39-因縁の相手
「よし。山も復元したし、そろそろ出発の準備を始めるぞ」
巨大な山が一瞬で元通りになった光景を見て唖然とする一同をよそに、咲哉の話は続く。
「全員に腕輪を配っておく。この腕輪はアイテムボックスになっており、一瞬で闘技場の医療施設へ転移できるようにもなっている」
モンスタープリズンのモンスターを瀕死にして医療施設へ転移させる計画だ。
この腕輪にはアイテムボックスと転移機能だけではなく、生き物を殺すことができないという特殊な機能がついている。
どんなに痛め付けたとしても瀕死にすることしかできず、例え即死級の攻撃だったとしても即座に瀕死まで回復させるという優れた機能である。
咲哉がモンスターイートで取り込むのに特化した機能といえるであろう。
その他の機能も含め、腕輪の使い方を一通り説明した咲哉は作戦の開始を宣言する。
「お前ら! 今からモンスタープリズンのモンスター制圧作戦を開始する! 各々の活躍を期待しているぞ!」
「任せるのじゃ!」
「ダーリンの期待に応えて見せますわ!」
「せいあつー!」
「師匠からの扱い改善目指して、俺も頑張るぜ!」
「ふふふ……。セブンフォースランチャーで……破壊の限りを尽くす……」
突っ込んだほうがよさそうな発言も見られたがスルーする咲哉であった。
「よし。これから転移を行う」
島の地図を広げワイズにターゲットとなるモンスターの居場所を確認し、咲哉は各々をその付近へと転移させた。
「では、ワイズ。俺も行ってくる」
「咲哉様。ご武運を」
◆ ◆ ◆
「この付近にヤツがいるんだな。あのときの借りは、しっかり返してやる」
咲哉は山の中腹付近に転移していた。
岩肌の地面は確認できるが、辺りに霧が立ち込めているせいで視界が悪い。
「視界が悪いな。まず、この霧を晴らすか」
今更だが世界構築スキルは本当に便利である。
こんな霧などあっという間に晴らすことができるのだから。
「いた! あのスキンヘッドに紫色の巨体は忘れもしねえ」
霧が晴れた山の上に、黒ずんで紫色の肌をした巨人がたたずんでいた。
巨人はスキンヘッドをしており、目に赤く鈍い光を宿している。
この巨人は咲哉がモンスターイートでセトを取り込んだときに襲いかかってきた因縁の相手である。
「ん? こっちに気付いていないのか? だったら気付かせてやるか」
そういうと咲哉は巨人の足元に転移をする。
そして、ハイランダーブーツで巨人の顔近くまで浮かび上がった。
「よう! クソ巨人! 久しぶりだな!」
急に顔の前に現れた咲哉にびっくりしたのか、一瞬きょとんとする巨人。
負ける気はしないが、念のためアナライズでステータスを確認する咲哉。
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【ステータス】
名前:デスジャイアント
種族:巨人族
種別:死巨人
ランク:EX
属性:冥府・冷熱
称号:根絶の使者
LV:88
HP:38943/38943
MP:12971/12971
STR:6719
INT:1617
DEX:1901
AGI:609
特性:耐冥府(大)・耐冷熱(大)・弱蘇生(小)
STR系スキル:デスハッキング・コールドナックル・ヒートインパクト・デスストレート・デスハンマー・デスクラッシュ
INT系スキル:デスブレス・コールドブレス・ヒートブレス
DEX系スキル:ギガリカバリー・ヘルイヤー
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「色々と危険そうなスキルはあるが、今の俺にとっては雑魚だな」
咲哉の囁きは巨人に聞こえていないと思われていたが……。
「雑魚だと? お前はこの間、食い損ねた人間か?」
ヘルイヤーという常時発動スキルの効果で巨人は地獄耳だったのである。
しかし、ヘルイヤーとは何とも安直なネーミングである。
「人の言葉を話せるんだな。ところで、人間って旨いのか?」
人間が旨いのかと確認する咲哉だが、もし美味しかったとしても、決して食べはしないだろうに。
無意味も甚だしい質問である。
まあ、食べることはないからこそ、興味本意の質問だったのかもしれないが。
「人間が旨いかだと? これから食われる自分の心配か? ふん! 口に入れば味など関係ない。全部一緒だ」
旨いから食うわけじゃなく、腹を満たすためだけに食う、そんな感じだろうか。
「口に入れば全部一緒か。食事の楽しみをしらんとは、何とも寂しい生き方をしているな」
「生きるに楽しいも寂しいもない。生きていることこそが、苦しみそのものなのだ」
今まで録な経験をしていないのか、生きていることが苦しみと語るデスジャイアント。
いったいどんな道を歩んできたのだろうか。
「そうか……。では俺がその苦しみを終わらせてやろう」
「面白い。人間であるお前が俺を殺すというのか? 殺せるものなら殺して欲しいわ!」
咲哉のいったことがよほど気に入らなかったのか、不意討ちをしかけるデスジャイアント。
両手を握りハンマーの如く咲哉に向かって降り下ろした。
「不意討ちか? 雑魚がやりそうな手だな」
片手を上げ難なく受け止める咲哉。
「キサマ! 何故、生きている!?」
「何故っていわれてもな……」
デスジャイアントが放ったスキルはデスハンマーである。
デスハンマーは物理攻撃だけではなく触れたものを即死させる効果があるのだ。
即死の耐性がない場合は、あっという間にあの世行きになってしまうという、かなり凶悪なスキルである。
咲哉は事前に衝撃吸収結界と万物遮断結界を張っていた。
衝撃吸収結界でデスハンマーの衝撃を吸収し、万物遮断結界で即死効果そのものを遮断していたのである。
これはワイズから予めデスジャイアントの特性を聞いて、対処していたことだった。
「すぐ楽になるのと、じわじわと……」
咲哉が話し終わるのを待つことなく、デスジャイアントはデスブレスを吐き出す。
即死効果のあるブレスが咲哉を襲うが、当たり前の如く無傷である。
「また不意討ちか……。お前は典型的な雑魚だな」
「ばっ、馬鹿な! 何故、死なん!?」
半ばパニック状態のデスジャイアントを見て、咲哉は神龍刀・咲哉を引き抜き、その首を一刀両断した。
「ん? 倒れないのか?」
本来なら首を切断されたデスジャイアントは、腕輪の効果で即死することこそないが、瀕死になって倒れているはずである。
しかし、何事もなかったようにたたずんでいた。
何かを感じた咲哉は、即座にデスジャイアントの腕を刀で肩から切断する。
「なるほど。事前には聞いていたが、予想以上に凄まじい再生能力だな」
腕は切られた側から即座にくっつき再生していたのだった。
咲哉はこの再生能力ギガリカバリーのことをワイズから事前に聞いていたが、ここまで驚異的な再生能力だとは思っていなかった。
ギガリカバリーは常時発動型のスキルで、どんな攻撃であったとしても即座に回復してしまうチートなスキルである。
このスキルを持つ者を倒すには、存在その者を一瞬にして消滅させるしかないのだが、モンスターイートで取り込みたい咲哉としては、そんなことできるわけがない。
「人間よ。確かにお前は強いようだ。しかし、俺を殺すことなど何者にもできんのだよ!」
「殺しはしないさ。瀕死にはするけどな!」
再び同じように刀でデスジャイアントの首を一刀両断する咲哉。
首はくっついたままであり、その傷も再生している。
しかし、デスジャイアントは膝から崩れ落ち、倒れてしまった。
「もう虫の息だろうが、しゃべれるか?」
咲哉は倒れたデスジャイアントの顔に近付き話しかける。
「うっ……。俺にいったい何をした?」
「お前の再生能力を封じたんだよ。首を切り飛ばしたが、俺の力で瀕死状態にまで回復をした」
「ばっ、馬鹿な! そんなことが……」
咲哉は世界構築スキルを使ってデスジャイアントの再生能力を封じ、首を一刀両断したのである。
即死級の攻撃ではあったが、咲哉の作った腕輪の効果で瀕死の状態まで即座に回復されている。
「理由は知らんが、お前は死にたがっていたよな? 俺の力を使えばお前を殺すことなど容易い」
「そうか……。俺はやっと死ねるのか……」
「何をいっている? 殺しはしないぞ」
「何だと……!?」
デスジャイアントはよほど死にたいらしい。
しかし、死のうにも、どんな攻撃も即座に再生されてしまい、決して死ぬことができない。
「死にたいなどと思うくらいだから、よほど辛い目にあったんだろうな……。しかし、殺しはしない。これからは俺のために生きてもらう」
「お前のためにだと?」
「そうだ。俺が生きる楽しさを教えてやる。もし俺と一緒にいて、それでも死にたいと思ったのなら、いつでも殺してやるから安心しろ」
「くっくっく……。面白いことをいう人間だな。決して死ねないと思っていた俺をいつでも殺せるか……。分かった。いう通りにしてやろう」
「交渉成立だな。モンスターイート!」
話がまとまると咲哉はすぐにデスジャイアントをモンスターイートで取り込んだ。
「よし。医療施設へ転移するか。あいつらは上手くやっているかな?」
そういって医療施設へ転移した咲哉だったが、部屋は閑散としており、まだ誰も帰ってきてはいないのだった。




