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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第三部 生還 生活 制裁

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♯43 泡沫

 「ところで、‥‥えーと、ケツロウバさん?目的の二つ目は、此方としてはとても興味が有りまして‥‥」


「俺の名前はケルツォーバだ!!ふざけるなよ塵屑が!!!」


「あぁ、失礼しました。で、目的を聞かない限り、ここからアナタを帰す事は出来ないのですが、何とか、御教示頂けないでしょうか」


俺の拳は、余りの怒りに大きく震えている。


なんなのだ、この糞生意気で、不愉快な虫ケラは!!!


「‥‥おい、塵屑。余り調子に乗ると、殺すだけでは済まさんぞ‥‥?」



「それは、困りましたね‥‥」



先ほどから、悠長に会話を続ける


否、続けざるを得ない俺の苛立ちにも気付かず、眼下の塵屑は不遜な態度で、あろう事かこの俺に質問を繰り返している。


勿論、俺自身の手で有れば、秒殺間違いなしの下等な種だ。


しかし今回は、この世界の人種を減らす為に必要な、実験としての向きが強い。


目の前の不愉快な光景にも、今はまだ耐えねばならない‥‥。


そう、今はまだ‥‥。



■■■



 俺が放った二体のペットが、塵屑を食い散らかそうと巨大な顎を開き猛進するも、獣人が両手を掲げて、文字通り受け止めるという、有り得べからざる事態に、俺の機嫌は、どこまでも悪くなっていく。


念のためにもう一度ステータスを見るも、やはり目の前の現象は、どれほど考えても、説明する事が出来ない物だ。



種族:人種 

名前:ジュウゾウ ミシロ (三代 重蔵) Lv, 31

職業:[放浪者  23](????)

HP 3110/3110(+610) MP ‿☡ζ踟/~鬠¢‗(+q⁾lψ)

攻撃力  520(+315)

防御力  280(+380)

素早さ  811(+768)

耐久力  169(+590) 

知力   261(+311)

魔力   304(+1021)


称号:不明


魔法:なし


スキル:[術式簡略] [術符省略] [簡易詠唱] [重打](攻撃力+10%) [防護](防御力+10%) [獣王身](攻撃力+300%、防御力+150%、素早さ+500%)



 確かに、人種としては破格とも言えるレベルとステータス。

おまけに、俺にも隠しおおせている、称号とMP‥‥。



まぁ、これらは回収さえしてしまえば、記憶と共に俺の物になるので、問題無い。




 それにしても、二頭のペットの攻撃力は、502と、620で、合計は1122。


ヤツの防御力は合計で660。


[防護]と[獣王身]とやらが発動してのステータスならば異常事態だ。

スキルが発動効果を隠す等、もっと(・ ・ ・)有り得ない。


仮に、称号の中にステータスを上昇させる物が有ったとするなら、上昇分はしっかりと記載される。


使用可能魔法が無しとなっているが、これが隠蔽工作の結果だとしても、[詠唱省略(魔法)]がスキルに存在しない以上、これも考えづらい。


そして、スキルについては隠蔽等出来ないのだ、この絶対条件が有る以上、どう考えても、起こり得ないハズ‥‥。


「おい!虫ケラ!何をした!!」


最大級の威圧を込めた俺の怒号に、調子の変わらない声音で応える下等種に、俺の苛立ちは頂点に達した。



■■■



 直線距離、凡そ30m程度の辺りに、宙に浮いたままで此方にトカゲをけしかけてきた男。


僕達を、文字通り見下して、話す必要も無しと言い放った、【二つ目の目的】は、予想が正しければ、ヴォルパの集落に危険が及ぶ可能性が高い。


勿論、何の確証も無い、勘ではあるけれど、だからこそ、確りと聞き出さないといけない。


「ジュウゾウ、悪い事は言わない。すぐに逃げよう‥‥」


僕の横顔に、小声で提案するラータさんは、非常に弱々しい印象を、僕に与えた。


相手は僕らを取るに足らない存在と断定して、今もこの戦いが、一方的に終わる物だと信じて疑わない状態だ。


つまり、ただ逃げ出したところで、残念ながら生き延びる事は、難しい。


反撃せず、老人を守りながら逃走するなんて器用な真似は、僕には出来ないのだ。


では、どうするか‥‥。




追い詰められたネズミの一撃を、お見舞いしてやれば良い。




僕が相手の土俵に上がらなくても、相手を僕の土俵に引き摺り降ろせば良いのだ。



口八丁の舌先三寸で動揺を誘い、下等な種族の 場(フィールド) に、御招待差し上げようじゃありませんか。




『落紫(らくし)、刀鴉(とうあ)、四象三編(ししょうさんへん)、十二単(じゅうにひとえ)、隠』


ではでは、これより口撃(攻撃)を開始する。



■■■




 僕達の目の前に迫る大顎を、頭の中で結界発動の鍵を唱えて、諸手を上げて受け止める。


僕の手の平には、目に見えない、四つの四角い、膜の様な結界が展開されている。


本来なら、所謂悪霊的な者の侵入を阻む為に使う為のものだけど、5mを超える巨体の突撃を、実に呆気なく、受け止めてみせる。


突進を無理やり止められた二頭のトカゲは、ダメージを負った様子を見せながらも、歯をガチガチと噛み合わせている。


下顎を受け止めている(様に見せている)僕は、呑気にトカゲの口腔内を観察していた。




 意識を取り戻してからこっち、一か月以上の時間が有った。

記憶が定かでないのは、この世界に来る直前の事で、それまでの人生については、確りと覚えている。


道場で師範当位師範代をしていた事。


探し屋で支局長をしていた事。


拝み屋で陰陽師の真似事をしていた事。


記憶が有るなら、そのまま使えるかの確認をする。


ただそれだけだった。



 集落の人々に気付かれない様に、僕は毎日、時間を見つけては、武道の型を反芻し、式神の呼び出しを試した。



生前(?)と変わらず、七種、十四体。


式神としての【彼ら】は、全員呼び出せたし、以前は出来なかった意思の疎通も、何故か出来るようになっていた。


つまり、僕に負ける要素は無いと言っても問題無い。


「いえ、別に。‥‥ただ単純に、腕力で、突進を受け止めただけですよー」


僕の口撃は、思いのほか効果が高かった様子で、女神の使徒の男(略して【めし夫】)は、心底腹立たしげに、口角泡を飛ばしながら、喚き散らした。


計画通り。と言って差し上げますわ!(裏声)



■■■



 「有り得る訳が無い!そんな事は!!」


倒置法で突っ込んでくるめし夫。


『はぁい、有り得ないですともー』


軽く見積もっても、1~2tの巨体を軽々受け止めるなんて、物理的には有り得ない。


それも、二頭が突っ込んできている状況では、尚の事だった。


実際に、トカゲを受け止めているのは、僕の手の平とトカゲの鼻っ面の間に存在している、ミクロン単位の見えない膜。


脳筋のパワープレイでは、止められる道理はない。


『よく気が付いたな、めし夫!』


「良いから吐け!何をしているんだ貴様はぁ!!!」


「どうしても教えて欲しければ、先述の通り、此方は貴方の目的が知りたいので、情報交換なんていかがですか?」


「‥‥っ!!な・め・る・なぁぁっぁぁぁっぁあああ!!!」



おっと、やりすぎてしまったかも‥‥。


言うが早いか、大トカゲの死体が、僕の手の平を離れ、距離を取り、全身を発光させる。


めし夫も同じ色の光を放っているので、恐らく力を分けているのだろう。


「もう許さん!叩き潰せ!アゲル・ボント!!」


「グルルルルルォォァアアアア!!!!」

大トカゲゾンビが、涎を撒き散らかしながら、今度はその異様に長い前脚を振り上げて、此方に降り降ろした。


『銀嶺刃(ぎんれいじん)、新月(しんげつ)』


右腕の結界を払い消し、替わりに歪な刃を手にする。


冷え冷えとした印象の、青白い一振りの刀。


僕の、刀が基となった式神の、二振(ふた)り目が、大トカゲゾンビの腕を斬り飛ばした。


「アンタ‥‥、一体何が‥‥」


「おのれ‥‥、一体何を‥‥」


二人の声が重なる。


『仲良いな君ら』

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