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転生クエスト - ヤンキーが異世界に転生したら -  作者: 早手祐也
【第一章】 モンスターカーニバル
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46-超必殺技

 ラーンが超必殺技発動のキーワードを唱え始める。


「斧に具現し悪魔の王よ。その姿を解き放ち、真の姿を現せ! 顕現せよ! 悪魔王ルシファー!!」


 ルシファーズアクスが禍々しく光輝きだす。

 黒紫の光が四散したかと思うと、10メートルはあるだろうか凄まじい威圧を放つ悪魔王ルシファーが姿を現した。

 その姿は全身が黒い甲冑に包まれ、兜から除く顔は青白く、とても美しい。

 背中には六対十二枚の翼があり、見ているだけで闇に飲まれてしまいそうな漆黒色をしていた。


「キャー! そいつは何よー!」


 ちらっと振り返り悪魔王ルシファーを確認したバンシーの顔が驚愕に染まる。


「後悔しても知らないっていっただろ! 凪ぎ払え! ルシファー!」


 ルシファーの手に100メートルはあろうかというほどの禍々しい光剣が出現する。

 黒紫色をした巨大な光剣は全てを圧倒する存在感を放っていた。


「ひっ、ひいー! 死ぬー! キャー!」


 光剣が振るわれ、全てが凪ぎ払われる。

 その前方100メートルは円を描くように黒炭みの荒野と化していたのだった。


「やり過ぎちまったかな……。まっ、いいや! 目的は果たしたしな!」


 ラーンの20メートル前方にバンシーがピクピク痙攣しながら倒れていたのであった。


 目的を果たしたラーンはルシファーを斧の状態に戻し転移をして颯爽と帰還したのだった。


◆ ◆ ◆


「師匠! いま帰ったぜ!」

「おう。ご苦労だったな」

「あれ? 他のやつはどうしたんだ? 俺が兄貴の次ってことか?」


 予想以上に時間がかかったと思っていたラーンは、咲哉の他に誰もいない医療施設を見て不思議そうな顔をする。


「いや、セトにヘカーテとスパルナは帰ってきているぞ」

「そうだよなー。遅くなっちまったからなー。こいつ逃げてばっかりでさ、超必殺技まで使うはめになっちゃったよ」

「超必殺技はどうだった?」

「師匠! あれはスゲーぜ! 逃げ回るバンシーもあれで一撃だったぜ!」


 咲哉の作ったルシファーズアクスの設定は、悪魔王ルシファーが斧に具現しているというものだった。

 これを作るにあたり頭を悩ませたのは、あの大きさである。

 ゲームに登場する悪魔王ルシファーは10メートルの巨体だったのだ。

 二メートルの斧が10メートルの巨体に変化するというイメージをつかみきれなかった咲哉は、世界構築スキルで再現するのは難しいと感じていた。

 そこで咲哉が考えたのは魔導人形で悪魔王ルシファーを作り、転移で斧と入れ換えるということだった。

 城の一階にある巨大水槽部屋に、ルシファーを格納するための部屋がこっそりと作られている。

 外部から侵入することを不可能としており、転移でしか出入りすることのできない開かずの部屋であった。

 このことはラーンの夢を壊さないために、咲哉だけの秘密としている。


「ラーン……。いつまでもそのままじゃアレだから、そろそろ降ろしてやれ」


 ラーンは猫の首根っこをつかむようにバンシーをつかんだままだったのだ。


「あっ! 軽すぎて忘れてたぜ」


 忘れられていたバンシーは可哀想であるが、床に降ろすときに放り投げなかったラーンを誉めてやりたい。


「こいつの逃げ足はそんなに早かったのか?」

「うーん。早かったかな……。森の中だったから、木が邪魔だったというのもあるのだけど」


 AGIがラーンより高いのかと思い、バンシーのステータスを確認する咲哉。


-----------


【ステータス】


 名前:バンシー

 種族:妖精族

 種別:フェアリー

 ランク:SSS

 属性:闇・冥府

 称号:死の伝達者


 LV:49

 HP:244/2457

 MP:4354/7554

 STR:183

 INT:606

 DEX:351

 AGI:917


 特性:耐肉体(大)・耐闇(大)・耐即死(大)・弱恐怖(超極大)


 INT系スキル:死の叫び・フィアーズストレングス・リジューヴェネイション


-----------


「はあ? なんだこの弱さは……」

「ん? どうしたんだ師匠」

「あっ、いや……なんでもない」


 ステータスを覗けることを隠している咲哉は言葉を濁す。


 モンスタープリズンに閉じ込められていたモンスターとは思えないほど、バンシーのステータスは弱小だったのだ。


「とりあえず、召喚してみるか……」


 咲哉の腕輪にも耐即死(極大)の効果が付加されているが、万が一を考えて万物遮断結界まで体に張っておくことしたようである。


「モンスターサモン! バンシー!」


 黒いドレスをまとった女が姿を現す。

 女の肌は青白く、透き通るような美しい顔をしていた。


 モンスターイートで取り込まれる前は少女だったはずであるが、召喚されたバンシーは何処からどう見ても大人の女にしか見えない。


「これは、どういうことた?」


 バンシーは咲哉と目が合った瞬間――


「キャー!」


 叫び声を上げて一目散に逃げ出してしまった。


「師匠、あんな感じで、あいつは逃げてばかりなんだよ」


 その逃げ足はAGIが917とは思えないほど猛スピードだった。

 医療施設の端まで走りきったバンシーは壁の隅で縮こまりブルブルと震えている。


「うーん……。何かおかしいな」


 そういうと咲哉は世界構築スキルを使って、バンシーの動きを停止させる。


 バンシーに向かって歩きながら再びステータスを確認する咲哉。

 すると、おかしなことに全てのステータス値が大幅に上昇していたのだった。


「これは……スキルのせいか?」


 アナライズでスキルを確認すると、その謎はあっさり解けたのである。


------------


【フィアーズストレングス】


 スキルランク:エキストラレア


 恐怖を感じると全てのステータス値が10倍に上昇されるスキル。


------------


【リジューヴェネイション】


 スキルランク:スペシャルレア


 スキル使用者の年齢を自在に若返らせることができるスキル。

 スキルを発動すると解除するまで若返り効果は半永久的に継続される。


----------


 フィアーズストレングスは非常に使い勝手が悪そうなスキルであるが、バンシーがパワーアップしていた原因はこれであった。

 バンシーのAGIが10倍に上昇すればラーンが追い付けないのも当たり前である。


 バンシーが少女の姿をしていたのはリジューヴェネイションのスキルを発動していたからであろう。

 モンスターイートで咲哉に取り込まれたことでスキル効果がリセットされ大人の姿に戻ってしまったようである。


「あとは恐怖の状態を何とかしないとな」


 バンシーの特性に弱恐怖(超極大)というのがある。

 本来なら恐怖効果のあるスキルに対して耐性が弱いという意味なのだが、超極大までいってしまうとそんなことは関係なく、ちょっとしたことで恐怖を感じてしまうようだ。


 咲哉は仲間に配ったのと同じ効果を持つ¨殺さずの腕輪¨に耐恐怖(超極大)の効果を追加で付加する。

 そして、動きを封じられているバンシーの手首にはめた。


「これでオーケーだな。動いていいぞ」


 既に動けるようになっているはずだが、きょとんとしながら咲哉を見つめるバンシー。


「どうした? もう動けるだろ?」

「あっ……」


 とたんに頬を真っ赤に染めてうつむいてしまった。


「あー、おい! ラーン! こいつはどうしちまったんだ?」

「そんなこと師匠が分からんのに、俺が分かるわけないよ!」

「格好いい……」


 ボソッと呟くバンシー。


「何?」

「超タイプ……」

「えっと……」

「結婚してー!」


 そういうと、バンシーはいきなり咲哉に抱きついたのである。


「えっと……どうなっているんだこれは? ラーン?」

「師匠はモテモテだな! 俺も師匠のことは大好きだぜ!」


 さりげなく告白まがいの発言をするラーンであるが、どういう意味での大好きかは謎である。


 地球にいたころにはモテた試しなどほとんどない咲哉であったが、何故だかモンスターにモテモテであった。

 モンスターの好む顔でもしているのだろうか。

 ここにヘカーテがいないのがせめてもの幸いだったが、あとからトラブルになるのは必至であろう。

 咲哉に取っても色んな意味で前途多難な未来が待ち受けていそうである。

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