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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第五部 召喚師 式術師 冒険者

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♯70 旅の途中 ―キラキラ、グルグル

 結局面倒になって、結界で部屋ごと囲い、そのまま全員を治療する事にした僕は、自分で思っていたよりも間抜けだと言える。


精神的か肉体的、若しくは両方で危険だと判断した者にはスキル併用で回復を試み、他は怪我や衰弱、病気などを治療しておいた。


で、今は小屋を出てゲロゲロしている。


イタミワケの効果は抜群で、約一月前のアレが数人分まとめて来たので、精神的ショックで男を見る目が変りそうだ。


『クソ‥‥、以前の僕すら殺したくなりそうだ‥‥』


えずいては涙を溢し、キラキラと酸っぱい臭いの液体を吐き出しながら地面を睨む。

『あ"-‥‥、思考も纏まらないや‥‥』

『なにしとんじゃ重蔵』


嫌なタイミングで六呂が帰ってきた。




■■■




 僕の背中をさすっていたアルルアさんのお姉さんにお礼を言って一旦離れる。


『やはり、読み通りじゃったよ、そろそろ日付も替わるが、恐らく厳戒態勢になるじゃろうな』


予想はしていたけれど、これで軟禁状態になるであろう公女さんに薬を届ける為、公爵邸に忍び込むのは難しくなった。


現時点でどうこう出来るレベルの話ではなくなったので、或る意味で気持ちは楽になったとも言えるけれど‥‥。

「あ、あの‥‥」

あとは野山という事にして、別の作戦を考えないとならないのが、少し面倒臭い。等とまだハッキリと働きださない頭に若干苛立ちつつ考えていた僕は、声のした方に視線を向けた。


少し離れた位置に立つ、アルルアさんの姉、ノノリアさんが井戸水を桶に入れて持って来てくれた。


「あぁ、ありがとうごォオェェェエエエエエェ‥‥」


気持ちは楽になったけど体は正直だったらしく、空っぽになった胃袋から今度は血反吐を吐き出す事になった。


久しぶりに出てきた血の混じった胃液に辟易しつつ、桶の水をガブ飲みした。





▼フォロール公爵領近郊 廃砦(元絶望齎す軍団(ロースロール)の塒)




 ノノリアさんから受け取った桶で水を何杯か飲んで幾分か復調し始めた頃、僕は決意してレクスを呼び出した。


『重蔵、どうしたのー?』


光る繭から現れたレクスは、以前と同じく純白の毛並みを宿して僕の前に姿を現してくれた。

ノノリアさんは驚きのあまり腰を抜かしてへたり込んでいるけれど、とりあえずそれは置いておく。


「レクス、来てくれて有難う。夜遅くに悪いんだけど、これから僕が戻るまでの間、ここで人間を外敵から守って欲しいんだ」


お願いしてもいいかな?と、凡その時間も含めて確認しようとする前に大きく頷く様な動きを見せて快諾してくれるレクス。


『うん、レクスがんばる。行ってらっしゃい、重蔵』


加護の効果で或る程度の思考共有は出来るんだけど、それが無くてもレクスなら普通にやってくれそうで困る。


僕は別にブラックな行動がしたい訳じゃないのだ。

毛並みは今も真黒だけど!



上手い事言えなかったけど、別に後悔はしていない。反省はしているけどね。





■■■





レクスと六呂を含めた三人(体?頭?)で、意識を失っている大半の盗賊達を徹底的に拘束して牢獄に詰め込む。


何だかんだで、六呂が加減を誤って廃人一歩手前にした数人を除いてピンピンしているので、レクスに念入りに簀巻きにしてもらった。



まぁ、恐らく数日は目を覚ませない状態にまで衰弱させているので大丈夫だと思う。


六呂の呪いは結構えげつなかった。



ちょっとした作業で気分転換も成ったので、今度こそ計画の練り直しをしなければ。


一度忍び込んできた六呂に公爵邸の構造、兵力、主要人物の部屋の位置を確認して思考を続ける。


一撃離脱的な行動を予定しているので、六呂には悪いけれどなるべく戦闘は避ける。

色々と試した結果、何も命を奪わずとも文字通り【経験】値は貯まり、問題無くレベルも上がる様なので、問題無い。


『六呂には悪いけれど、今回は戦闘もなるべく回避するつもり‥‥、あれ?そう言えばログロの地下洞窟でトカゲと戦った時は倒さないと経験値が入らない感じだったような‥‥』


ふとした違和感に頭を捻っていたら、六呂がフワフワと僕の周りを漂い始めた。


『重蔵、賊は詰め終わったんじゃが、何人かは捕えられていた女子に殺されたぞ?』

『え、嘘ぉ!?なにさせてんのさ‥‥』

『別に構わんじゃろ、いくら主が請け負ったとは言え、アレ等が被害に遭ったのもまた事実』


殺されても文句を言える立場ではない、なんて嘯いているけれど、多分呪いで衰弱させるという提案をした六呂は、恐らくこれを狙っていたのだろう。


いや、まぁ、僕としても留飲を下げる結果と言えなくは無いので、六呂含めて全員に対しての怒りは無いけれど。


戦闘とかキュッとしちゃうとかは、身内が被害に遭わない限りは無しにしたかった、と考えながら独り言が口を突く。


「殺しとかも、なるべく避けたかったんだけどなぁ‥‥」


直後に何かがぶつかる様なガタンという音と短い、息をのむ様な悲鳴が聞こえて、振りかえる。


そこにはノノリアさんが立っていた。


「あ、あの、オレ、何も聞いてないです‥‥」


普通に涙目になってて、不謹慎だけどちょっと可愛いと思ってしまった。


勿論これも、レーネさんには内密にして頂きたい。

加護の影響で伝わっていない事を祈る‥‥。

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