♯49 集落、拡張す。
毎度ご閲覧有難う御座います!
今回は少し短めになってしまいました‥‥。
済みませんです。
既に集落の人々は、僕の【獣形態】と【人形態】にすっかり慣れており特に問題という問題は無く、洞窟でのトカゲ事件以降、普通な日常を送っている。
進化直後、司祭のラータさんと僕が地下洞窟から帰ったばかりの時に変身してみたら、集落中に悲鳴が鳴り響いた事も有ったけれど。
まぁ、目の前に巨大なサーベルタイガーが現れれば、それは仕方のない話かも知れない‥‥。
いつだったか訪ねてきたガーバさんも、大声で『ぬぉぉぉおお!!?』とか叫んでたっけ‥‥。
最初は安定せず、獣の顔に全身毛皮に覆われた姿になった時は、結構焦ったものだけれど、今はすっかり落ち着いている。
森で薪を拾ったり、水を汲む時や、夜眠る時なんかは、剣虎モード。
昼間集落での作業中や、狩り等の最中は、獣人モードを、使い分けている。
薪拾いの際、僕の背に乗ったレーネさんが
「じゅーぞーの体、すごく温かくて、きもちいねー」
と言って、痛く気に入ってくれたので、なるべく剣虎モードでいようとしているのも、仕方のない話だと思う。
決して、言葉選びに興奮したとかではなく。
正直余り広くない部屋の中だ、ちゃぶ台の様な、小さい円卓も隅に追いやられ、此方を恨めしそうに見ている気がするけれど、部屋の主たるレーネさんに喜んでもらえるのが一番だ。
つまり今現在、丸まった僕のお腹のあたりにレーネさんが、裸ですっぽりと収まり、安らかな寝息を立てているのも、仕方ない話なのだ。
仕方ないと思う!
■■■
僕が全裸with全裸で、夜の桃源郷に身を浸していた数日の間に、ちらほらと新しい住人の受け入れ作業が着々と進行していた。
これまでは数世帯だった集落の家族も十数世帯に昇り、今では集落よりも村に近い状態となっている。
以前、商隊の一員でヴォルパに来たらしいポーテさんという人が先頭に立ち、個人商店の様な店を構える事になったお陰で、本格的な村の発展が期待できる。
大都市とまではいかないけれど、ちょっとした町くらいに規模が拡大してくれると嬉しい。
『集落って状態だった時の雰囲気も、勿論好きだったけどね』
ともあれ、お世話になっている人たちが、活気のある生活を送れるのなら、それはそれで良い事だと思う。
しかし、ここで一つ大きな問題が出てくる事になった。
人口増加に伴って、温和な人たちが多く落ち着いた印象だった集落に、一部高圧的なドワーフも交じってきた為、少しばかり諍い事が目立ち始めたのだ。
「てめぇ!この俺様にぶつかっておいて、黙って素通りたぁいい度胸じゃねぇか!」
「いやいや、こっちは避けようとしてたろうが!いきなり変な言いがかりはよしてくれや」
と。まぁ、こんな具合で‥‥。
今のところ、流血沙汰に発展する前に、戦士や狩人のオッサン達が止めに入ってくれている為、そこまで大きな問題にはなっていないものの、このままではいつかデンジャーなサムシングが起きてもおかしくは無い。
自警団的な者も必要になってくるハズだ。
因みに、レーネさんと僕が新しく村に来た人たちを案内している最中に、レーネさんの知り合いが現れた事が有った。
開口一番、彼女の素敵なしゃべり方をディスってきたので、その場は間に入り治めたけれど、その後直接注意しに行った。
ちゃんと話し合って
「はい‥‥、済みませんでした‥‥。二度とレーネ様に不敬な発言は致しません」
と、快諾してくれたので、アイツはもうふざけた事は言わないだろう。
まぁ、まだ新しく移住してくるドワーフ達もいるらしいので、警戒は続けるけどね。
そんな訳で、ヴォルパの集落がヴォルパ村に昇格(?)し、じわじわと発展し始めた事に、僕は喜んでいるのだった。
奴が現れるまで‥‥。
そう、ドワーフで有りながら、同大陸の商業都市に居を構える貴族。
自ら視察に来た、ゾベル・フェイン・クローシュメルが、現れるまでは‥‥。