50-大宴会
「よし! 全員揃ったな!」
咲哉が宴会場として皆を集めたのは一階にある水槽部屋だった。
この部屋に巨大な丸テーブルを用意し、11人が円卓を囲めるようにしたのである。
どの席に座るかで揉めることが想像できた咲哉は、予めアナウンスで早く来た順に好きな席に座れることを告知していた。
席順は咲哉から時計回りにヘカーテ、セクメト、ラーン、スパルナ、インドラ、ルチーフェロ、ネメア、セト、オグマ、ネヴァンとなっている。
「今日は俺から重大発表もあったりはするのだが、新しい仲間が増えた祝いの席メインだ。もちろん、無礼講だ! 好きなだけ食って飲んで楽しんでくれ!」
テーブルにところ狭しと料理が並び、神酒ハオマやアンブロシアなど全てのレジェンドアイテムが用意された。
ただし、神酒ネクタルと黄金の林檎は、効果が発動すると宴会どころじゃなくなるので、咲哉が世界構築スキルを使って味を落とささないよう効果のみを消去している。
神酒ネクタルの入ったグラスがシュリーから皆に配られ――
「では、俺達の出会いと! 栄えある未来のために! 乾杯!」
皆から「乾杯!」の声が上がり宴会がスタートした。
酒好きなオグマは神酒ネクタルを一気に飲み干す。
「旨い! 旨すぎる!! この世のものとは思えない味だ……酒通の俺が言葉で表現できない味とは……深い! 深すぎるぞ! 神酒は! 親分! 俺は猛烈に感動している!」
神酒を振る舞ってくれた咲哉に心の中でさらなる忠誠を誓うオグマであった。
スパルナは黄金の林檎とアンブロシアを食べまくりである。
こんな光景は王室の晩餐会でさえお目にかかることができない。
今回準備された神酒などのレジェンドアイテムは金額に換算すると、小さな国の財政なら傾くくらいのものである。
咲哉ならではの大盤振る舞いといえよう。
「よし。改めて一人ずつ自己紹介でもしてもらおうか。じゃあ、ヘカーテから時計回りでな」
「分かりましたわ」
ヘカーテは椅子から立ち上がり自己紹介を始める。
「私は元ヴァンパイアクイーンで、今の名は夜魔王・ディウォーカー・ヘカーテよ。皆さん、ご存知のようにヴァンパイアは日の光に当たると灰になるわ。けど、私はダーリンのお陰で昼間も出歩けるようになりましたの。ダーリンには言葉で表せないくらい感謝しているわ。だから、一生を捧げるって決めましたの! ダーリン大好きよ!」
といって咲哉に抱き付いたのであった。
「ちょっと、あんた! 何やってるのよ!」
そこに激怒したのはネヴァンである。
「あらあら、焼きもちかしら?」
「焼きもちよ! さっきから聞いていればダーリン! ダーリンって! サクヤ様は私のダーリンよ!」
「お前らなあ……」
「うふふ。こんなことで怒っちゃって可愛いわね。ダーリンはどう思います?」
いきなり振られて戸惑う咲哉であったが、この微妙な修羅場を解決するための一言を絞り出す……。
「俺は二人とも大好きだ」
悩んだ末に絞り出した一言がこれである。
「お兄にゃん! セクメトはー?」
「師匠! 俺もいるぜ!」
こんなことをいえば、セクメトが黙っていないのは当たり前であるが……ラーンまでまさかの便乗であった。
「あー、四人とも大好きだ! これでいいだろ?」
半ばやけくそな咲哉である。
「ダーリンはハーレムがお望みなのねえ。私は構わなくってよ」
「わっ、私だって平気よ! 英雄色を好むっていうし、強いサクヤ様に女が群がるのは仕方のないことだわ!」
「セクメトもへいきー」
「俺だって問題ないぜ!」
まんまとヘカーテに乗せられてしまうネヴァンであった。
ハーレムでもいいと言質を取ったヘカーテは咲哉に抱き付き放題というわけである。
「はあ……羨まし過ぎる。サクヤは何であんなに女性にモテるんだ?」
ルチーフェロは咲哉のモテっぷりにかなりのダメージを受けたようで、隣に座っているインドラにぼやく。
「さあな。しいていうなら、強くて器がでかいからか?」
「サクヤは確かにとんでもなく強いな……。神のような力も持っているし器もでかいんだろうな……はあ、敵うわけないか」
「元気ないのかにゃ?」
気落ちしているルチーフェロにネメアが気づかって声をかける。
猫のくせに気づかいができるとは、ネメアの評価に上方修正が必要かもしれない。
「桜のように美しい髪のお嬢さん、僕を気づかってくれるのかい?」
人化したネメアの髪は桃色ロングヘアーである。
髪の色を桜と表現するとは、アスナルドにも地球にある植物は一通り存在しているようである。
「隣で辛気くさい顔をされたら食事が不味くなるにゃー」
気づかいではなかった……憐れルチーフェロ。
ネメアの評価を上方修正する話はなかったこととする。
「それは済まなかったね……」
ますます辛気くさくなるルチーフェロであった。
「次の自己紹介はセクメトだ」
「セクメトは赤龍王でー、お兄ちゃんの下僕だよー」
セクメトの自己紹介は超短かった。
しかも下僕とは……確かにそんな話もあったが咲哉はセクメトを下僕扱いしていない。
「えっと……次はラーンだな」
「俺は雲海王ラーンだ! 海洋族で水中にしかいられなかった俺は、師匠から陸上で呼吸する力と空を泳ぎ回れる力をもらった! それだけでも凄いのに、竜であるリオプレウロドンに変化する力までもらったんだ! スゲーぜ! 師匠は! スゲー!」
相変わらず熱いラーンであった。
「次だ……」
何だか微妙に疲れてきた咲哉である。
「霊長王スパルナ……食べ放題……ここの待遇最高……」
自己紹介というより自分の気持ちを述べただけのスパルナであった。
「次だ……」
「俺の名前は巨雷王インドラ。サクヤから第二の人生を与えられた。サクヤのために働き、死にたくなったら殺してもらう。以上だ」
何だか凄い自己紹介であるが、確かに咲哉とそんな約束をしていた。
インドラが死にたくならないことを祈るばかりである。
「次だ!」
「僕の名前は堕天王ルチーフェロ。元の名前はアシエルさ。前は天界にいたけど、美しい人の女に惹かれてしまってね……禁忌を冒し堕天したってわけさ。けど、後悔はしていないよ。だって、こんなに美しい女性たちに出会えたのだから! サクヤに飽きたら、僕はいつでもウェルカムさ。一人の女だけを愛することなんてできない僕だけど……」
まだまだ話は続きそうであったが、一同から「うざい!」といわれ、しぶしぶ話をやめるルチーフェロであった。南無。
「次はネメアだな」
ネメアのときだけ不思議と機嫌がよさそうな咲哉である。
やはり、ペットは特別なのだろか。
「元ネコマタの妖獣王ネメアにゃー。ご主人様から寵愛を受けているペットにゃ」
「サクヤはこんな可愛い女性をペットにしているのか……羨ましすぎる!」
ルチーフェロの愚痴は気にしないでおこう。
「ダーリンったら、ちょっと目を離した隙に、可愛い女の子をペットにしてしまいますなんて……うふふ。ますますハーレムが賑やかになりますわ」
「うー、これ以上ライバルが増えるのは困るわ……」
ヘカーテは咲哉の周りに女性が増えても問題ないと思っているようだが、ネヴァンは独占欲が強いように見受けられる。
修羅場にならないといいのだが、それは咲哉の器量次第であろう。
「次の自己紹介はセトだ」
「うむ。我は黒龍王セトじゃ。サクヤの友であり、ライバルでもある。困ったときは我を頼るがよい。我はサクヤの部下には寛大じゃ」
いつも何かと掻き回すセトであったが、思ったよりまともな自己紹介であった。
咲哉がホッと胸を撫で下ろしのはここだけの話である。
「よし。次はオグマだ」
「親分の一番の部下である刹鬼王オグマだ。俺は酒好きで怠け者の鬼であったが、親分と会うことで生まれ変わった。これからは親分に忠誠を捧げ、一生を捧げる所存だ。よろしく頼む」
自己紹介が終わった瞬間、テーブルを飛び越しセクメトがオグマに蹴りかかった。
それを片手で受け止めるオグマ。
「お嬢さん……これはいったいどういうつもりですかい?」
「ん? 鬼はてきー!」
鬼は龍族の天敵である。
好戦的なセクメトも鬼と聞いてオグマに襲いかかったのであった。
「セクメト、やめろ! オグマは鬼ではあるが、俺の大切な部下だ! 仲良くしないと二度と漫画を読ませないぞ!」
「んー? わかったー」
お兄ちゃんである咲哉のいうことは素直に聞くセクメトである。
オグマはセクメトを床に下ろし、争いはすぐに解決したのであった。
「オグマもセクメトと仲良くしてやってくれ」
「親分の妹さんは大切にいたします。安心してください」
どんなことがあってもオグマの忠誠心は揺るぎそうもない。
次は波乱を予感させるネヴァンの自己紹介である。
何事もなく終わればいいが、どうなることやら。




