼を言って帰って貰う時に限定結界転移を使えば良かったと後悔しながら項垂れた僕を見て、六呂がゲラゲラ笑っていた。


これからまた一仕事しなければならない時だったので、八つ当たり気味に六呂の素体を分解してちょっとした意趣返しをした僕は、ノノリアさんを伴って砦内のベッドが幾つか置かれている部屋に向かう。


色々と終えた僕が眠りに付いたのは、太陽が真上を過ぎた辺りだった。

順調に疲労が溜まっていっている気がして、少しだけ村に帰り、レーネさんに甘えたくなったのは、特に六呂には内緒にしておこう‥‥。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。