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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第五部 召喚師 式術師 冒険者

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♯72 旅の途中 ―スニーキング・ミッション! 次

毎度ご閲覧、ブクマ等有難う御座います!

数日とは言え離れていたのに、また読んでいただけて嬉しいです。

今後ともよろしくお願いします!

 呆気なく到着した公女の寝室。


年端もいかない少女の部屋に、今は同性ではあるもののほんの数カ月前までは男だった僕が侵入しているのだから、胃袋がキリキリと傷む気がするのも無理のない話だと思う。


窓辺から外に向かって祈る様なポーズを取っていた公女さんは、結界の効果で音も無く侵入を果たした僕達に気付いては居ないけれど、いきなり自室に身元不明の曲者が現れては悲鳴の一つも出かねないので、動き出そうとするノノリアさんを押し留めて僕が声をかける事にした。


とは言え、いきなり声をかけては驚かせてしまうと思い、蜘蛛の式神、太郎丸による必要な記憶の掘り起こしを行って、次に狼の式神、凛尾が公女と僕達が出会った瞬間の森の空気を再現する。


太郎丸は探知系の能力を、凛尾は自然に対しての影響力を、それぞれの能力として保有している。

地球じゃそれこそお化けの居場所を探ったり、風や雨なんかに極々小規模な影響を与える程度だったのに、この世界だと結構洒落にならないレベルの干渉力を持っていて、試してみたり練習してみたりで驚いたのが印象的だった。



様子を見ていると、公女さんは肩を少し震わせて視線を部屋の中に彷徨わせている。


一応、効果は有ったみたいだ。


「『こんばんは、お邪魔してまーす』」

と、声色だけを昼間の遭遇時と同じにして面倒な演技は省いて声をかけた。


姿は勿論獣人形態(外套フードonに、大鎌装備)なので、最悪の場合魔物の手下的な演技をする為だ。


「っ!あ、あな「『はーい、ストップ、声は出さないで下さいねー』」‥‥」

口元に人差し指を立てた状態でお願いすると、慌てて自分の口を塞いでくれた。


素直すぎて、この子の将来が少し不安になったけれど、結局は他人事なので華麗にスルー。


「『ありがとう、先ずは君がこの街から出られないと聞いたので、薬を届けに来ました』」


お母さんに飲ませてあげてね。と付け加えて渡すとポカンとした表情で受け取り、直後に顔を真っ赤にして泣きだしてしまった。


声を出さない様に押し殺した泣き方をしている公女さんは、どうやら本当に素直なんだろう。

泣きながら頭を下げている状態なので、ちょっと話を進めづらい‥‥。



 一頻(ひとしき)り泣いた後、小声でなら話しても良い事と、症状も見ていないし効果が有るかは分からない事を伝えると、それでも再びお辞儀をしながら、何度もお礼の言葉を繰り返してくれた。


で、色々と質問をされる前に別のお届け者に結界から出て来て貰う。


「うそ‥‥、ノノ‥‥リア‥‥?」


「はい、お嬢様‥‥」


感動の再会シーン。


僕は完全に背景と同化してしまう事になったのだった。





■■■




 いつまでも時間を取られる訳にはいかないし、そう言えばノノリアさんは公爵夫人にも会いたがっていた。

薬が効くかどうかを確認したい事を伝え、ノノリアさんに事情を説明してもらって公爵夫人の部屋に向かう。


ノノリアさんが奴隷になってしまった件について、この世界ではダイレクトにステータスへ反映されるらしく、実際にどんな職業に就いているかよりも、貴族社会ではステータスに重きを置くらしいのでどうやら今のところ打つ手は無いらしい。


なんでも、所有者・被所有者の扱いは魂に刻まれる契約の様なものらしく、例えば力で無理やり服従させる事も出来て、しかも所有者側が命を落とすとかでも、一度心が折られたとなると解放はほぼされないらしい。


つまり、可能性は0じゃなくても方法が分からない以上打つ手がないのだとか‥‥。


何とかして出来るならしたいけれど、情報が足りな過ぎてどうしようも無い。

いつか手がかりを掴めたら伝える事にしよう。






 公女さんの部屋から公爵夫人の部屋の移動は再び発動した結界で三人そろって移動する事になった。

夜中に部屋を抜け出したとかで後々問題になるのを避ける為。

まぁ、それこそまだ子供だし、自力で屋敷の外に抜け出す事までは想定していないのだろう屋敷内の大人達は、各部屋に見張りを付ける事もしていなかったので、これには正直助けられた。


勿論、式神達のお陰で周囲を探知しながら動ける以上、例え見張りがいても見つからずに移動くらいは出来るけど。



途中で珠と狛に公爵の部屋に別行動で潜入してもらい、僕達はそのまま公爵夫人の部屋に入った。


男のままだったら、或いは今までにイタミワケを使っていなければ少しは興奮したりもしたのかも知れないけれど、今となってはそういう気が全く起きない。



「‥‥う、うぅ‥‥」

苦しそうな声を聞いて、流石にそんな馬鹿な考えも吹き飛んだ。


泣きそうな顔の公女さんとノノリアさんの間をすり抜け、夫人の顔を覗き込む。

見ても分からないだろうとは思っていたけれど、やっぱり分からないな、コレ。


一応、公女さんの部屋で

1,発病してからどれくらい経っているのか

2,どういった症状が出ているのか

3,屋敷の中で他に同じ症状が出た人がいないか

を確認してある。


2週間くらい前から熱が出始めて起き上がれなくなってしまったらしく、特にそれ以外の症状は無さそうで、世話役の人間にも同じような症状は出ていないらしい。


潜伏期間を考えると、感染性の熱病なら周りに罹患者が出ていてもおかしくはないので、そこまで危険視はしなくても良いんじゃないかと思う。


そもそも、気まぐれで薬を渡しただけだし、失敗しても此方に痛手は無いので気負う必要も無い。


公女さんとノノリアさんには念の為結界内にとどまって貰って、まだ手元に残っている薬を僕が飲ませる事にした。


汗と熱による顔の赤み以外に、例えば頬がこけていたり隈が出来ている訳でもないので額に手を置いて声をかける。


「『遅くに失礼、薬をお持ちしました。飲めますか?』」


うっすらと目を開けて僕の顔とその横に持ちあげられている薬瓶を見て、頷いた。

熱にうかされて辛いからなのか、公女さんと同じく素直なのか、デジャヴ的に若干心配になったのはナイショにしておこう‥‥。





▼フォロール公爵邸内部 公爵の執務室




 さて、僕は今、公爵の仕事部屋に来ております。

どうやらこの屋敷の人達で夜中に行動するのは衛兵か私兵みたいな簡易的な鎧を着た男が数名、それも数時間に一回見回りをする程度の様で、思ったよりも緩い印象を受けた。


で、つい数時間前に廃砦で見た封筒に付いていた封蝋が、ここの物であると判断した六呂を連れて確認の為に忍び込んだんだけど‥‥。


幾つか似たような形の封蝋が並んでいたので、念の為、封蝋・封筒・手紙の其々の組み合わせを照合した上で公爵家の物と照らし合わてみた所、奴隷の買い取り云々はここではなさそうだった。


盗賊達の廃砦使用を許していたのは公爵本人みたいだけど、別に何かあくどい事を指示していた痕跡は見当たらない。

『もしかしたら証拠を残さない様に注意しているだけかもしれないけど‥‥』

と、推理小説の名探偵よろしくなぞ解きをしようと机の引き出しを開けて、手掛かりを見つけてしまった。


『名探偵重蔵殿、何か決定的な証拠は見つかったかね?』

『式神に皮肉を言われた!?』


元々よく確認もしないで公爵が黒幕みたいな雰囲気をだしていたのは六呂だった様な気がしないでもないけれど、それは置いといて‥‥。


『公爵の息子が、奴隷の件の黒幕みたいだね』


六呂に公爵の物と良く似た、しかし少しだけ違う封蝋と差出人のサインが残った封筒を見せながら肩を落とした。



どうやら僕には、推理小説の主人公は務まらないらしい。

因みに、旅の途中編はそろそろ終わります。

今しばらくお付き合いお願いします。

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