♯50 調査団、到着す。 そっちがその気ならこっちはやる気だぞ。
再び時間が空いてしまいまして、ごめんなさい!
本当に何処にでも有る、つまらない集落だ。
それが俺様の、ヴォルパに対する第一印象だった。
そもそもが、何の変哲もない辺境の集落だ。付近の迷宮の埋蔵資源もたかが知れているだろう。
位置する森林も特に異常は無いし、集落周辺だってこれといって特徴が無い。
しかし、この集落から商隊が買い付けた装備は、ハマヌのセイルンが擁する勇者アヤメ様の発明品と、似た特徴を持っているという‥‥。
最近タルファ、クロスア、そしてこのヴォルパの三か所で今までにない、発明の類が出回り始めているという事だ。
詳しい事はまだ分からないが、俺様が出向いたのも調査の為。
集落中を徹底的に調べて、情報の真偽を確かめなければ。
‥‥そうだ、俺様はこんな田舎に飛ばされて終わるべきでは無いのだから。
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レーネさんと二人のオッサンの計4人、森から村に向かっている僕達は、全身真っ白なオッサン二人と、全身びしょ濡れの僕らになっていた。
いつも通り狩りに出かけて、新しい素材を探していた所、不意に縦穴にはまってしまったのだ。
ログロの洞窟付近まで足を伸ばしていた所、以前の大岩トカゲ騒動の折に天井部分が脆くなっていたのか、結構大きな範囲で地面が陥没し、見事に落下。
僕は既に剣虎モードだった為、空中で体を捻りながらレーネさんの服を咥えて壁を蹴り、勢いを殺してから地下河川に飛び込んで事なきを得た。
オッサン達は壁に手を掛けて滑り落ちていたけれど、白くて脆い岩壁がガラガラと崩れ、最後には地底で白い土煙りを上げていた。
まぁ、幸い特に大きな怪我も無く済んだので、僕等はそのままログロ洞窟を通って地上に脱出した。
魔物と戦っている最中とかだったら危なかったかも知れない‥‥。
因みに、ログロ洞窟内部は特にこれと言って様子が変った風も無く、普通に安定状態になっているようだった。
縦穴付近に落としてしまっていた魔物の素材や薬草等を回収して、流石に今日はもう村に帰る事になったので、現在村に帰還中なのだ。
「レーネちゃんは良いですよね、ジュウゾウに守ってもらえて‥‥」
事件以来、久しぶりに一緒に行動しているゴーザさんが愚痴っている。
オッサンが甘えんな!とは言わないけれど、余程の事でもない限り、僕が守る優先順位の一番はレーネさんなので、そこは諦めて貰う事にしよう。
得意げな顔で
「いーでしょー」
なんてちょっとしたドヤ顔のレーネさんは今日も愛くるしい。
まぁ、僕も手が届く範囲なら勿論出来るだけ助けに入る旨を伝え、かなり疑わしげな顔をしたゴーザさんに
「本当ですか‥‥?」
とか言われたり、なんやかんやと話しながら歩いて村まで帰ってきた僕達は、村に新しくできた商店の裏手倉庫に素材を一時的に置かせてもらってから解散した。
まだ日は傾ききっていないけれど、今日の夕方には調査団みたいな人たちが来るらしいので、準備をしているらしい皆の手伝いをするつもりだったし丁度良いと言えば、丁度良い。
一度家に帰り、レーネさんと二人で着替えて集会所へ向かう事に。
特に持っていく物も無いし、森で拾った自分達用の果物を幾つか手土産にして家を出た。
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じゅうぞうが来てから、ここもなんだか変ってきた。
今まではそんなに気にした事なかったけど、人が増えてお店が出来て、段々便利になっていくと今までの生活がすこしずつ良くなっていってるのが分かって、ちょっと嬉しくなった。
二人で暮らすようになって、お姉ちゃんが出来たみたいに感じてたけど、なんだかお兄ちゃんとか、お父さんみたいに感じる事が、最近は多い。
『じゅうぞうが言葉を覚えるまでは、私がお姉ちゃんだったのになぁ‥‥』
気が付いたら妹みたいになってて、今は子供みたいな状態に近い。
しっかりしないといけないって分かってるし、どうせなら甘えて欲しいけど、つい甘えちゃってるみたいな感じ‥‥。
じゅうぞうは、私の事どう思ってるんだろ?
▼ヴォルパ村集会所
「こんにちはー」
集会所に入ってすぐの広間、地面から一段上がった板張りの床にはバーンさん、ラータさん含めてドワーフの比較的高齢で村の運営に直接係わる人たちが座って話をしていた。
「おぉ、ジュウゾウにレーネか、丁度良かった、座ってくれ」
促されて腰を落とした僕らに、代表してバーンさんが声をかけてきた。
村に調査で訪れるドワーフが、なかなかの曲者で有るらしい。
バーンさん曰く、「堅物で融通の利かない排他主義者」だとか。
『滅茶苦茶フラグじゃないですかー、やだー』
流石にいきなり攻撃してきたりはしないらしいけれど、人間の国で貴族生活を送る内に獣人や亜人に対してかなり高圧的に接する様になったとか言われると、此方としては幾分かまえてしまう。
「まぁ、ジュウゾウは儂含めて村の者にとっては恩人でもある。余り酷い態度なら、儂がキュッとしてやるわい」
楽しそうに笑うラータさんに、皆が同意して頷いてくれている。
村の皆にこそ恩を感じている僕としては、そう言って貰えるだけで嬉しいけれど、まだまだ村の発展には貢献したり無いので、余程の事が無ければこの村を出ていく事はしたくない。
少し気持ちを引き締めて対応した方が良さそうだ‥‥。
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今後の村の運営についての話が始まった頃、時刻は恐らく17時頃だろうか、空も赤く染まりきり一部が紫色とのグラデーションに変り出した時、ついに【お客様】が村に到着した。
集会所の隣にある厩舎に馬をつないだらしい4人組の男女が広間に入ってきた。
「‥‥ふむ、吾輩がゾベル・フェイン・クローシュメル男爵である。暫く厄介になりますぞ、バーン殿」
クローシュメル調査団を名乗る4人が自己紹介を進めて、村人側の自己紹介も終わった時、示し合わせたかのようにラータさんが口を開いた。
「此方の方が、この村にさまざまな恩恵を与えて下さった、ジュウゾウ・ミシロ殿だ。大切な客人でも有るので、よろしく頼みますぞ」
村の恩人という形で有れば、調査団も無碍には出来ないとの考えらしいけれど、実際はどうなんだろう‥‥。
「あー、御紹介にあずかりました、ミシ「ふむ、まぁ恩人という事で有れば、吾輩らとしても礼を述べるのも吝かではないが、何か褒美でも欲しいのかね?」‥‥」
オーケイ、仲良くするつもりどころか、大人としての対応をするつもりもないみたいだ。
なら、僕はそのまま、普通に答えさせて頂こう。
完全にセリフを遮って上から目線で褒美がどうのと宣う男爵に気色ばんで立ち上がりかけた数人を手で制して、僕は大人として対応してやる。
「いえいえ、お礼なら皆さんから其方様の褒美とやらよりも素晴らしい物を、既に十分に頂いていますので一切お気遣いなく」
会心の笑顔の僕、頷いている村の皆とは対照的に、調査団の団員は唖然とし、男爵は詰らなさそうに鼻を鳴らして、此方を睨みつけていた。
大人のドヤ顔で、大人っぽくセリフを叩きつけた僕は、多分世界で一番大人っぽかった。
大人っぽかったら良かった‥‥。
重蔵君も、煽り耐性低いです。




