♯38 閉門
ドワーフの狩人、ガーロが岩トカゲの後ろに回り込み、攻撃を再開。
同じくドワーフで、戦士のダーフが、装備の効果を発動して、岩トカゲにヒット&アウェイを続ける。
重蔵の狙い通りに、地響きを轟かせながら、岩トカゲが彼(と、大トカゲ)に向かって移動を始めた。
響く足音に、大トカゲが一瞬、視線を彷徨わせる。
大トカゲは、相変わらず壁に張り付いたままの不安定な状態で、それでも慎重に青い獣人を攻撃していた。
左右の前脚に生える、4本の爪。
鈍い金属の輝きを放ちながら、その暴力の塊が翻る。
大トカゲの、体に比して大きな頭には、相手をよく観察し、カウンターをすら狙い始めていた事から、恐らく結構な思考機能が備わっているだろう事が窺える。
事実、重蔵がいくら斬り付け、殴り続けようと、外皮に阻まれている以上、一定以上の痛痒を与えられないのに対して、大トカゲの、恐るべき破壊力を秘めた一撃は、確実に彼の体を蝕んでいるのだから。
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段々と、此方の攻撃に合わせて、大トカゲの攻撃が僕を捉え始めてきた。
最初こそ、その巨大な爪から繰り出される一撃を、難なく回避していたというのに、徐々に速度と正確性、そして、僕の動きを予測する判断能力が現され始めていた為だ。
頭では、焦らずに岩トカゲの領地侵犯を待たなければならないのに、じわじわと漂い始めた血の匂いに、どうしても体が震える。
『あぁ‥‥、早く終わらせないと‥‥‥』
楽しくなってきちゃった‥‥。
相手の攻撃が身を掠めるたびに、小さな雫が体を濡らす。
命が一欠削がれるたびに、小さな灯りが心を焦がす。
血塗れではあるものの、その傷の一つ一つは小さい様で、見た目ほどのダメージは喰らっていないけれど、それでもこんな感覚は久しぶりで、久しぶりで、心が泡立つのを抑えられない。
意識を沈める毎に、相手の攻撃を捉えていく。
コポコポと。ゴボゴボと。
『終わらないで欲しいなぁ!!!』
他道場との親善試合を含め、今までの人生では、決して味わえなかった狂乱。
けれど、残念ながら、お祭りは終ってしまう。
肌が粟立つ感触と、この戦いが終わる瞬間は、大トカゲの
「シューーーーー!!!」
という威嚇音が発せられたのと、ほぼ同時に訪れたから。
▼ルゴナ大森林アブロ山西側 ログロの洞窟入り口 管理門前
「俺達、生きてるん‥‥だな‥‥」
皆、汗だくになりながら、浅い呼吸を繰り返している。
俺の絞り出した一言に、他の皆も
「おう」とか
「なんとか‥‥」だのと返してくる。
俺たちは、生きて地上に帰ってきた。
二頭のトカゲがお互いを威嚇し始めて、戦況は一変。
どちらもが攻撃を当てられる距離まで近づいて、威嚇を始めた時、トカゲが二頭とも、満身創痍に見える状態になったのには、心底驚いたもんだ。
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上手い事大岩トカゲの一頭を誘導する事に成功した俺とガーロは、ゆっくりとだが、確実にジュウゾウの方へ向かっていた。
俺だって攻撃を避けながらだったんだ、いくら視界が涙でボヤケてる状態だっつっても、あの巨体だ。
殆ど、後ろを見ながら走って、時々進行方向に視線を戻すくらいだったんだ。
で、或る程度近づいた瞬間、ちょうど視線を前に向けた時には、ジュウゾウが戦っていたトカゲが、ひっくり返りながら壁から剥がれ落ちてきてた。
ジュウゾウは、トカゲに続く様に降ってきて綺麗に着地したんだが、俺達だけじゃなく、ラーダもゴーザも運悪く、俺達を追いかけて来ていたトカゲに視線を送っていた為、アイツが何をしたのか分からなかった。
全く、ツイてねぇなぁ。
ともかく、ド突き合い始めたトカゲをしり目に、可能な限りの道具を回収して、俺たちは二階層目、一階層目を駆け抜けて地上に飛び出し、門を閉めたんだ。
魔物や鉱石なんかにゃ目もくれずに、走り続けられた事に、感謝しなくちゃいけねぇな。
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それにしてもコイツの作戦は無茶苦茶だった。
あんな状況じゃなければ、絶対に実行しなかっただろうな‥‥。
「‥‥まぁ、なんだ。取り敢えず‥‥」
少し溜めて、周りを見渡すと、ジュウゾウ以外の四人と、目が合い頷き合う。
「「「「二度とあの黒い玉は使わねぇぞ!」」」」
「便利ですけどね‥‥、僕の鼻も使い物にならなくなりますけど」
全身血塗れになりながら、地べたに寝転んだ小娘が、俺達の宣言に対して、朗らかに笑った。
男言葉の、変な奴だが、俺たちは誰ともなく、顔を見合わせ、空を見上げて口を揃える。
「「「「コイツとは仲良く出来そうだ」」」」
確信を持って言えた一言と、それに続く六人分の笑い声が、綺麗な夕焼け空に吸い込まれていった。
今回、やっと家に帰れる事になったので、予約が成功していれば、恐らく僕はまだ飛行機の中だと思います!
夜にでも投降できたのは事実ですが、予約の実用も踏まえての実験という事で、ご容赦頂ければ幸いです。
スワセン!




