37-アリアンロッド
「よし! 全員揃ったな! 武器が必要なやつは名乗り出ろ」
城の外に全員が集合し、司令官ぽくちょっと偉そうな咲哉は朝から何だかとてもノリノリである。
「私からいいかしら? ダーリンにお任せで杖を作っていただきたいですわ」
「俺のお任せって、どんな杖でもいいのか?」
「全てはダーリンにお任せしますわ」
さすがにこの間作った骸骨の杖……というわけにはいかないと、ちょっと悩む咲哉である。
「うーん……そうだな。こんな感じの構想でいいか」
咲哉が作り出した杖は、鉄のような材質でできた見た目は特に何の変鉄もない杖だった。
「この杖をアリアンロッドと名付ける」
ネームオーダーにより姿を徐々に変えていく杖。
その色は白銀色に変わり、杖の頭部には10枚の車輪が重なるようについていた。
鉄の杖が何とも奇妙な外観に変化したものである。
アリアンロッドとは、ケルト神話に登場する『白銀の車輪』という意味も持つ、時を司る女神の名前である。
「さらに機能を追加してと……。よし! これで完成だ!」
アナライズでアリアンロッドを確認し、満足そうな表情を浮かべる咲哉。
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【アリアンロッド】
時を操る魔法の杖。
オリハルコンで作られている。
レア度:エクストラレア
種別:杖
ATK:800
付加効果:車輪浮游・時間停止
特殊効果:破壊不能・魔法反射
【時間操作】
周囲の時間を自在に操作することができる。
時間操作の影響力はINT値の高さに左右される。
時間操作中は1秒につき1000のMPが消費される。
時間操作を続けて行うことはできず、時間操作を行ったときと同じ時間だけインターバルをはさまなくてはならない。
【車輪浮游】
車輪を空中に浮游させ自由自在に操ることができる。
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「オシャレな外観の杖ですわね。ダーリンの愛を感じますわ」
見方によってはアートチックでお洒落な杖に見えるかもしれない。
ヘカーテのセンスでそう感じたか、咲哉を立てていったのかは謎である。
「見た目だけではなく、非常に優れた杖だ。使い方を説明するから見ていてくれ」
そういうと咲哉は実験を兼ねて時間操作を行った。
咲哉を中心に直径11メートルほどの丸い円が現れる。
円の中は灰色をしており、何とも奇妙な空間だった。
「円の中だけ時間が停止しているのか。円はこれ以上大きくすることはできないが、小さくすることはできると……大きさがINT値に左右されるってことだな」
円の大きさはINT値に左右され、INT1000につき1メートルの円を作ることができる。
ラーンとスパルナを新たに取り込んだ咲哉のINT値は11453あるので、11メートルの円を作ることができたのだ。
円を小さくするのには特に制限はない。
「なるほど、円を動かすこともできるんだな」
咲哉は円を自分から外れるように動かし、ヘカーテたちだけを包み込んだ。
「円の中の時間を遅延させてみるか」
そして、ヘカーテたちの後ろに回り込む咲哉。
そこで急に円が消失してしまう。
「ん? MP残量はまだあるよな? 時間操作の継続時間もINTに左右されるってことか?」
「ダーリン! 今の早さは何ですか!?」
「凄いスピードじゃったのう!」
「にんじゃばしりー!」
「え? 師匠なら当然の早さでは?」
円に包まれたヘカーテたちの時間が遅延され、普通に歩いていた咲哉の動きが、猛スピードに見えていたのだ。
ラーンだけは、咲哉と戦ったときに転移を使って殴られた経験があるので、超高速で動くのが当たり前と思っているようである。
「まあ、ネタバレは後からだ」
そういうと咲哉はヘカーテたちの前に移動し、再び時間操作の円を発動させる。
既にインターバルの時間は過ぎていたようで、問題なく時間操作を行うことはできたようだ。
「今度は時間の加速を試してみるか」
自分の周囲のみを円で包み時間加速を行った咲哉は、ヘカーテたちの背後に回り込み、すぐに円の大きさを広げ全員を包み込む。
「次は時間を停止させてと……。おい、ヘカーテ。動けるか?」
時間を停止させ、ヘカーテの時間停止のみを解除する。
「ダーリン! また物凄い早さで……え? この灰色の空間は何かしら?」
「この灰色の空間の中だけ、時間が止まっているんだ。で、今はお前だけを動けるようにした」
「時間を止めたのですか……!?」
あまりに突拍子のない話に驚愕するヘカーテ。
そこでまた円が消失する。
「サクヤよ! そのスピードは何なんじゃ! 転移ではないじゃろう!」
「にんじゃばしりだよー」
視認できるが異常に速いスピードということで、転移ではないと判断したセト。
セクメトは忍者走りと思い込み、ラーンは師匠なら当然と特に反応はない。
スパルナはさっきから興味すら抱いていないようである。
「まあ、そうせかすな。説明はあとだ」
セトたちの反応を見る限り、自分を円で包んで時間を加速させても、自分の除いた周囲を円に包み込み時間を遅延させても、どちらも超加速で動いているようにしか見えないらしい。
この後も咲哉は時間操作の実験を繰り返す。
そして、分かったことは、円の大きさを広く維持すると時間操作に使える時間が短くなるということだった。
自分の周囲のみを小さな円で包み時間操作を行ったときのほうが、数倍長く円を維持できたのである。
詳細なデータとしては、11メートルの円を維持できた時間は11秒、自分の周囲のみと小さくした場合は22秒だった。
このことから円をマックスで広げた場合の維持時間は、INT1000に対して1秒ということが分かったのである。
たった11秒であったとしても時間を完全停止できるのだから、これはとんでもなくチートな能力である。
しかし、MPとINTが高い咲哉だからこそここまで使いこなせたのであって、ヘカーテではこの半分も活用することはできないであろう。
ヘカーテのINTは3027なので、3メートルの円を作ることができ、3秒間時間を止められるということだ。
咲哉とは比べものにはならないが、それでも充分すぎるほどチートな力として使うことができるだろう。
「ネタバレをするとだな。このアリアンロッドは時間を停止、加速、遅延と自由自在に操ることができるんだ」
時間操作の実験を終え、やっとネタバレをする咲哉。
「時間をじゃと!? さっきの高速移動はそういうカラクリなのじゃな……。またとんでもない杖を作ったものじゃ」
「にんぽう、かなしばりのじゅつ?」
「時間を止めるって……師匠はそんなことまでできるのか!? スゲー! まじスゲー!!」
「俺がというより杖の力だけどな。これはヘカーテの杖になるから、しっかり時間操作をマスターするんだぞ」
「はい! ダーリンのお役に立てるように頑張りますわ!」
セクメトの金縛り発言は華麗にスルーされるのだった。
ヘカーテに時間操作のレクチャーを行った咲哉は次に車輪の使い方を説明する。
「次は車輪の使い方だ。念じることで10個の車輪を自在に浮游させ、動かすことができる。こんな感じにな」
10個の車輪が空中に浮かび自在に動き出す。
「おお! 空飛ぶ車輪とは、なかなか面白いのう。これを敵にぶつけるのか?」
「まあ、ぶつけて使うこともできなくもないが、本来の使い方はな……」
ヘカーテに水属性魔法の水弾を車輪に向けて発射させる咲哉。
車輪にぶつかった水弾は次々と他の車輪に当たっていき、まるで大道芸のように踊り出す。
「この車輪はあらゆる魔法を反射させる効果がある。防御にも使えるし、こうやって……」
一個の車輪をラーンの後ろに展開させた咲哉は、次々と水弾を反射させていく。
そして、最後にラーンの後ろにある車輪に反射させ、ラーンに水弾をぶつけた。
「いてー! 後ろから水弾が……って、師匠! ひでーじゃねえか!」
「こんな感じに車輪を使えば敵の死角から攻撃をすることができるわけだ」
「無視するなー!」
「ラーン。実験に犠牲はつきものだ」
相変わらずラーンの扱いが悪い咲哉であった。
「アリアンロッドの使い方はこんな感じだな。どうだヘカーテ?」
「すごいですわ! さすがは愛しのダーリンです!」
「まあ、慣れるまで難しいかもしれないが、頑張って使いこなしてくれ」
自分の構想が全て再現され、満足のいく杖を作ることができた咲哉はどや顔全開であった。
「よし。他に武器が必要なやつはいるか?」
「師匠! 次は俺の武器を作ってくれ!」
今日も散々な目にあっているラーンだが、果たしてどんな武器を選んだのだろうか。




