49-咲哉の甘さ
首輪の効果が気になるところではあるが、ここでネメアという名前の解説をしておこう。
ネメアはギリシャ神話に登場する人食いライオンの名前である。
このライオンは大地の女神ガイアが作った最強の怪物テュフォンの子で、その体は鉄より硬いといわれている。
ヘラクレスに課せられた十二の難業で、弓や剣でも歯が立たなかったヘラクレスは、ネメアの首を三日三晩絞め続けて仕留めたという話は有名である。
咲哉は猫つながりでネメアというライオンの名前を付けたのであった。
首輪の効果を試す前に、咲哉はネメアのステータスを確認する。
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【ステータス】
名前:妖獣王・ネメア
種族:獣族
種別:妖獣王
ランク:EX
属性:光
称号:神饌泥棒
LV:74
HP:55296/55296
MP:74318/74318
STR:7035
INT:8842
DEX:4597
AGI:15176
特性:耐光(大)・耐肉体(大)・耐怯み(大)
STR系スキル:ネコマタパンチ・ネコマタキック・ネコマタテイル・ネコマタラッシュ・ネコマタボンバー・ハードニングファング・フォールタークロウ
INT系スキル:精霊魔法・幻影魔法・軟化魔法・硬化魔法・妖獣王の雄叫び
INT系スキル:メガリカバリー
AGI系スキル:ネコマタダッシュ
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セクメトに何度も真っ黒焦げにされ憐れなネコマタだったネメアであるが、何だかとっても強くなっていた。
もはやペットと呼ぶのはどうかと思う強さであるが、咲哉のステータスと比べるとペット扱いでも仕方がないのかもしれない。
「これから実験を開始するから、セクメトは先に帰っていてくれ。ちょっと時間がかかるかもしれない」
「わかったー! 帰ってマンガよむー」
セクメトを転移で城に帰した咲哉は、これから実験を開始するらしい。
しかし、実は実験とは名ばかりで、これからやることにセクメトから茶々を入れられるのを回避するために、城へと先に帰したのだった。
「よし。ネメア! ¨コスチュームチェンジ・ピンク¨といってみろ」
「コスチュームチェンジ、ピンクかにゃ?」
ネメアがそういうとピンク色の光が体を包み込む。
そして、光が収まったあとにネメアはビックリするような姿に変化していたのだった。
その姿はなんと、ピンク色のミニスカナース服に身を包んだ猫耳ナースだったのである。
何かやるとは思っていたが、まさかのコスプレである。
しかも、可愛い系のネメアであるからよく似合っている。
ナースキャップからはピンク色の猫耳が顔を出し、もちろん二本の尻尾もピンク色でふりふりしている。
モフモフの毛でおおわれている手と足先もピンク色に変化していたが、顔や腕、足など、素肌が露出している部位は肌色のままだった。
猫耳ナースとは……久々に咲哉を褒めてあげたいほど、眼福である。
「可愛い格好になったにゃー! ご主人様ありがとにゃー!」
「ご主人様……悪くない響きだ」
ペットからするとご主人様と呼ぶのは当たり前なのかもしれないが、咲哉の琴線に触れたらしい。
「この格好にチェンジすると火に耐性がつくようになるぞ。あとはこれを装備すれば完璧だ!」
咲哉が渡したのは巨大な注射器であった。
「この注射器は押すことで炎が放射される武器となり、そのまま突き刺せばHPを回復させることができる優れものだ」
注射器から炎が放射されるとは、センスを疑ってしまうような武器である。
しかも、こんなぶっとい注射器で刺されてしまえば、HPが回復するどころか減ってしまいそうな気がするのだが……どうなのだろうか。
「次は¨コスチュームチェンジ・ブルー¨だ」
「コスチュームチェンジ・ブルー!」
二回目となるとネメアも慣れたもので、すぐにキーワードを口にする。
次にネメアが変化したのはマーメイドのコスプレだった。
マーメイド特有の足ひれは鮮やかな青色をしており、立って歩けそうもないことから水中仕様だと伺える。
髪や猫耳、モフモフ部分なども青色に変わり、豊かな双丘はホタテの貝殻で隠されていた。
猫耳マーメイドとは、男のロマンを感じる素晴らしいコスプレである。
「この格好は水に耐性がつき、水の中を息継ぎなしで自由に泳ぎ回ることができるぞ」
「にゃんと! とうとう夢が叶うときが来たにゃ! これで海にいる魚を全部食べ尽くすことができるにゃー!」
どんな泳ぎの名人だったとしても海の魚を全て食べ尽くすことはできない。
咲哉はネメアの夢を壊さないように、触れないでおこうと心に誓ったのであった。
「この格好にも専用の武器がある。それは竪琴だ。この竪琴を使えば水を生み出し、自在に操ることができる」
「水を自在にかにゃ? まるで魔法使いになった気分にゃー!」
猫的な直感で床から空中に伸びる水流を作り出し、その中に飛び込むネメア。
水の流れをコントロールし、宙を自由に泳ぎ回る姿はまるで空飛ぶマーメイドのようであった。
「おーい! そろそろ降りてこい! まだまだあるんだからなー!」
「楽しかったにゃー! ご主人様は凄い人にゃ!」
「そうだ。お前のご主人様は凄い人だ」
ペットに褒められたのが嬉しいのか、いつにも増してどや顔の咲哉である。
「次は¨コスチュームチェンジ・イエロー¨だ」
「コスチュームチェンジ・イエローにゃ!」
続いてネメアが変化したのはミツバチのコスプレだった。
ミツバチ模様のチューブトップに黒いミニスカート。
背中には妖精のような羽がはえている。
髪と尻尾、モフモフ部分は黄色に変化していたが、猫耳はミツバチ模様に合わせたのか黒色であった。
セクシーさには少々欠けるが、これはこれで素晴らしいコスプレである。
「この格好は雷に耐性がつき、武器はミツバチということで槍にしてみた。この槍を使えば雷を落とすことができる」
咲哉はペットに甘いのか、魔法効果の高い武器がオンパレードである。
しかし、残念ながらネメアはこの格好があまりお気に召さなかったらしい。
「ミツバチは刺されたら痛いから、あまり好きじゃないにゃー」
「いやいや、待て待て。この格好の凄いところはな……その羽で空を飛べることだ!」
本当は見た目だけで飛べない羽だったのだが、慌てて飛べる仕様に変更した咲哉である。
「ホントにゃー! 飛べるんだったら、この姿も悪くないにゃ」
宙を飛び回り機嫌がよくなるネメアと、ペットに甘いことが露見した咲哉であった。
「よし! 次は、¨コスチュームチェンジ・ブラック¨だ!」
地面に降りてきたネメアはキーワードを口にする。
次に変化したのは、バニーガール?
猫耳だからキャットガールだろうか。
黒いハイレグに網タイツと、バニーガール風のセクシーなコスプレであった。
猫耳と二又尻尾、モフモフ部分は全て黒色で統一されている。
バニーガールのコスプレは男なら一度は間近で見たいと思うのではないだろうか。
猫耳バニー感無量である。
「この格好は闇に耐性ができる。武器は二丁拳銃だ」
何故にバニーガールが二丁拳銃であるかは謎であるが、カジノでバニーがドンパチとか、そういうイメージを連想したのかもしれない。
この二丁拳銃はアダマンタイトで作られている豪華仕様である。
弾は闇属性魔法の魔力を凝縮したものが発射されるようになっており、暗闇の中で隠密攻撃を行うのに特化している。
夜目が利くネメアには、非常に相性のいい武器といえるだろう。
残りのコスチュームチェンジは、グリーンが風に耐性のあるピーターパンのコスプレで、風を自在に生み出し操るナイフが武器である。
ブラウンは土に耐性のあるインディアンのコスプレで、武器は岩を生み出し操ることができるトマホークとなっていた。
ピーターパンとインディアンの描写を省いたのはセクシーさに欠けるからという理由ではない……多分。
「まあ、コスチュームチェンジはこんな感じだな。ああ……まだあったか。やらなくていいけどな、¨コスチュームチェンジ・ヒューマン¨というと人間の姿になれるぞ」
「コスチュームチェンジ・ヒューマンかにゃ?」
「おっ、おい! やらなくていいと……あっ……」
猫耳と尻尾がなくなり人間の姿になったネメアであったが……その姿は素っ裸だった。
咲哉はコスプレに集中する余り、人化したときの装備をまだ用意していなかったのである。
服を着る習慣がないネメアは、裸体をさらしても恥ずかしがる様子など一切なく堂々としたものであった。
その姿は健康的な美しさをかもし出しており、目の保養として素晴らしくいい感じである。
咲哉は後ろを向きながら急いで、ピンク色の特攻服など装備一式を作る。
特攻服の背中に不似合いな招き猫が刺繍されていることから、咲哉のテンパり具合が伺えて非常に愉快である。
特攻服を渡す咲哉であったが、ネコマタだったネメアが服の着方を知っているわけはない。
真っ赤になりながらネメアに、特攻服など装備一式を着せてあげる咲哉であった。
「はあ……。城に戻るか……いくぞ、ネメア」
「新しい住処が楽しみにゃ」
城へと戻った咲哉はワイズにネメアのことを任せることにする。
そして、夜に宴会を開く旨をアナウンスで告知し、ベットで一人精神疲労を癒すのであった。




