34-モードチェンジ
「おい! 丸焼き鮫! いつまで寝てんだ? さっさと起きろ!」
医療施設で横たわっている瀕死のギガロドンに、咲哉はHP全回復ポーションを振りかける。
「う……うっ。ここは? ひー!」
咲哉の顔を見て、恐怖で驚愕するギガロドン。
「ひー! じゃねえよ。お前は俺に、何かいうことがあるんじゃねえのか?」
「あっ、えっと、その……。すいませんでしたー!」
「あん? 何に対して謝っているんだ?」
「調子に乗ったことと! 約束を破ったことです!」
「ほう……。きちんと分かっているじゃねえか」
ヤンキーだった咲哉は、この手のやり取りはお手のものである。
「で、どうすんだ? 人間である俺の部下になるのか?」
「はい! これからは師匠と呼ばせていただき! 一生着いていきます!」
「師匠だと……? まっ、いいか。それより、その堅苦しいしゃべり方は止めろ。不快だ」
「ひー! すいません! けど……」
「いつものお前の話し方でいいって、いってんだよ」
こういっている咲哉だが本当の意味での本音は違った。
ヤンキー時代にこのような敬語で話す後輩はいたので、実際は不快に思うことは何一つない。
しかし、ギガロドンの人化した姿が問題だった。
咲哉が設定した容姿はSPL48のカオルである。
アイドル姿で敬語を使って、へーこらされるのを想像すると、何とも微妙と思ってしまったのだ。
「あー、じゃあ……。いつもの話し方で……頑張ります!」
「まあ、そう怖がるな。俺は部下になったやつには優しいからな」
「はい! ありがとうございます!」
いつもの話し方といわれても、一度刻み込まれた恐怖で、そう簡単にはいかないギガロドンだった。
まあ、基本的に脳筋なギガロドンであるから、すぐに調子を取り戻すであろうが。
「よし。部下になったお前に新しい名前を与えてやろう!」
「名前ですか!? あっ、ありがとうございます!」
アスナルドでは、モンスターに名前があるのは稀である。
モンスターには名前で呼び合う習慣がないからだ。
よって、名前を付けてもらうのは、以外に嬉しいことだったりするのである。
「そうだな……。お前の名前は今日から、¨雲海王・ラーン¨だ!」
雲海王・ラーンと名付けられたギガロドンの体は青色から濃い水色に変わる。
体の大きさは特に変化しなかったようだ。
「色が変わったくらいにしか見えないが、ステータスはどうだ……?」
アナライズスコープでステータスを確認する咲哉。
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【ステータス】
名前:雲海王・ラーン
種族:海洋族
種別:雲海王
ランク:EX
属性:水・風・雷
称号:全てを食らう者
LV:78
HP:37139/37139
MP:12801/12801
STR:5905
INT:1817
DEX:2365
AGI:4190
特性:耐肉体(大)・耐水(大)・耐風(大)・耐雷(大)
STR系スキル:パワーファング・メガクラッシュ・ギガインパクト・サイクロンバキューム・ウォーターアドレナリン・イネスケイパブルネット
INT系スキル:水属性魔法・ウォーターブレス・トルネードブレス・ライトニングブレス
AGI系スキル:スラッシュカッター・ウォータームーヴ
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「ほう……。色々とスキルが増えているが、ブレスも使えるようになったみたいだな」
「ブレス? ブレスって、あの、龍がブワーっと吐くやつ……?」
「ああ。その龍がブワーって吐くやつだ」
「おっ、俺が! ブレスを吐けるようになったってこと!?」
「そうだ。俺が新しい名前を与えたことで、お前はブレスを吐けるようになったんだ」
どや顔の咲哉に、すっかりいつもの調子に戻りつつある丸焼き鮫……ではなくて、ラーンだった。
「スゲー! 俺は一歩! 龍に近付いたぜー!」
「そういえば、お前は龍に憧れていたんだったな。よし! 部下に優しい俺は、お前に新しい力を与えてやろう!」
何だかとても調子に乗り出した咲哉である。
「師匠! 新しい力って何だ?」
「まあ、そう焦るな。ちょっと待ってろ」
咲哉はラーンに手のひらを向け、世界構築スキルで光が溢れ出すエフェクトを作る。
せっかく師匠と呼ばれているのだから、それらしい演出をしてみたのだ。
「よし。完了だ。¨モードチェンジドラゴン¨といってみろ」
「え? モードチェンジドラゴン?」
ラーンの体が青い煙に包まれ姿が変わっていく。
鰐のような頭と長い体に四つの鰭を持つその姿は恐竜に近いだろうか。
咲哉は首輪に新たな力を追加し、地球に生息していた古代生物リオプレウロドンの姿に変化できるようにしたのだった。
世界構築スキルで巨大な鏡を出し、ラーンに自身の姿を見せる咲哉。
「え!? これが俺……? あっ、あー! 龍になってるー! 龍になってるよー! リオプレウロドン見たいな龍になってるー!!」
ラーンの発言から察するに、アスナルドにはリオプレウロドンが生息しているらしい。
アスナルドを創造した神はモンスターとして地球の古代生物まで作っていたようだ。
思えばギガロドンもメガロドンという古代の巨大鮫と瓜二つである。
「どうだ? 気に入ったか?」
「師匠! マジすげーよ! 嬉しくて涙が……」
セトとセクメトが龍化したときもそうだったが、ラーンは感動するとすぐ泣くらしい。
「その姿でブレスを吐いたら格好いいんじゃねえか?」
「おお! やってみる!!」
「ちょ、ちょっと待て!」
ラーンの口から激しい水の波が吐き出された。
「すげー! ウォーターブレスだー!」
「おい! 水浸しにするんじゃねえ!」
「すっ、すまん。師匠……」
「まあ、いい……。あと、トルネードブレスとライトニングブレスも使えるようになっているからな」
「マジで!? 俺! 師匠の部下になって良かったよー!」
師匠だったら部下ではなく弟子と表現するのが正しいのだが、ラーンにそんな細かいことをいっても仕方がない。
しかし、恥ずかしい間違いではあるので、いずれは気が付いて欲しいものである。
今回、咲哉はただ単にラーンを喜ばせるためだけにリオプレウロドンの姿に変化させたわけではなかった。
ある実験を兼ねていたのだ。
それは世界構築スキルで姿だけではなく種族も変化できないかということだった。
ステータスやスキルを変化させず、種族のステータス表記のみを変化させたかったのである。
これには咲哉がこの先に考えている計画に、必要があってやったことなのだが、その理由をここでは語らないことにしよう。
気になる実験の成果はどうだったかというと、成功である。
咲哉がステータスを確認するとラーンの種族が恐竜族に変化していたのだ。
龍族ではなく恐竜族なので、正しくは龍ではないのだが、リオプレウロドンを知っているラーンが喜んでいるということは、どちらの種族も憧れの対象だったと思われる。
「あと、¨モードチェンジシャーク¨といえば鮫の姿に、¨モードチェンジヒューマン¨で人化するからな」
「わかったぜ! 師匠!」
「龍になって喜んでいるところで悪いが、建物内にいるときは巨体が邪魔になるから人化していろ」
そういって人化させ、咲哉はラーンと一緒にVIPルームへと転移するのだった。
◆ ◆ ◆
「いま帰ったぞ。待たせたな」
「おお! サクヤよ。我がライバルと呼ぶに相応しい戦い振りであったな!」
「あん? いつから俺がお前のライバルになったんだよ」
「友と書いてライバルと呼ぶのじゃろ?」
「はあ……漫画の影響か。まあ、友でもライバルでもどっちでもいいが、用が済んだから城に帰るぞ」
「ダーリンは何故ギガロドンと戦っていたのかしら?」
「ああ。戦っていた理由は教育的指導だ。あと、こいつは今日からギガロドン改め、雲海王・ラーンと名付けたから、よろしくな」
「師匠に雲海王・ラーンと名付けてもらいました! よろしくお願いします!」
「お兄ちゃん、弟子とったのー?」
「こいつが勝手にそう読んでいるだけだ。それより城に帰るぞ」
色々ありすぎて疲労困憊の咲哉はすぐにでも帰って寝たかったのだが、それを呼び止める声が……。
「まだ駄目……。食べ終わっていない……」
そこには三十皿近くの食べ物を平らげ、追加でまだまだ食べ続けているスパルナの姿があった。
しかも手づかみである。
思えば鳥であるスパルナがスプーンやナイフを使えるはずもなく、手づかみで食べるのは当たり前のことであった。
「ああ……お前か。今度、スプーンなどの使い方を教えないとな……」
そういって、呆れてしまった咲哉だが、このメンバーの中でスプーンとフォークをまともに使えるのはセクメトとヘカーテだけという事実をまだ知らない。
あとでヘカーテを先生として猛特訓が行われるのだが、これは物語としては語られない裏話である。
次回は自重なしのアイテム作成(笑)




