♯33 友情
扉の開く音と共に、ジュウゾウの声が聞こえる。
一か月くらい前に、薪拾いに行った森の、川の畔に浮いていたあの子を見た時は、心臓が止まるかと思った。
森に、獣人が居るなんて話は聞いた事が無かったし、私のお爺ちゃんが、魔物に襲われて、森で亡くなったって、お母さんに聞いてたから。
驚きとか、怖いとかって気持ちは、近づくにつれて、強くなっていったけど、川べりに横たわったまま、彼女が息をしている事に気付いたときになくなっていた。
目の前で倒れてる人がいたら、ドワーフじゃなくても助けてあげたかったから。
「考え事ですか?レーネさん」
「あ、んーん!何でもないよ!」
ジュウゾウは、ちょっとあの日の事を思い出してた私を、気にしてくれた。
心配そうな顔をこっちにむけてるジュウゾウに、一言大丈夫って言って、ご飯を食べる。
明日はジュウゾウが狩りに出かける日なのに、くらい顔してたら、心配かけちゃうよね。
多分、大丈夫だと思う。ジュウゾウはすごく強かったし、優しいから、狩りに行くみんなと、仲良くしてくれるはず。
後片付けをして、二人で体を拭いて、一緒に寝る。
おんなどうしなのに、最初はなんか余所余所しかったけど、今は前に住んでた集落で、どんくさいってよく怒られてた私の話し方も、安心するって言ってくれて、一緒に水浴びしたり、寝てくれる様になった。
ジュウゾウ、明日は無事に帰ってきてね。私、おいしいご飯作って待ってるから。
おやすみの前に言った言葉に、ジュウゾウは笑って、はいって言ってくれた。
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ドワーフの集落で目を覚まして少し経った日の朝、僕は集落で一番の鍛冶師の工房にお邪魔していた。
ヴォルパ族の集落では、外にでて狩りを行う者や、管理している地下洞窟に入って、鉱物採取や、発生、繁殖した魔物を討伐する者、集落に侵攻してくる魔物を迎え討つ者達がいるらしい。
個人的には、色々と情報が欲しいので、安心して世界を回れるようになるまでの間、此処を拠点にしたいし、その間、働かずに保護して貰うダケというのも気が引ける為、彼らを(戦う方面で)手伝いたいと思ったのだ。
目下の疑問、族長が日本語を話せた理由も尋ねたけれど、細かい部分を日本語で説明しようにも、そこまで得意では無いので、ドワーフ語を覚えてほしいと言われて、現在、鋭意勉強中。
何にしても、戦う為の装備が欲しいのだ。
丸腰どころか、衣服に関しても、ぼろ布を巻きつけてるダケみたいなモノだし。
現代日本人としては、姿かたちは変わっても、恥じ入る部分が有る。
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少し薄暗い、曇った昼下がり、俺の城に青い毛皮の獣人の女が現れた。
底の知れねぇ目をした、気に食わねぇ奴だと、態度を見て思ったのは、今でも覚えてる。
なんでかって?そりゃあ、あんだけ強いってぇのに、下手に出てヘコヘコしやがるからだ。
「お前ぇ、森の川で拾われたって話だが、どっからこの森に来たんだ?」
いきなり現れて
「済みません、装備を譲って頂けないでしょうか。僕に出来る事なら、お手伝いしますので、お願いします」
なんて言って頭を下げたアイツに、俺は質問したんだ。
だって、おかしいだろ?
俺の目に映った奴は、パッと見で並じゃねぇ雰囲気を漂わせてたんだ。
武器を使いなれた腕の形、それを支える体幹と全身の筋肉。
毛皮で見えなかっただろうって?
馬鹿野郎!俺ぁ、この道80年だ。まだまだドワーフん中じゃあ、ひよっこでも、この両腕と、作ってきた子供達には、自身が有る。
一緒に成長してきた、この目にもな。
因みに奴ぁ、俺の質問に、答えづらそうに、それでも俺の目を確り見ながら、口を開いた。
まぁ、なんだ。
思いっきり噴き出して、その後怒鳴っちまったけどな。
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「そんなふざけた話、信じられるか馬鹿野郎!!!」
目の前の、髭と筋肉が合体した様としか表現できないオッサンは、迷って迷って、結局本当の事を話した僕を、思い切り怒鳴りつけてきた。
『まぁ、いきなり違う世界からやってきて、その上詳しくは覚えてません。テヘペロ!なんて言われたら、僕だって相手の正気を疑うけどね』
勿論、テヘペロは言ってないけど。
だから僕は、色々考えて、武器とか鎧の話を、ドワーフのオッサンにしてみる事にした。
あわよくば、装備をそろえて貰う為に。
近代兵器から、漫画やアニメ、ゲームで見た武器や防具を話した。
SF映画なんかで出てくる兵器の事も、話してみた。
長々と語る僕の話を、黙って聞いてくれていたドワーフの鍛冶師、ガーバさんは、色々と話終えた僕に、黙ってその節くれだった、集落で一番の、素晴らしい技術を宿した右手を、静かに差し出してきた。
二人の男達(片方は精神的にだけど)が、浪漫と言う、熱い絆で結ばれた瞬間だった。
「済まなかった!俺ぁお前ぇの話、全部信じるぜ!!」
ん、やってやったぜ。




