28-まさかの釣果
「セクメト! ヘカーテ! 魚がかかっているぞ!」
咲哉は慌てて二人に声をかけ、航を止めて魚を釣り上げさせる。
「あら、小さな魚ですわねえ」
ヘカーテが釣り上げた魚は2メートルを超すカルムチーだった。
小さな魚ではなく充分大物だ。
10メートルクラスの鯉を釣り上げたヘカーテからすると小物でしかないのだろうが。
「くろだいー!」
セクメトが釣り上げた魚は1メートル近いクロダイ。
こちらも地球でお目にかかれないほどの大物である。
咲哉の思い付きで何となく始めた釣り勝負だったが、数多くの大物が釣れ予想以上に大漁だった。
そこで咲哉はふと思う――
「こんなに大量の魚を釣って、いったいどうやって処理したらいいんだ?」
と……。
料理に使うにしては多すぎるし、ご近所さんにお裾分けしようにも、そもそもご近所さんなんていない。
この島に住んでいる人は咲哉一人である。
残る選択肢は城に増設した水槽で飼うしかないのだが、この規模だとちょっとした水族館になってしまう勢いである。
そんなことを咲哉が悶々と考えていると、船体に衝撃が走り船が横に引っ張られた。
何が起こったかと慌てて周囲を見渡した咲哉は、すぐに原因を発見し驚愕の声を上げる。
「なっ、なんなんだ! あの引きは!!」
咲哉の竿が大きくしなり、釣り糸ごと船が横に引っ張られていたのだ。
急いでリールを巻き上げようとした咲哉の顔がひきつる。
「なっ!? リールが動かない!」
STR7000台の咲哉ですらリールを巻き上げることができなかったのだ。
「お前ら! 船の中に入れ!」
危険を感じた咲哉はセクメトとヘカーテを船の中へ避難させる。
そして、自身も操縦席に飛び込み船を急発進させた。
咲哉の作った船のパワーは並みじゃない。
2800馬力に最高速50ノット(時速92.6キロ)の特別仕様だ。
巨大魚に負けるようじゃ大型クルーザーの名がすたる。
「行っけー!!」
気合いを入れても船のパワーが変わるわけでもないのだが、こういうときはついつい気合いを入れて叫んでしまうものである。
咲哉の気合いとは関係なく魚のパワーに船が勝り、ゆっくりと前進を開始する。
徐々にスピードは出てくるが最高速には程遠い30ノット(時速55.56キロ)くらいしか出ていないようだ。
「凄いパワーの魚だな……」
「ダーリン。もうすぐ日没ですけど間に合うかしら?」
「俺にとって勝敗は正直どでもいい。しかし、俺たちをビックリさせた分、こいつはきっちり釣り上げてやらないとな」
「お兄ちゃん、ふぁいとー!」
「任せろ! とっておきの考えがある!」
巨大魚は疲れてきたのか、船の速度が上がっていき岸がどんどん近付いてきた。
既に最高速に近いスピードが出ている。
「あの、ダーリン……。このまま行くと岸にぶつかるような気がするのですが?」
「大丈夫だ! 俺を信じろ!」
「しんじるものは、すくわれるー?」
何処で覚えたのか変なことをいうセクメト。
そんな言葉を気にすることなく咲哉は岸に向かって前進させ、大きな声を張り上げた。
「飛べー!」
「えっと……。船が……」
「とんでるー!」
ヘカーテては唖然とし、セクメトは大喜び。
船が岸にぶつかる直前に空へと舞い上がったのだ。
「飛んでいますわね……」
「とんでるー!」
「ああ。俺の作った船は空も飛ぶんだ」
どや顔の咲哉に、唖然とし続けるヘカーテ、相変わらず大喜びのセクメト。
まるで諺のような三者三様の反応が実に面白い。
「あの……ダーリン、津波のときも船を飛ばせば良かったのではないかしら?」
「あっ……すまん。あんときは忘れてた」
スキル使用禁止の勘違いといい、空飛ぶ船の仕様を忘れていたりと、今日の咲哉はとてもボケボケである。
「それより、巨大魚はどうなっている?」
咲哉がそういったとき、強い衝撃とともに船がいきなり傾いた。
「ここは空だぞ! 何が起きた!?」
船体が激しく揺れ、高度がどんどん下がってきている。
「セクメト! ちょっと操縦を代われ! 俺は外を見てくる!」
そういって咲哉はデッキへ飛び出し、ハイランダーブーツで空へと舞い上がった。
そこで咲哉が見たものは……。
「えっと、これはどういう情況なんだ……?」
釣れた巨大魚は鮫に見える。
船体よりも巨大な鮫……まあ、とりあえず、これはいいとしよう。
咲哉が混乱したのは、鮫と一緒の釣り糸に巨大な鳥が絡まっていたからだった。
「なるほど。鮫を餌に鳥まで釣れてしまったのか。まさかの釣果だな……」
憐れな鳥は船にぶら下がっていた鮫を狙って襲いかかり、破壊不能の釣り糸に絡まって捕獲されというわけである。
「っうか、この異常なデカさは、ひょっとして鮫も鳥もモンスターなんじゃねえか?」
船体よりも巨大な鮫は20メートルくらいはありそうだ。
さすがにただの鮫にしては大きすぎる。
鳥もただの鳥と呼ぶにはあまりに大きすぎで、鮫と同じく20メートルはありそうだ。
アナライズで鮫から順にステータスを確認してみると、やはり、咲哉の予想通りモンスターだった。
-----------
【ステータス】
名前:ギガロドン
種族:海洋族
種別:大鮫
ランク:EX
属性:水
称号:全てを食らう者
LV:78
HP:16214/24759
MP:8534/8534
STR:4543
INT:843
DEX:1689
AGI:2465
特性:耐肉体(大)・耐水(大)・弱火(小)
STR系スキル:パワーファング・メガクラッシュ・ギガインパクト・サイクロンバキューム・ウォーターアドレナリン
AGI系スキル:スラッシュカッター・ウォータームーヴ
-----------
【ステータス】
名前:ロック鳥
種族:鳥族
種別:霊鳥
ランク:EX
属性:風
称号:大暴風
LV:84
HP:37603/38671
MP:42705/42765
STR:3185
INT:3227
DEX:3138
AGI:3319
特性:耐精神(大)・耐風(大)・弱雷(小)
STR系スキル:ハッキングクロウ・ウイングブレード・メガトルネード
INT系スキル:風属性魔法
DEX系スキル:パニックハウリング・ウインドバーズ・エアボールバリア
AGI系スキル:スクリューランス・ソニックインパクト・ウインドフォース
-----------
「やはり、モンスターか。さて、どうしたもんかな?」
咲哉としてはモンスターイートで取り込みたいところだが、このままモンスターを痛め付けて瀕死にするのは船体にまで影響しかねない。
「うおっ! 危ねえ!!」
風圧を感じとっさに交わす咲哉。
「なんだ今のは!? ひょっとしてロック鳥の風属性魔法か?」
このままでは船に直撃を受けかねないと思った咲哉は、世界構築スキルを使ってギガロドンとロック鳥の動きを封じる。
そして船内に戻り、セクメトとヘカーテを呼ぶのだった。
「セクメト、ヘカーテ、外に出てみろ。面白いものが見られるぞ」
「面白いものですか?」
「みるぅ! みるー!」
船の操縦をリモコンに切り替えて、空へと飛び上がる三人。
「あら、まあ……。あの鳥は鮫で釣れたのかしら?」
「すごーい! たいりょうだー!」
「よし。このままセトのところに向かうぞ」
セトにも見せてやりたいと思った咲哉は船の高度を上げる。
そして、このままの状態で船を飛行させ、セトとの待ち合わせ場所へと向かうのだった。
セトのびっくりする顔が見物である。




