45-恐怖の叫び
「よし。シュリー、俺がいいというまで決して動くなよ」
シュリーに決して動くなと命令する咲哉。
いったい何をするのかと思えば、シュリーを両手で担ぎ上げそのまま宙高く放り投げてしまった。
宙を舞い頭から地面に叩きつれらるシュリー。
スカートがめくれて純白の……なんて、普通ならいっていられる状況ではないのだが、頭から落ちたのにも関わらずシュリーは眉一つ動かさなかった。
咲哉の命令を忠実に守る姿はとても健気である。
「きっ、君は! いったい何をしているんだ!」
「何をって、お前がシュリーを魔導人形だと認めないから、証明しているんじゃねえか」
「証明って……」
「見ろ! 放り投げられて頭から落ちたにも関わらず、俺の命令を忠実に守って微動だにしていないだろう」
何処からどう見てもメイド虐待にしか見えない光景だったが、咲哉はいたって真面目である。
「たっ、確かに……動いてはいないようだが……」
「こんなこと人間にはできないだろ?」
「いや、しかし……」
「物理魔法で素肌に添うように障壁を張れば可能ってか?」
「そう! それだ! その通りだよ!」
堕天使本人が思い付いたことではないが、物理魔法を使えば確かに可能ではある。
ただし、障壁でおおわれた人間は大変なことになってしまうのだが……。
物理魔法結界や障壁は、攻撃を防ぐことはできても、衝撃を吸収することはできない。
盾で攻撃を受けたようなものと考えれば、分かりやすいだろうか。
盾で攻撃を受けたときは、攻撃を弾いても衝撃は腕や体にしっかりと伝わる。
もし今回のことを物理魔法障壁を使ってやっていたとしたら、シュリーは衝撃で相当のダメージを受けていたことになるのだ。
「シュリー、動いていいぞ。悪いな、手荒な真似をしてしまって」
「お気になさらないでください。頭が硬くて、うざくて、分からず屋の堕天使を納得させるための事と存じております。咲哉様は決して悪くはありません。悪いのはこのウザダメ堕天使でございます」
毒を吐きまくりなシュリーであった。
「え? ウザダメ堕天使って僕のことかい……?」
「あなた以外でいったい誰がいるというのですか?」
誰もが見惚れるような笑顔で答えるシュリーであったが、吐いているのは毒でしかない。
シュリーが毒を吐く理由は、堕天使の頭が硬く、うざく、分からず屋というだけが原因ではなかった。
咲哉がシュリーの性格を自分を除く全ての男に対して毒舌を吐くようにと、設定していたのである。
絶世の美女に毒を吐かれた男は相当なダメージを受けるだろうに……相変わらず嫌な性格をしている咲哉である。
「堕天使、確かに物理魔法で障壁を張れば、シュリーにやった事と同じことはできるだろう。けどな……」
「けど……?」
「まあ、説明しなくても試せば分かるさ。お前に物理魔法障壁を張ってシュリーと同じことをしてやろう」
「え!? いや、それは……」
うざくて分からず屋な堕天使ではあるが、決して頭が悪いわけではない。
すぐに結果を想像して、どのような顛末になるかを知ってしまったのだ。
「まあ、そう遠慮をするな」
「ちょ、ちょっと待っ!」
時は既に遅し。
というか完全に咲哉の嫌がらせである。
堕天使の体に添って物理障壁を張った咲哉はシュリーに指示をだす。
「シュリー、頭から落ちるように堕天使をぶん投げてくれ」
「了解いたしました」
堕天使はシュリーに持ち上げられ、宙高く放り投げられてしまう。
そして、頭から地面に激突するが、身動き一つ取ることはできない。
指先から足先、口にいたるまで、全てが物理障壁で完全に固められてしまっているからだ。
咲哉を敵に回すと録な目に遭わないということを、堕天使はそろそろ悟ったほうがいいと思われる。
喜び勇んで堕天使へと近寄っていく咲哉。
性悪男ここに極まれり……って感じである。
物理障壁を解かれた堕天使は――
「いっ、痛い! 痛い! 痛いー!」
体内で粉砕骨折を起こしていたのであった。
「おかしいな? シュリーは無傷だったのにな? シュリーどう思う?」
「自業自得だと思います」
堕天使の冥福を祈るばかりである。チーン。
HP全回復ポーションを堕天使に振りかけ、駄目押しをする咲哉。
「シュリーが魔導人形であることを理解したか? それとも、もう一度やるか? 」
「はあ、はあ……。勘弁してくれ……信じる! 信じるから!」
「そうか。話はまとまったし、今日からお前は俺の部下だ」
「なっ、部下だと!?」
「不服ならもう一度ぶん投げるが?」
「わっ、分かった! 今日から僕は君の部下だ! 部下になるから勘弁してくれ!」
余程痛かったのか、完全服従の堕天使であった。
「分かればいいんだよ。俺は部下には優しいからな。今後の働きによっては、お前の専属として美しい魔導人形を作ってやってもいい」
「美しい魔導人形? 僕専属の?」
「そうだ。容姿、性格、何でもお前の好きなように設定することができるぞ」
「僕好みの美しい魔導人形……」
「あんなことや、こんなことまでな」
嫌らしい顔をしながら堕天使をそそのかす咲哉。
飴と鞭を使いこなす様は、堕天使をさらに堕天させそうな勢いである。
(ごくっ)
堕天使が唾を飲み込む音が鳴り響き……。
「喜んで君の部下として働かせてもらおう!」
あっという間に陥落してしまうのであった。
「いい心がけだ。褒美としてお前に新しい名を授けてやろう。そうだな……お前の名は……」
既にアシエルという名がある堕天使であるが、咲哉は新しい名前を付けるようである。
「お前の名前は¨堕天王・ルチーフェロ¨だ!」
堕天王・ルチーフェロと名付けられた堕天使の翼は三対六枚から六対十二枚へと増え、灰色だった翼は漆黒に染まっていた。
ルチーフェロとは堕天使ルシファーの別名である。
中二病な咲哉は例に漏れず、ルシファーという名前は大好きだったのだ。
しかし、そのままルシファーと名付けても芸がないと思い、別名であるルチーフェロにしたのであった。
「翼が増えた……黒い翼……」
漆黒に染まった翼を見て、堕天使は驚愕の表情を浮かべる。
「あー、黒い翼は気に入らんか?」
「だって黒だぞ! 邪悪なイメージになってしまうじゃないか!」
堕天しておきながら今さら邪悪なイメージを気にするとは、とんだ甘ちゃん堕天使である。
「仕方がないな……今回だけだぞ」
咲哉がそういうと漆黒だった翼が金色へと変化した。
「金の翼……おお! 何と素晴らしい輝きなんだ!」
「気に入ったようだな」
「サクヤ! 君はいったい何者なんだ!? 翼を増やしたり、色を変えたり、もはやこれは神の御技だぞ!」
「あー、神の御技ね。まあ、細かいことは気にするな」
神から授かった世界構築スキルは確かに神の御技といえる。
否定することもできず、かといって肯定することも避けたかった咲哉は、いつもの如く軽く流すのであった。
「気にするなといわれてもな……」
「また投げられたくなかったら、これ以上気にするな」
「わっ、分かった……」
脅しに屈する可哀想な堕天使……ではなく、堕天王・ルチーフェロであった。
「あっ、そうそう、お前は見た目だけじゃなく、力もアップしているからな」
「力もアップ?」
咲哉はルチーフェロのステータスを確認する。
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【ステータス】
名前:堕天王・ルチーフェロ
種族:天族
種別:堕天王
ランク:EX
属性:光・闇
称号:禁忌を破りし者
LV:89
HP:26492/26492
MP:60605/60605
STR:3119
INT:8790
DEX:4120
AGI:3597
特性:耐光(極大)・耐闇(極大)・耐精神(大)・耐肉体(大)
STR系スキル:フェザーラッシュ
INT系スキル:物理魔法・空間魔法・精神魔法・蘇生魔法・冥府魔法・光属性魔法・闇属性魔法
DEX系スキル:オブジェクトクリエイト
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「新たに冥府魔法、光属性魔法、闇属性魔法を修得しているぞ」
「まさか……」
ルチーフェロはそういうと右手の平を上に向ける。
すると、手の平に光が集まっていき直径10センチほどの玉が作られた。
「本当に光属性魔法が使えるようになっているとは……。サクヤ、本当に君はいったい何者なんだ? 今まで長く生きてきたが、こんな経験をしたことは一度もない。まるで神話にでてくる神にでも会った気分だ……」
「まっ、細かいことは気にするな」
「いや……うん。気にしないでおこう」
これ以上問答を続けると、確実に放り投げられてしまうと思い口をつぐむルチーフェロであった。
「シュリー、ルチーフェロに城を案内してやってくれ」
シュリーは咲哉に作られた時点で既に城の内部構造はインプットされている。
毒舌を交えつつも素晴らしい案内をしてくれることであろう。
「かしこまりました。ダメウザ堕天使を城に案内させていただきます」
「ダメウザ堕天使……」
シュリーの中でルチーフェロの呼び名は、ダメウザ堕天使と決定されたらしい。
自業自得ともいえるが哀れなルチーフェロである。
咲哉は二人を城の入口へと転移させ、自分は医療施設に残るのであった。
その頃、ラーンは逃げ回るモンスターを相手に追いかけっこをしていた。
◆ ◆ ◆
「逃げ回ってないで、戦えー!」
「キャー!!」
森の中で黒いドレスをまとった少女がラーンに追いかけ回されていた。
少女が叫ぶ度に、木の上から鳥がばたばた地面へと落ちていく。
鳥は気絶して落ちたわけではなく、既に息を引き取っていた……。
少女の名はバンシー。
神話ではバンシーの泣き声が聞こえた家では、近いうちに死者が出るといわれている。
しかし、モンスターとして扱われるときは、彼女の叫び声を聞くと死ぬというのが有名である。
アスナルドのバンシーも例に漏れず、彼女の叫び声には即死の効果があるのだ。
「キャー! なんであんたは死なないのよー!」
即死の耐性を持っていないラーンは、本来ならバンシーの叫び声を聞いただけであの世に旅立っているはずである。
「俺は師匠から、この腕輪に即死の耐性を付加してもらったからな! お前の叫び声なんて、へっちゃらだぜ!」
「キャー! 師匠って何よー!」
森の木をかわしつつ猛スピードで走りながら会話をしている二人は、ある意味凄いかもしれない。
咲哉が仲間に配った殺すことのできなくなる腕輪であるが、ラーンの腕輪にはバンシー対策として耐即死(極大)の効果が付与されていた。
ワイズからあらかじめどんなモンスターがいるかを聞いていたので、対策は完璧である。
「師匠に会わせてやるから、もう逃げるのは止めろー!」
「キャー! 逃げるの止めたら瀕死にするつもりでしょー!」
ラーンは瀕死にするのが目的とバンシーに伝えてしまっていたのだった。
「くそー! こうなったら仕方がない! ルシファーズアクスの超必殺技を使っちゃうぞー! 後悔しても知らないからなっ!」
謎に包まれていたルシファーズアクスの超必殺技がとうとうヴェールを脱ぐ。
詳細を引っ張った分、それに見合うだけの凄い必殺技であって欲しいが、実際はいかに……!?
すんません……更新時間に添削が間に合わず、拙い文章のまま投稿してしまいました。
今夜中に直すようにします(汗)
※26日1時57分に添削完了しました※




