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転生クエスト - ヤンキーが異世界に転生したら -  作者: 早手祐也
【第一章】 モンスターカーニバル
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24-ヴァンパイア化

 大物が釣れそうなポイントを探して、船の操縦をしている咲哉は非常に窮屈な思いをしていた。


 操縦席の座席は二つしかない。

 これが問題だったのだ。


 さっそうと咲哉の隣に座るヘカーテ。


「お姉ちゃん! ずるーい! セクメトもお兄ちゃんのとなりにすわりたいー!」


 まあ、こうなるのは当然のことだろう。


 そこでヘカーテが取った行動は――


「じゃあ、セクメトちゃんはダーリンの膝の上に座ったらどうかしら?」


 そういってセクメトを抱き上げ咲哉の膝に乗せたのだった。


「おい……マジで狭いんだが……」


 二人とも咲哉の言葉など気にすることなく、あっさりとスルーする。


「はあ……まあ、仕方がないか。あっ、そういえば、ヘカーテに聞きたいことがあったのだがいいか?」

「何かしら? ダーリン」


 そういって咲哉にもたれかかるヘカーテ。


「操縦の邪魔だから、もたれかかるなよ……」

「うふふ。そんなに照れなくてもいいのよ。二人きりだと思って……もっと大胆になっても、ね」

「セクメトもいるー!」


 これ以上に収拾不能の事態になっても面倒だと思い、仕方なく話を進める咲哉。


「ああ、えっと……お前の城にモンスターがいただろ?」

「シャドウモンスターのことですわね」

「シャドウモンスターってことは、あれはスキルで生み出したモンスターってことだな?」

「うふふ。さすがはダーリン。その通りよ」


 そういって咲哉に顔を近付けるヘカーテ。


「だから、操縦の邪魔だといっているだろうに!」

「もう、照れ屋さんなのねえ」


 いちゃいちゃしている二人は気にしないことにして、シャドウモンスターの説明をしよう。


 シャドウモンスターとは、影をモンスターの形に実体化するスキルのことだ。


 想像力により自由自在の姿形(すがたかたち)、自立試行型に自ら操れるものと、高い自由度でモンスターを作り出すことができる。


 モンスターの強さや同時出現数はINTの大きさに左右されるので、INTが高いほど強力な個体を複数生み出せる大変使い勝手のいいスキルである。

 ただし、スキル使用者よりも強いモンスターは作り出せないという難点もある。


「話を戻すぞ。そのシャドウモンスターだが、お前の妹であるセクメトを襲った理由はなんなんだ?」

「シャドウモンスターが襲った理由はねえ。それは、セクメトちゃんの希望なのよ。うふふ」

「セクメトの希望だと?」

「お姉ちゃんにお願いしたー」


 ヘカーテの話によると、理由はごくごく単純でセクメトを喜ばすためとのことだった。


 セクメトは幼女の姿に騙されがちであるが、かなり好戦的である。

 咲哉の作ったお化け屋敷でいきなり鬼を蹴り飛ばしたのがいい例であろう。


 戦うのが大好きなセクメトはモンスタープリズンで鬱憤(うっぷん)を溜めていた。

 モンスタープリズンに閉じ込められているモンスターは少数であり、戦う機会がほとんどなかったからだ。


 そんな状況の中でセクメトはヘカーテの城を発見し、興味津々で人化して城内に突入する。

 そして、モンスターをバッタバッタと倒し、ヘカーテと会ったというわけだ。


 ヘカーテはセクメトの血を定期的にもらうことを条件とし、城をアトラクション施設のように使わせていたとのことだった。


「なるほど。そういう理由だったわけか。ん? 待てよ!? セクメトから血をもらっていたってことは、セクメトに会う前はどうしていたんだ?」

「セクメトちゃんに会う前は野性動物の血を吸っていたわ。けど、あんまり美味しくないのよねえ」

「ヴァンパイアに血を座れるとヴァンパイア化するって話を聞いたことがあるのだが……?」

「うふふ。もし、そうだとしたら、既にセクメトちゃんもヴァンパイアになっているわよ」

「そういえばそうだな……」


 咲哉はヘカーテが血を吸った野性動物全てがヴァンパイア化していたら……と不安を感じていたのだ。

 そうなるとおちおち夜の森を散歩することもできなくなる。

 まあ、咲哉が夜の森を散歩している姿など想像しにくいが。


 以前にステータスを確認している咲哉はセクメトがヴァンパイア化していないこと知っている。

 セクメトがヴァンパイア化していない時点で咲哉の不安もあっさり解消されたのだった。


「ヴァンパイア化させるには、スキルを発動しないと駄目なのよ」


 不安が解消したと思ったのも束の間、スキルでヴァンパイア化させるということを聞いて一瞬で咲哉の顔が青ざめる。


 咲哉はモンスターイートで取り込んだモンスターのスキルを全て使うことができる。

 ヘカーテが使うスキルということは、当たり前の如く咲哉も使えるということだ。


 人間である自分がヴァンパイアを作り出せるという事実を知り、もはや、『人間やめました』どころじゃ済まない話になっていると……咲哉は青ざめていたのだった。


「ダーリン、顔色が悪いようですけど、どうかなさいました?」

「あっ、ああ、大丈夫だ。えっと、そのスキルの名前はなんていうんだ?」

「ヴァンパイアインフェクションよ」


 そのスキルだけは絶対に使わないと心に誓った咲哉であった。


「けど、このスキルはしばらく使っていませんわ。いくら不老不死になるといっても、夜しか出歩けないのは寂しいですから……」

「そうか……」


 咲哉がヴァンパイア化させることをよく思っていないと感じたヘカーテは、しばらくヴァンパイアインフェクションを使っていないと話したのだが、ショックを受けている理由は別なのでまるで意味がない。


 ヘカーテの話など上の空で、相変わらずショックから立ち直れない咲哉。


 そんな情態の咲哉を見兼ねてヘカーテの取った行動は――


「私はダーリンのお陰で、こうして日の光を浴びても平気になりましたわ。大好きよ。ダーリン」


 といって、咲哉の顔を引き寄せ、唇を重ねたのだった。


「わっ! お、お前! っうか、船の操縦中だ!!」


 さっきまでの青ざめた顔が嘘のように赤く染まり、慌てふためく咲哉。


 こんな状況の中でセクメトは、船から見える景色に夢中だった。

 咲哉にとってセクメトが便乗してこなかったのは、せめてもの救いであろう。


 同じ相手に二度も唇を許してしまった咲哉は、アスナルドに転生してからのファーストキスもヘカーテに奪われている。

 しかし、本当の意味でのファーストキスは地球にいたころに済ませていた。


 まるでモテた試しのない咲哉であるから、以外と思うかもしれないが、その相手は幼馴染みだった。

 といっても、小さいころの話であり、子供のいたずら程度のキスである。

 子供ながらに結婚の約束をしたこともあった。

 しかし、全てが咲哉にとって欠けがえのない思い出になっている。

 その幼馴染みはもう死んでいないのだから……。


「うふふ。相変わらず照れちゃって可愛いですわあ」

「とっ、とにかく操縦の邪魔だ! 操縦中はやめろ!!」

「操縦中はやめろ、ですか? それでしたら、操縦が終わったあとでしたら、いいってことですわね」

「いっ、いや……」


 言葉の詰まる咲哉であったが、幼女のセクメトはともかく、大人の色気漂うヘカーテには、さすがにクラッときてしまう。

 彼女がモンスターでなければとっくに陥落していたであろう。


 咲哉との恋はヘカーテにとっては茨の道だが、咲哉にとっては相手がモンスターという越えられない強固な壁に等しい。


 ヘカーテの恋が実る可能性はあるのだろうか。

 全ては作者(そうぞうしゅ)の気分次第である。

「全ては作者の気分次第」なんて、身も蓋もないこと言ってスンマセン。

転生クエストはファンタジーという名のコメディなので許してね(笑)


次回はやっとこさ釣り勝負に突入です。

思いがけない咲哉の提案にセトたちは乗るのか!?

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