25-色んな意味で大漁
咲哉にとっては色々あったが、船にはトラブルもなく航行は順調に進んでいる。
「おい! セト! 聞こえるかー?」
急に無線を使ってセトに話しかける咲哉。
「なんじゃ? これからちょうど釣りを始めようとしていたところじゃ!」
「なら、ちょうどいい。せっかくの勝負だから賞品でも用意しようかと思ってな」
「賞品じゃと? 確かに釣り勝負には賞品は付き物じゃな。で、その賞品とは何じゃ?」
咲哉のいう賞品とは、一番大物を釣り上げた勝者に咲哉が何でも願いを叶えてあげるというものだった。
世界構築スキルを使えば大方の願いを叶えられるという咲哉ならではの提案だ。
「何でも願いを叶えるじゃと!? ガッハハハ! 面白そうではないか!」
「まあ、ダーリンが何でも願いを叶えて下さるの? うふふ。あんなことや、こんなこともかしら?」
「よるのさーびすー」
ヘカーテとセクメトの微妙に怪しい発言を聞き、絶対二人には勝たせられないと思う咲哉であった。
「ただし、俺が勝った場合は三人に俺の願いを聞いてもらう! どうだ? この勝負、乗るか?」
咲哉は勝者の願いを叶え、咲哉が勝ったら三人は願いを聞く。
一見不公平に感じるが、世界構築スキルで何でも願いを叶えれる咲哉となら妥当な条件かもしれない。
「勝負に乗るかじゃと? 乗るに決まっておるではないか!」
「その勝負、受けて立ちますわ!」
「しょうぶのるー!」
「オーケー、オーケー、じゃあ特別にハンディをやろう。俺はスキルを使わない。お前らはスキルを好きに使っていい。どうだ?」
何だかとても調子に乗っている咲哉である。
本当に大丈夫なのだろうか。
「ガッハハハ! サクヤよ。それは、負けたときの言い訳か?」
確かに『俺はスキルを使えなかったから負けたんだ』と立派な言い訳になる。
実に咲哉らしいともいえるが、実際の思惑は……。
「まあ、好きに受けとれ。どうせ勝つのは俺だからな」
「ほほう。凄い自信じゃのう。ではその条件で受けてやるわい」
「ダーリン、本当に大丈夫ですの? こう見えても私のスキルは、釣りに使えるものが多いですわよ」
「スキルつかうー!」
実際のところ咲哉にとっては、釣りの勝敗などどうでも良かったのだ。
面白おかしく釣りができれば、それでいいと考えていた。
自分が世界構築スキルを使ってしまえば確実に勝ってしまうだろう。
けど、それでは面白くない。
自分がスキルを使わず、三人が好きなようにスキルを使えれば、かなり盛り上がると思ったのだ。
「まあ、とにかくお前ら好きにスキルを使って釣りを楽しんでくれ。勝負は日没までだ。それじゃあ、始めるぞ」
「ガッハハハ! サクヤよ。ようするに釣りは実戦じゃ! 千変万化する自然を相手とした本物の釣りは、そんなにあまいもんじゃないぞ!」
「何かどっかで聞いたことのあるような台詞だな……。まあ、いい。とにかく勝負開始だ!」
こうして四人の熱い釣り勝負がスタートしたのであった。
◆ ◆ ◆
咲哉は直感に従いポイントを定め船を停止させる。
「よし! ここで釣りを始めるぞ」
近くにセトの船は見当たらない。
かなり広い湖なのでポイントがバッティングする可能性は低いだろう。
操縦席からデッキに出て二人に釣竿を渡そうとする咲哉であったが……。
「お兄ちゃん、ちょっとまって!」
「ん?」
「いっくよー! 火遁・猛火滅却ぅ!」
「えっ、ちょっ、おい!」
湖面に向かってファイアーブレスを吐き出すセクメト。
比較的浅い所にいた魚が高温で熱せられプカプカ浮いてくる。
「たいりょうだよー!」
「あのなぁ。スキルを好きに使っていいとはいったが、釣竿を使わないのは駄目だ。釣竿を使わないと釣りにならないからな。スキルだけで魚を採るのは禁止だ!」
「たいりょうなのにー」
「駄目ったら駄目だ!」
ある意味大漁ではあるが、高温に熱せられた水面じゃ釣りにならないということでポイントを移動する咲哉たちであった。
場所を移動し、気を取り直して二人に釣竿を渡す咲哉。
各々ルアーを飛ばして釣りを開始する。
ふとヘカーテを見ると、スキルを発動し湖面に大量の魚型シャドウモンスターを生み出していた。
魚型シャドウモンスターの大きさは大中小と様々である。
「ヘカーテ、シャドウモンスターで魚を獲るのは禁止だからな」
「分かっていますわ。ダーリン」
シャドウモンスターで魚を捕らないのであれば、いったい何に使うのだろうか。
とりあえず様子を見守ることにする咲哉だった。
「お兄ちゃん、かかったー」
「おお! 早速か! リールを巻け! よし、ロッドをしゃくれ!」
「ろっどをしゃくれー?」
「あっ、竿をこうやって持ち上げるんだ」
「もちあげたー!」
「よし! 竿を下げて、リールを巻け! そしてまた竿を持ち上げろ! その動きを何度も繰り返すんだ」
「わかったー!」
釣りをしらないセクメトに、ロッドをしゃくれなんていっても通じない。
自分の竿を使い実演しながら教える咲哉であった。
咲哉の作った釣道具は破壊不能に、ルアーには食い付いた魚が絶対に逃げられない魅了の効果まで付与されている。
だから、釣り糸が切れたり魚がルアーから逃れる心配はない。
実際は竿をうまく使う必要などもなく、リールを巻き続けさえすれば確実に魚を釣り上げることができるのだ。
しかし、釣りをしている気分というのも大切である。
そのため咲哉はセクメトに竿の使い方を教えていたのだった。
「お兄ちゃん、つれたー!」
咲哉は急いで玉網に魚を入れる。この玉網は魚の大きさに合わせて自動的にサイズが変化する仕様だったりする。
ちなみに、どんなに釣り糸が切れないといってもSTRが低ければ魚を引き寄せることはできない。
まあ、ここにはいないセトを含め、四人とも化け物クラスのSTRなのだから、よほど巨大な魚でない限りは問題ないだろう。
「おお! クロダイか! 60センチはある、大物だ!!」
「わーい! おおものー!」
咲哉も負けていられないと、竿の先を小刻みに動かしたり、リールを速く巻いたり、ゆっくり巻いたりと、ルアーが生きた餌に見えるようにアクションを加える。
しかし、実際はこのようなアクション自体必要なかったりする。
咲哉の竿はリールのボタンを押せば、ルアーが近くの大物を目指して自動的に近寄っていくのだから。
しかもその魚が一番食べたい餌に見える幻影をまとってだ。
咲哉が竿を使ってルアーにアクションを加えているのは、当たり前の如く釣りの気分を満喫するためである。
一方、ヘカーテに動きはない。
大量の魚型シャドウモンスターを湖に放っていたが、何をしているかは未だに謎である。
「よし! ヒットだ!!」
咲哉の竿にも魚がかかる。
かなり大きな魚に見えるが、特に危なげなく引き寄せ、一人で玉網へと入れる。
「でかい! 超大物だ!!」
釣れた魚は2メートル近い巨大な鯉だった。
本来ならこんな大物を釣り上げるのは、かなり苦労をするはずなのだが、STR7000代の咲哉には赤子の手を捻るようなものだった。
ちなみにSTRが7000を超える人間はアスナルド広しといえど咲哉しか存在しない。
自分のステータスやスキルを見て¨人間やめました¨と思っている咲哉の考えはあながち間違っていなかったりする。
咲哉が大物を釣り上げたとき、ヘカーテにも動きがあった。
ヘカーテの前で小さな魚型シャドウモンスターが湖面から跳び跳ねたのだ。
「きましたわ!」
すかさずリールのボタンを押し、ルアーの効果を発動させるヘカーテ。
間もなく竿が大きくしなりをあげる。
「ヒットですわ!」
かかった魚をどんどん引き寄せていくヘカーテ。
竿のしなり具合から相当大きな魚だと予想できる。
ヘカーテはシャドウモンスターをどのように使って、大物を引き当てたのだろうか。
その方法はまもなく明らかになるだろう。
次回は予想外のトラブルに見舞われます!
何が起こるかはお楽しみ~




