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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第三部 生還 生活 制裁

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♯35 蜥蜴

 「グゥオオオオオォォォォアアアアア!!!!!!!!!!!!」



ビリビリと鼓膜を揺さぶる轟音に顔を顰めながら、二階建ての一軒家に並ぶレベルの巨体を前に、狩猟班の一団は固まっていた。



ここはヴォルパの集落が管理する洞窟の、地下三階層目。


地下大トカゲ(エルグ・デナ・アゲラ)という、地下二十階層よりも下に生息している、謂わばこの洞窟でも、屈指の魔物が、地上付近の三階層で鉱物や比較的弱い魔物を狙う準備をしていた僕達に、気配を消して近づいていたのだった。


最悪のタイミングで。


▼ルゴナ大森林アブロ山西側 ログロの洞窟



 レーネさんに保護されてから、大体三十日位経った或る日、数日後に集落を訪れるらしいドワーフの商隊に卸す為の、魔物の素材や鉱石を手に入れる為に、僕達はヴォルパ族の管理する洞窟に来ていた。


「‥‥あー、まぁ、師匠はそういう面白そうな話に対しては、すげぇ嗅覚っつうかなぁ‥‥」


装備品を工面してもらおうと、族長にお願いしてガーバさんを紹介して貰った時の事を聞いてみたら、鍛冶師見習いのベーレさんが苦笑しながら教えてくれた。


どうも彼(ガーバさん)は、嘗てこの世界に現れた勇者が、日本について書いたとされる書物を読みあさり、日本語を学び、この世界に無い技術を取り入れようとしていたらしい。


何年か前までは、西方大陸のドワーフが治める王国で研究をしていたらしいのだけど、周囲から認められず嫌気がさして、生まれ故郷である、ヴォルパの村に帰ってきたらしい。



お陰で、僕は装備品を手に入れられたんだから、申し訳ないけれど、経緯はどうあれ、彼が集落に居た事は有りがたいと、思ってしまった。


そんな中、野太い声がかけられる。


「よーし、みんな聞いてくれ!」


パーティリーダーであるダーフさんと話していた、狩人のガーロさんが、集落の住人について話をしていた僕達に声をかける。


ここ、ログロの洞窟では、定期的に集落の人間が、魔物の数などの管理や、鉱物採取の為に訪れる人たちの為に、キャンプ用の小屋が、地下に設置されていて、僕たちはその小屋に到着した為だ。



 各階層は、緩やかな坂になっている、直径3m程の、トンネルでつながっており、階層自体は、大規模な、それこそ数十メートル規模の空洞になっていた。


アブロ山の麓、崖の岩肌に開いた入り口からログロの洞窟に侵入して五時間程。


朝早くに集落を出て、アブロ山に到着したのが数十分経過したくらいだったので、今は恐らくお昼前くらいだろうか。


 『時計が有れば、正確に分かるんだけどなぁ‥‥』


文明の利器に思いを馳せる。

なんか、最近、時間の事で感動した様な気がする、変な感じ。


と、まぁそれは置いといて。


皆で小屋の中を確認して、魔物が居ない事を確認する。


ガーロさんは魔物の気配を察知出来るらしく、危険は殆ど無いと言っていたけれど、ダーフさんとゴーザさんが


「今回はジュウゾウも居るし、基本は確りと教えてやらなきゃな!」


と、言ってくれたので、折角だから色々教えて貰った。



小屋の近くに、地下を流れる川があり、そこから水を汲んでいる事。


火を起こす際、風の魔法を使わないと、洞窟内では物が燃えづらい事。


そんな、集落でゴーノさんに付けて貰った稽古こと、サバイバル訓練の復習をしていく。



■■■




 「でだ、この洞窟な、実は結構ヤベェんだよ‥‥」


講義の合間に、ガーロさんが口を開いた。


ゴーザさんはヤレヤレといった感じで、頭を左右に振っている。


凄腕の狩人曰く、ログロの洞窟は地下に行くほど広くなる、ピラミッドの様な構造で、階層は五十程もあり、潜れば潜る程、魔物は強くなっていくらしい。


地上に近い部分から、低階層、中階層、最下層と、ややこしい呼び方で、地下二十階層くらいからは、人が踏み込めるレベルではないとの話。


人よりも大きな芋虫や、鉱石が集まって出来た魔人形、冒険者の亡骸が動き出した動死体に、幽霊、果ては、岩の皮膚と鱗を持つ、巨大なトカゲ等々。



「まぁ、中階層からは、低階層に出られない様に封印がなされていますから、そんなに心配しなくても大丈夫なんですけどね」


「あ、おいおい言っちゃうのかよー」


僕にビビって欲しかったらしいガーロさん、呆れた顔のゴーザさん。


なんだかんだ、旅慣れた仲間といった感じで、頼もしい。



「なるほどー、所で、あのモゾモゾしてる岩の塊みたいのはなんなんですか?」


小屋から少し離れた地下河川付近で水を瓶に移しながら、ガーロさんとゴーザさんに、質問する。


ガーロさんが何も言わないから、この世界の洞窟の壁が生きているのか、気付いていてスルーしている、弱い魔物だろう。



僕の質問に硬直している二人を見るまでは、そう思っていた。



「ジュウゾウ、足音をたてないように、移動だ。静かに小屋へ戻って、すぐに洞窟を出る」


先ほどまでの浮ついた空気を掻き消した、至極真面目な表情でガーロさんが此方に指示を出す。


僕とゴーザさんは、慎重に、音を立てない様に、行動を開始した。




■■■



 何とかキャンプ地である小屋の前に辿りついた僕達を出迎えたのは、残りの三名。


顔面蒼白となったゴーザさんとガーロさんを見て、困惑している。


「ん?どうしたんだ?そんな顔して‥‥」


「岩みたいな外皮の、大きなトカゲをこの先で発見しました、すぐに此処を出るように。と先ほどガーロさんから指示が有りました」


奥歯を鳴らして上手く言葉を発せないガーロさんの替わりに僕がそう告げると、困惑から驚愕に表情を変えて、ダーフさんが改めて指示を出した。


「分かった、すぐにここから出て、族長にほう‥‥こ‥‥」


僕達の後ろ斜め上に視線を移しながら言葉を詰まらせるダ-フさんを見て、殆ど確信しながら、ゆっくりと振り返ると、そこには巨大なトカゲが、舌をチロチロ出しながら此方を見つめていた。



■■■



 リーダーであるダーフさんは、一番足の速い僕を伝令役にして、洞窟入り口の管理門を閉めさせ、族長に報告する。という内容の作戦指示を出した。


勿論僕には指示を遂行する義務が有る。


少なくとも、経験豊富な狩猟班のリーダーの言う事は、僕の信念より正しいハズだし。


でも僕には、この場の誰の命も落とす事無く、無事に集落へ帰りつくという約束が有る。


レーネさん含め、見送りをしてくれた集落の人たちとの約束だ。


「ダーフさん、ここは僕が食い止めます。絶対に追いつくので、先に行っていて下さい!」



言うが早いか、大トカゲに向けて突進する僕。


とめる声が洞窟に響いたけれど、そんな事に構わず腰の小太刀を抜き払い、切り掛かった。



威嚇音を放つトカゲを見据え、僕は攻撃を開始した。




 獣の脚力を武器に、一気に距離を詰めた僕に驚いて、トカゲが回避行動に出る。


逃がす気は勿論無く、構えた小太刀を、壁に張り付いたトカゲの前足に振り降ろした。


岩の様な外皮に阻まれ、恐らく対してダメージは負わせられていないものの、先ずは先制の一撃を与えられた。


すぐに回避行動に移り、大口を開いたトカゲの側面に回り込む。


僕の立っていた位置に、人の頭程の大きさの、紫色の液状の塊が落ちて弾けた。


『多分、毒。かな?』


此方を唖然と見つている皆に、攻撃を回避しつつ、トカゲを叩きながら叫ぶ。


「早く、集落に戻って閉鎖の準備をして下さい!」


或る程度時間を稼いで、撤退する旨を伝え、ようやく動き始めた仲間達にほっと一息。



「ジュウゾウ!絶対に持ちこたえてくれ!俺達がかな「グゥオオオオオォォォォアアアアア!!!!!!!!!!!!」ら‥‥ずぇぇぇぇえええええええええ!?」



最悪のタイミングでトカゲ、まさかの二体目登場に、この場の全員が完全に凍りついた。



『いや、二体同時は流石にムリだよ!!!』

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