↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第五部 召喚師 式術師 冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/106

♯66 旅の途中 ―演技と慙愧

毎度ご閲覧、ブクマ等ありがとうございます!

もうしばらく寄り道の話が続きます。

今しばらくお付き合いをー。

 慌てて仲間を引き摺りながら去っていく野盗達と、その後を追い始めた透明な六呂を見送りながら、今度は冒険者風の三人に意識を向ける。


どうしようかと迷っていた僕だけど、結局一言、野盗達に向けて「『目障りだ、失せろ』」と仰々しさを前面に押し出す形で声を掛け、動きださせる事に成功した。


『案ずるより、産むが易しだ』


使い方、合ってるかな?


まぁ、野盗が仲間を見捨てて逃げないでくれて助かった。


残った者が居たら、最悪何かしらアクションを起こさなくてはならなくなりそうだったし。

冒険者風の人達には悪いけれど、別に捕えて連れて行かせてあげられる程の思い入れも無い。


さてさて、お次は彼らか‥‥。


一応、これ以上刺激しない様、動かず見守っていると、此方を気にしながら味方を気付け始めた魔導士風の男。


茶髪の剣士の肩を掴み、背中側から膝を使って気合いを入れている。


手持無沙汰なので何となく調べてみると、デイルという名のリーダーっぽい男、種族はハーフドワーフで職業は魔法使いのレベル12。

回復や身体能力の向上魔法には全て下位が付いていて、状態異常回復系は見受けられなかった。

MPの残りも僅かで、ただ気を失っているだけの仲間に魔法を使う余裕も無いのかも知れない。


茶髪剣士が頭を振りながら起き上り、魔法使いから何やら耳打ちを受けて腰のベルトに付けたポーチから、回復薬的な小瓶を取り出し飲み下していく。


ふむ、飲み終わって早々、此方に目もくれず馬車を確認しに行くあたり、やっぱりアレが本命なのだろう。


馬車の中の気配は六呂と同時に消えたので、恐らく僕がスキルを使う前に意識を失ったものと思われる。


貴族と従者だろうか、二人分の匂いと気配から馬車の中は外よりもマシな状態だろう。


と、また変な方向に思考が向いていると、魔法使いが自己紹介をしてきた。


「力持つ魔獣よ、俺の名はデイルという。どうか話を聞いて頂けないか?」

既にもう一人、大ぶりな斧を使っていた人間の気付けも終えたらしく、此方を警戒しながら交渉の構えを取っている。


うぅん、どうしたものか‥‥。


剣虎モード然り、獣人モード然り、どちらも毛皮の色が同じなだけに、現時点で敵対的な態度をするのも憚れる。

かと言って、正体を晒すと後々面倒臭そうだし‥‥。

えぇい、ままよ!


「『許そう、話してみるが良い』」


あぁ、森の主とか、そんなのを想像して言葉を選ぶのって、地味に難しいなぁ‥‥。




■■■




 残念ながら大方の予想を裏切る事も無く、馬車の中身が貴族の関係者、というか血縁関係者と聞き、うんざりしてしまった。


公女がこの辺りの森に生える香木から父へのプレゼントを手に入れる為、彼らグランリオンが護衛として同行しているらしい。


「さぞ名のある森の支配者とお見受けする、どうか我らを見逃して頂けないか!」


理由を聞くまでもなく、そもそも関わり合いになりたくも無かったので、六呂と僕の事を誰にも漏らさないと誓えるなら見逃す事を伝えると、それこそ地面に頭が着くんじゃないかという勢いでお辞儀をして行動を開始した。


と、ここまでは良かったんだけど‥‥。


じゃじゃ馬というか、お転婆というか、第四公女サマとやらが、あろう事か馬車の外、僕の前まで駆け寄ってきた。

大の男三人の手を掻い潜り、半泣きを通り越して完全に泣き叫びながら止めようとしている侍女(かなりの美人)さんの声も無視して。


『何してんだよ冒険者!あぁもう、馬鹿ーーーー!!!』


とか、もろに取り乱している僕の心情などお構いなしに僕の眼前に跪く公女さん。

「ご無礼、先にお詫び申し上げます!なにとぞ!私にもお礼申し上げる機会を頂きたく存じます!」


『ほらー!面倒臭い事になったー!!』


オロオロしている冒険者三人を心の中で呪いながら、泰然とした(感じになるような)動きでゆるりと寝そべり、言葉を続ける。


本当、どうしてこうなったよ、僕‥‥。


「『うむ、言葉を発する事を許す、話してみよ』」


あぁもう、絶対厄介事だよチクショーメ!




■■■




 ゴメンなさい、オルノラ、グランリオンの皆様。

ヘピテはどうしても、例え魔物だとしても、この方しか頼れないのです。


もう、時間がないのです‥‥。


「『それで、礼とは何の事かな?私は仮の縄張りから雑音を排除する為に出てきただけだ、騒がしくなくなれば、特に君たちに害意を持つ事は無いのだがね‥‥』」


静かな、それでいて湖の水面を滑る波紋の様に広がる声音。

男性とも女性ともつかない、不思議な声に心を震わせながら、何とか言葉を続けます。


「それでも、今私達の命が有るのも、貴方様のお力のお陰で御座います、どうか、私の忠誠を御受取下さい」


そっと静かに足元に向かって、座ったまま頭を下げます。


もしかしたら、この方は神の御使いなのかも知れません、それくらいの神々しさを、私は感じているのです。



「『忠誠‥‥か、それで、何が望みだね?お嬢さん』」


全身を打つ衝撃に、体が震えてしまいました。

私の浅はかな考えなど、お見通しなのでしょう。

その上で、私をまだ生かしておいて下さる慈悲深い御心は、やはり私の想像通り、神様の御使い‥‥、いえ、きっとこの方は神様なのだと思います。


祈るだけでは何も変わらない事を、私はこの数年で知りました。

お母様を御救い出来るなら、私は私の命など‥‥。





■■■




 あーーーーーぁあ。もう‥‥。


本当に面倒な事になった‥‥。



フォロール公爵の第四公女のヘピテ嬢の話は、思いのほか重かった。

要約するとこうだ。


3,4年程前からヘピテ嬢の実母であり、公爵の第一夫人であるマリィさんが病に冒されて床に伏せっている。

何か母が助かる手立ては無いかと一族総出で探してはいるものの、なかなか解決策が見当たらない。

王都から招いた神官では、残念ながら対処療法しか出来なかった為、マリィさんは未だベッドから出られないらしい。

以前この森の辺りで父が母に送った香木が取れると聞き、両親を元気づける為にここまで来たものの、野盗に出くわした。


との事。


いやさ、別に良いんだ。

僕が例えば、回復魔法を極めた勇者とか賢者、或いは神官とかなら喜んで助けに行くよ。

‥‥多分。


でも、僕別にそんな力‥‥。


有ったわ。


うへぇ、まじかよー。


うーーーーーーーーーん‥‥。



『おい、重蔵!奴らの黒幕がわかったぞ!!』

『ゴメンだけど、今忙しいから後にして』


僕がスキルで素体を創造しないと顕現出来ない六呂が愚痴愚痴と文句をこぼしているけれど、取り敢えず置いといて目の前の公女に告げる。


「『二晩の後、此処へ訪れるが良い‥‥。一度人の住む地へ戻れ、しかし我らの約定は、誰にも話す事を許さぬぞ』」


頭から煙が出るんじゃないかと思う程考えに考え抜い一言を残して、ゆっくりと体を起こした僕を見て、漸くデイルさんと侍女さんが此方に向かってくる。


踵を返して森に戻っていく僕に、泣きながらお礼を叫ぶ公女さんと、そんな彼女を何とか連れ帰ろうとする二人をしり目に、僕は何故か六呂からロリコンの謗(そし)りを受ける事になった。


別にロリコンじゃないし!どっちかって言ったら侍女さんの方がバインバインで有りだと思ってるし!

あ、でもこの事はレーネさんには内緒でお願いします、本当に、マジで‥‥。





■■■




 六呂の話を聞きながら、[物質創造]で小瓶を作ってみた。

先刻茶髪剣士が使った、恐らく回復薬だろう液体が入っていた小瓶を真似たんだけど、思いのほか良い出来になって、少し気分が晴れた。


『のう、どうするよ、重蔵』


六呂が後を付けて暴いた野盗の根城は、先ほどの小さな森からほど近くに有る今僕達が居る竹藪っぽい所から大体4㎞ほどの位置にある、少し小さめの砦跡らしい。


出来あがった、透明度の高い硝子状の瓶に川で汲んだ水を注ぎながら、六呂に答える。


「どうもこうもなぁ‥‥、それは流石に考えもつかなかったよ‥‥」


現在、近くにある公爵領では恐らく結構な対策会議が行われている事だろう。

自分で言うのもなんだけれど、恐ろしい魔物に行き遭った公女が無事に戻ったところで、彼女らは僕に付いて何かを言及できる訳ではないのだ。


つまり、公爵以下親族たちに行動を制限されてしまえば、約束した小さな森の前に再び彼女らの内誰かが到達出来る可能性は皆無だ。



川の水は、見た目以上にその状態から何かしらの病原菌や、寄生虫が存在しない事を僕に教えてくれた。


あの事件以降、何とか意識的に操作できるようになった魔力を通せば、精製水とまではいかないけれどかなり綺麗な水だと分かる。

魔法とは、斯くも便利な物なのか‥‥。


『やはり全部食ってしまおう!もうどうしようもならんと思うぞ、のう!』


次いで、清浄な水の入った小瓶を、式神を呼び出す際に省略している式符(地面に文字を書いただけの簡易版)の上に置き、白華を呼び出す。

白華の能力は事象の転化。

物質や現象の或る程度を作り替え、置き換え、変じる事が出来る。


「たださ、物事をそんな風にシンプルに考えるべきじゃないと、僕なんかは思う訳さ‥‥」


静かな光を放ちながら、只の川の水が入った小瓶が魔力を得て薬品に変る。

よし、出来た。


『なら、どうするんじゃ?』


革鞄に小瓶をしまいながら、僕は六呂を見た。


「六呂にとって、盗賊も貴族も関係ないよね?」

『当然じゃな』


短く答える六呂に、僕は満足して頷いた。


某時代劇の御老公ではないけれど、関わってしまった以上僕の精神衛生の保全の為、多少の干渉も止むを得ない。


事にする。


「六呂、先刻の野盗、根城に居た奴ら全部と、これから僕が指定する人間、全部終わったら食って良いよ」


そう言って静かに笑うと、目の前の六呂は半透明の姿のまま邪悪に口を歪めて哄笑した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。