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召喚師(?)さんが召喚されました。  作者: 平野 笹介
第三部 生還 生活 制裁
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♯28 小人

 懐かしい夢を見ている。


現在進行形なのは、これが明晰夢だからだと思う。


俯瞰視点で、僕ともう一人、別の男性が言い合っている状況を、ただ眺めているこの状況は、敢えて言うなら走馬灯に近いのかも知れない。


仕事を辞める前の僕が、同僚と揉めたのは、多分あれが最初で最後だったと思う。


何か大切な事を忘れている様な気がするけれど、なんだか郷愁を誘う光景に、暫し目を奪われていた。




―――


「~イ~~~~?」


「~~~カ!?」


「オ~~!」


不意に視界が、明るさに包まれる。


『‥‥(うるさ)いなぁ、人が夢を‥‥何の夢だっけ?』


寝ぼけた頭に鞭打って、僕は思考を始めた。


何か懐かしい夢を見ていた気もするし、ただ眠っていただけの様な気もする。



そして、そんなフワフワした僕の目の前には、毛の塊がこちらを覗き込んでいるという、起き抜けにトラウマ級の状況が展開されていた。




え、なにこれは



「~~ナァ!‥‥フ~」


ゴメンなさい、何言ってるかサッパリ分かりません。



寝ぼけ眼から、少しは意識が持ち直して、目の前で此方を、気遣わしげに見つめているのが、髭もじゃの小人だと認識し直せた。


小人と言っても、小さいというのは、単純に身長のみの話で、全体的にガッシリしており、矮躯に対し、不釣り合いな程に逞しい腕等、印象としては筋肉ダルマと言ったところだろうか。


ネットや本の知識から推測する。


『多分、ドワーフだ』


どうやらここは、寝ざめに衝撃的なインパクト(頭痛が痛い的な)を与えてくれた、ドワーフの家の中の様だった。




▼ルゴナ大森林付近アブロ山西側ヴォルパ族の集落



 目を覚ました僕の肩を叩き、笑顔をくれたドワーフが去っていく。


お礼は伝えたけれど、言葉が通じないらしく、なんかウンウン頷かれて、肩を叩かれただけだった。


彼の言葉も、単語っぽい物がなんとなく分かりそうな気がしないでもないものの、正直理解出来る程の遣り取りも無く、考察を断念した。


『分からないものは分からないのだ』



それにしても、意識はハッキリしてきたものの、状況が掴めない。


確か、僕は再就職の為に面接に行って


‥‥‥ハゲメガネの最悪な態度に辟易し、途中で「お忙しい所、お時間を取って頂いて有難う御座いました」とか、慇懃な態度で


帰途についたハズ。


『そうだ、帰り道で猫が川でおぼれてるのを見つけて‥‥』


‥‥‥で、ドワーフ?


『いやいやいや、流石に夢でしょう』


上体を起こして、顔を覆うとした自分の手を見て衝撃が走った。


指は五本あるけれど、どれもが白い毛と肉球を備えた、動物の手の平が、目の前に有った。


そのイパクトたるや、直前のドワーフなど、記憶の片隅にも残らない程と言っても、過言にならない程だった。




■■■



 僕が慌てて全身を確認し、一糸も纏わぬ裸体の中央に見慣れたハズのマイサンを見つけられずに狼狽しているところに、小柄な女の子が部屋に入ってきた。


全裸の僕。


此方を見つめる少女。


事案の香りがした。


臭い飯の臭いかも知れなかった。




――結論から言うと、事案は発生しなかった。



固まったままの僕を見つめていた少女が我に返ったのは、目と目が合ってから、一、二秒程度後だったから。


「~~~~ヨ!」


慌てて僕の両腕を掴むと、力を込めて僕の体を寝かせる。


思ったよりも強い力に驚きながら、されるがままに押し倒される。


『済まない、名も知らぬ少女よ、僕を押し倒しても、もう僕にはそう言うアレヤコレヤは出来ないんだ‥‥』



馬鹿な事を考えていると、優しくぼろ布を掛けられた。


安静にしていろ。という事らしい。


「あの、助けて頂いたのなら有難う御座います。混乱しているので、状況を確認させて頂きたいのですが‥‥」


取り敢えず、何が有ったのかは分からないものの、助けて貰った可能性にかけて、お礼を一つ。


一番の懸念は、言葉が通じない事だけど、なんとなくドワーフさんが何を言いたいのかが分かりそうな気がした以上、此方の意思的な物も伝わる可能性が有るので、なるべく丁寧な言葉遣いと、笑顔を向けておく。


二番目の懸念は、礼儀知らず、恩知らずの烙印を押される事だからね。


「~!~~~~テテ!」


少女は何かを閃いたのか、勢いよく立ちあがり、此方に此処で待つようなジェスチャーを見せ、部屋を出て行った。


『うん、なんとかなったら良いな!』


こんな行き当たりばったりで綱渡りな考え方をするのはどこのどいつだ!


当然僕だった!




■■■



 「~、初めましテ、こんにちワ」


若干片言ながら、初老に見える小柄マッチョ(髭マシマシ)が、僕に向かって手を挙げる。


インディアンうそつかないのポーズ(?)だ。


「あ、これはどうも、初めまして、こんにちは」


見るからに安堵したドワーフが族長を名乗り、僕も名乗ってお礼を伝える。


言葉が通じる事に途轍もない安心感を得て、思考を再開する。


どう転んでも、どうやら夢ではなさそうなので、状況判断の為にする事は決まっている。


そう、先ずは情報収集だ。

第三部、始りマス!

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