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転生クエスト - ヤンキーが異世界に転生したら -  作者: 早手祐也
【第一章】 モンスターカーニバル
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40-茶色の肌

「まだ誰も戻ってきていないか。先にネームオーダーを済ませるか」


 モンスターサモンでデスジャイアントを召喚する咲哉。


「ここは何処だ……?」

「ああ、ここは医療施設だな。仲間との待ち合わせ場所でもある」

「仲間がいるのか?」

「まあ、後から紹介してやる。それより、お前に新しい名前を付けてやろう」

「モンスターである俺に名前を付けるというのか?」

「そうだ。俺の仲間はモンスターばかりだが、みんな名前が付いているぞ」

「モンスターに名前を付けるとは、やはり面白い男だな」


 モンスターに名前を付けることは、やはり意外だったようである。

 しかし、咲哉はそんなことなど構いなしに、デスジャイアントの名前を考え出す。


「お前の名前はそうだな……。よし! 今日からお前の名前は¨巨雷王・インドラ¨だ!」


 咲哉がネームオーダーを行うとデスジャイアントの肌が茶褐色に変わり、スキンヘッドだった頭に赤色の髪がはえてきた。

 髪はまるで炎のように逆立っている。


「なっ、俺の肌の色が……茶色に……」

「ああー、ずいぶん姿が変わっちまったな。気に入らなかったか?」


 ラーンの姿をリオプレウロドンに変えたとき作った鏡がそのまま残っており、デスジャイアントは自身の変わった姿を見て驚愕している。


「いや……驚いただけだ。俺の紫色の肌は、巨人族では迫害の対象だったのでな。まさか、その肌の色が変わってしまうとはな……」

「迫害か……」


 紫色の肌を持つ巨人はデスジャイアントしか存在しない。

 触れるだけで相手を即死させる力を持つデスジャイアントは、巨人族の中で恐れられ災いを招く者として忌み嫌われていたのだ。

 そして、行き着く先は迫害の嵐だったのである。


 当時の巨人王は自身の権力を誇示するために、デスジャイアントの部落を襲撃した。

 どんなに凶悪な力を持つデスジャイアントだったとしても、数の力には勝てない。

 仲間が全て滅ぼされ、命からがら人里へと逃げ延びたデスジャイアントは恐怖で錯乱していた。

 そして、逆恨みの如く、次々と人里を蹂躙し、いくつもの村や町を滅ぼし、神の目に余りモンスタープリズンへと閉じ込められたというわけである。


 デスジャイアントの口から悲劇を聞かされた咲哉であったが、悲観することも哀れに思うことも一切なかった。

 一族が滅ぼされたということに多少の嫌悪感を覚えはしたが、デスジャイアントも人に対し、結果として同じことをしている。

 そこに同情する余地は一切ない。

 よって、デスジャイアントが受けた苦しみなど、不憫に思うどころか、咲哉にとってはどうでもいいことだったのだ。


「色々あったようだが、お前の人生は今日から新しく始まるともいえる。お前は既にデスジャイアントではなく、巨雷王・インドラなのだからな。まあ、とりあえず、この指輪を着けてみろ」


 デスジャイアントの重い話を軽く流した咲哉は、巨人でもはめれるくらい大きな指輪を作り出した。


「指輪か……。何だか知らんが着けてみるとしよう」


 特に不信がることもなく、いわれるままに指輪をはめるデスジャイアント……改め、巨雷王・インドラ。


 この指輪は咲哉の定番である人化の指輪だ。

 今回咲哉が設定した容姿はインドラのイメージがクールだったことから俳優の中栗旬にした。

 地球にいた頃に見たヤンキー映画『グロイズZERO』に出演していた中栗旬がクールでいい印象だったのだ。

 ただし、髪は黒ではなくインドラの肌に合わせて茶色にしている。


「指輪を着けたな。¨人化¨といってみろ」

「分かった。人化!」


 インドラの姿が瞬く間に中栗旬と瓜二つの人型に変化した。

 髪型はお決まりのツーブロックであるが、服は来ておらずマッパである。

 当たり前の如く、咲哉は男の裸などを見ても動じはしない。


「なっ、人の姿に変わったのか!? 指輪の効果か?」

「そうだ。でかい体のままで、うろつかれたら邪魔だからな。あと、裸のままじゃアレだから、これを着ろ」


 ダークブラウンの特攻服と黒いチェーンメイルを作り出し、インドラに差し出す咲哉。

 特攻服の背中には帝釈天が刺繍されていた。


 インドラとはインド神話に出てくる雷神の名前であり、ヒンドゥー教の聖典では天空の神としても登場している。

 仏教では帝釈天と呼ばれており、このことから咲哉は特攻服の刺繍を帝釈天にしたのだった。


 特攻服を着ている間に咲哉はインドラのステータスを確認する。


-----------


【ステータス】


 名前:巨雷王・インドラ

 種族:巨人族

 種別:巨雷王

 ランク:EX

 属性:冥府・冷熱・雷・水・風

 称号:根絶の使者


 LV:88

 HP:50625/50625

 MP:20753/20753

 STR:8735

 INT:3072

 DEX:2281

 AGI:1644


 特性:耐冥府(大)・耐冷熱(大)・耐雷(大)・耐水(大)・耐風(大)


 STR系スキル:デスハッキング・コールドナックル・ヒートインパクト・デスストレート・デスハンマー・デスクラッシュ・ライジングアタック・サンダーボルトラッシュ・ジェノサイドサンダー・エクレールウラガン


 INT系スキル:デスブレス・コールドブレス・ヒートブレス・サンダーブレス・ウォーターブレス・ウインドブレス


 DEX系スキル:ギガリカバリー・ヘルイヤー


 AGI系スキル:ライトニングラン


-----------


 雷神の名を冠する神だけに属性に雷が増えているようだ。

 水と風の属性が追加されているのも雷との関連だと推測できる。


「似合っているじゃないか。どうだ人の姿も悪くないだろ?」

「そうだな。確かにお前のいうように新しい人生が始まる……そんな予感を感じさせる姿だ」

「俺の名前は、サクヤ・カンバヤシだ。これからは、サクヤと呼べ」


 咲哉はよく人を¨お前¨呼ばわりするが、自分がお前と呼ばれるのは好きではない。

 ほんと自分勝手な性格である。


「サクヤか。了解した。これからはサクヤと呼ばせてもらおう」

「よし。時間も勿体ないし、城の中でも見物していてもらおうか」


 咲哉は城に転移し、インドラの案内をワイズに任せて、再び医療施設へと戻るのであった。


◆ ◆ ◆


 咲哉がデスジャイアントのネームオーダーをしていた頃、セトは荒野で鬼と対峙していた。


「鬼よ! 我と戦おうではないか!」


 鬼の体は茶色をしており、無造作に伸び放題な白い髪が野性味を感じさせる。

 目は白金色に怪しく光り、頭には鬼の象徴といえる二本の長い角がはえていた。

 迫力のある姿で威圧を感じるが、身長は2メートルほどで鬼にしては小型な部類になるだろうか。


「おいおいおい。いきなり戦おうとは穏やかじゃねえな。理由を聞かせてもらっても……?」


 見た目の迫力とは裏腹に好戦的な鬼ではないようだ。


「何をいっておる。龍である我と、鬼である貴様が戦うのは自然な道理じゃろう」

「龍……? 人に化けているということは上位種の龍なのかい?」

「……そうじゃ!」


 確かにセトは上位種の龍ではあるが、人に化けることはできない。

 咲哉のアイテムを使って人化しているのだ。

 セトが微妙に答えを詰まってしまったのはそれが理由だった。


「上位種の龍ねえ……。で、なんで龍と鬼だから戦わなくちゃいけねえんだい?」

「なんじゃと? 龍と鬼は犬猿の仲じゃろう?」

「そんなこと俺には関係ねえことだ。俺は毎日酒を飲んで、だらだら過ごせればそれでいいんだよ。鬼と龍の因縁なんて知ったこっちゃない」


 酒を飲んで毎日だらだらとは、かなり駄目鬼のようである。

 人間社会であれば確実に駄目男の烙印が押されているだろうが、鬼の社会ではどうなのだろうか。


「うむ……困ったのう。我はお前を瀕死にして連れて帰らないと非常に困るのだ」

「おいおいおい! 物騒なこといってんじゃねえよ!」

「むむっ……毎日酒をといっておったな? そんなに酒が好きなのか?」

「酒さえあれば他に何もいらねえ」


 本当に駄目駄目な鬼である。

 何故こんな鬼がモンスタープリズンに閉じ込められたのだろうか。


「ひょっとして、お前もいける口なのか?」


 酒をクイッと飲むジェスチャーをしてセトに尋ねる茶鬼。

 その顔はかなり嬉しそうである。


「うむ。我も酒は好きじゃぞ」

「どうだい兄さん? 争いなんて野暮なことは止めて、俺と酒でも飲まないかい?」

「むむ……酒があるのか? 旨い酒ならば考えんこともない」


 戦いのことなど頭の片隅に追いやられそうな勢いのセトである。

 酒好きはこれだからいけない。


即殺鬼(そくさつき)って名酒は知ってるかい? 鬼族では有名な酒なんだが」

「即殺鬼じゃと……知らんのう。旨いのか?」

「まあ、飲んでみなよ」


 何処から取り出したのか、ひょうたん型の徳利(とっくり)酒枡(さかます)を手に持ち、酒を注いでセトに差し出す茶鬼。


「どれどれ……。おお! これはなかなか旨いのう!」

「そうだろう、そうだろう。鬼族が誇る名酒だからな。さあ、さあ、もう一杯」


 茶鬼は自分の酒枡に酒を注ぎながら、セトにも振る舞う。

 二人ともあぐらをかいて地面に座り、すっかり駄目男の構図ができあがっていた。


 まんまと乗せられて酒盛りを始めてしまったセトだが、赤鬼を瀕死にして連れ帰ることはできるのだろうか。

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