♯32 伝説
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もう少しで自宅に帰れるかも知れません!長かったw
今回の稽古は、正直なところ微妙だった。
肩で息をしながら、取り落とした斧を茫然と眺めるドワーフの元冒険者、ゴーノさんに、僕は慌てて一言を告げる。
「済みません!怪我は無いですか?痛いのが苦手で、必死に武器を振りまわしてしまって‥‥」
心配そうに此方を見ていたレーネさんにも聞こえるように、選んだ言葉を投げかけた。
「あ、あぁ、いや!問題無いぞ!素人にしとくには勿体ない身のこなしだったぜ!」
ちゃんとあわせてくれて良かった‥‥。
正直、このままの勢いで第二戦開始とかになったら、目も当てられない。
心の中でゴーノさんにお礼を言いつつ、僕は彼と握手を交わした。
レーネさんは、今の遣り取りで僕の勝ちを、素人のマグレ当りであると判断してくれたようで、ゴーノさんにお礼を言っている。
『下手に波風立てるより、ご近所づきあいを優先したいのだ』
僕のせいで命の恩人に迷惑をかけるのは、流石に憚られるし。
こうして、無事に模擬戦稽古を終えた僕たちは、レーネさんと別れて、族長であるバーンさんの家に向かう事にした。
これで僕も、集落の外での狩りに同行させて貰える事になると良いんだけど‥‥。
▼ルゴナ大森林付近アブロ山西側ヴォルパ族の集落 族長の家
「ほう、成る程‥‥」
ゴーノさんの裁定は、花丸付きの合格という事で、話を聞いていたバーンさんは、最後に納得したように頷いた。
「コイツぁ、大したヤツだ!獣人と戦った事も有るが、そのドイツらとも違う動きだったな。アレぁ、お前の故郷に伝わっている戦い方なのか?」
狩りの話になるかと思ったら、いきなり此方を向いたゴーノさんからの質問に、慌てて
「そんな感じです」
と返して、族長を見る。
ゴーノさんが納得したようなセリフを吐いている途中、バーンさんが神妙な面持ちで此方を見ている。
「あ、あの、それで、狩りへの同行の件なのですが‥‥」
なんか微妙な空気だったので、こっちから話を振ってみる。
少し迷った後、狩りへの参加は認められたけれど、続くバーンさんのセリフに、僕は少し、驚いた。
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簡潔に言うと、バーンさんの何代か前の時代に、災厄種と呼ばれる魔人が、世界中で戦乱を起こし、各地で災いを振りまいていたらしい。
そして、そんな時代に、ニッポンという名の異世界からやってきた青年が、各国の勇志達と協力して、魔人を滅ぼしたらしい。
その戦争の際に、青年と一緒に戦ったのが、ここより北西に位置する大陸に存在する、ドワーフが治める国の王になったらしい。
世界を守った、所謂、勇者御一行様方の決定で、ドワーフは地下迷宮や洞窟を管理しつつ、他人種と協調して、世界を安定に向かわせる盟約を結んだらしい。
この南大陸、ロ・ルゴナには、他にも複数のドワーフの集落が有るらしいのだけれど、それは、単純に人の手の入っていない地下迷宮や洞窟が、多いからだそうだ。
管理する代わりに、鉱物資源等は、そのほぼ全てが、西方大陸のゴウ・パサーツというドワーフ国家に送られているらしい。
鍛冶師を目指す者や、見た目によらず、手先の器用な者が多いドワーフにとっては、渡りに船だった事と思う。
だから、バーンさんも(所々怪しいながら)日本語を使えたみたい。
バーンさん以上の年代の人族には、もっと流暢に日本語を話せる者がいるらしい。
因みに勇者様こと、その日本人は、戦後処理もそこそこに、いつの間にか消えていたらしく、元居た世界に帰ったのだと、噂されたとの事。
詳しい事はあまり分からなかったけれど、色々聞く事が出来て良かった。
■■■
二人のオッサンと別れて、レーネさんの家に向かう僕は、少し心が落ち着かなかった。
僕と同じ(と思われる、確定ではないが恐らく)日本人が、この世界に来て、日本に帰って行った(可能性が有る)‥‥。
からではなく、明日、早速狩りに向かう事になったからだ。
なんでも、三日後に、街へと向かうドワーフの集落連合の商隊がこのヴォルパにも寄る事になったらしく、そこで売る為の毛皮や鉱物の在庫を追加しておきたいと、今日の朝型に開かれた会議で決まったらしい。
因みに、今はもう夕方の少し前。
昼過ぎにお邪魔した家に、長話を続ける族長と、微妙な顔になり始めたゴーノさんを残して、逃げ帰る。
『明日の準備をしなければいけないので‥‥!』
申し訳なさそうにゴーノさんをちらっと見た時
『お前、俺を残して帰っちまうのか‥‥?』
と、チワワよろしく若干潤んだ瞳を向けられたけれど、オッサンにそれをやられても嬉しく無いので、深々とお辞儀をして、扉を閉めたのだった。
すでに明日の狩りの事で不安と期待が一杯の僕は、他の事等に頭は向かない。
『あ、今日は二日に一度の、レーネさんと体を拭き合う日だった。早く帰ろっと』
他の事等に、頭は向かない。




