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転生クエスト - ヤンキーが異世界に転生したら -  作者: 早手祐也
【第一章】 モンスターカーニバル
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16-お化け屋敷

「次は最後のアトラクション! お化け屋敷だ!」


 咲哉はニヤッと笑いながら、不気味な建物に向かって指を差す。


「お化け屋敷とはなんじゃ? 気味の悪い建物じゃのう。また、ひどい目にあったりはしないじゃろうな!?」


 ジェットコースターで散々な目に遭ったセトは、相変わらずご機嫌斜めのままである。

 しかも疑心暗鬼の状態だ。


「俺個人の意見をいうならば、お化け屋敷は大好きだ。まあ、詳しくは入ってからのお楽しみだな」

「うむ。お楽しみということは、楽しいものなんじゃろうな」

「お化け屋敷! 楽しみー!」


 微妙に騙しているようで、多少の罪悪感を覚える咲哉であったが、気にしたら負けだと思って割り切ることにする。


 ドラゴン・ハイ・ランドと名付けられた遊園地のネームオーダー効果は、『龍族興奮度増加(極大)』である。

 この効果は遊園地内のあらゆるアトラクションで力を発揮しているということを忘れてはいけない。

 そして、お化け屋敷でいうところの興奮度は恐怖に置き換えられる。

 ここでも恐ろしい効果を発揮するのがネームオーダーだ。


 咲哉たちがお化け屋敷の入口に近付くと扉が勝手に開き、暗闇から手招きしている白い影が見えた。


「なな、なんなんじゃあれは!?」

「お兄ちゃん……。なんか怖いよ……」

「あー、あれは演出のひとつだ」


 既にビビりまくりのセトとセクメトである。こんなことではこの先の恐怖に耐えきれないかもしれない。


 お化け屋敷に入ると、木でできたぼろぼろのテーブルが置いてあり、その上に不気味なドクロが4個並んでいた。

 テーブルの奥には材質不明な観音開きの扉があり、異様な威圧感を放っている。


「そのドクロを頭に被るんだ。最初にいっておくが、これはドクロ型のバーチャルメットだ」


 ジェットコースターの反省を踏まえて予めお化け屋敷は仮想現実であることを説明する咲哉。

 これ以上セトの不機嫌さが増すと、すこぶる迷惑だからである。


「これがバーチャルメットじゃと? 悪趣味な形じゃのう」

「ドクロをかぶるの? こわいー」

「被っても死ぬことはないから、さっさと被れ。お化け屋敷は仮想空間にあるんだから、そのドクロを被らないと楽しめないぞ」

「うーむ。嫌な予感しかしないが、被らないと楽しめないというのなら……」

「わかった。かぶるー」


 やはり、騙しているような罪悪感を覚える咲哉だったが、セトとセクメトの顔が恐怖にひきつっているのが楽しくてやめられない。何とも悪趣味な性格である。


「よし。被ったら、ドクロの頭を軽く叩くんだ」


 各々ドクロを被った状態で頭を叩く。すると音をたててドクロが崩れ落ち床へと散乱した。


 実はドクロを叩いた時点で仮想空間へとダイブしている。

 ドクロが砕け散ったのは既に仮想現実での話だ。

 予め説明をしていないと仮想空間に入ったことが分からない趣向であることから、咲哉がセトとセクメトを騙す気満々だったことが伺える。

 セトが不機嫌になったら困るので、今回は自重した咲哉であったが。


 ドクロの破片が床に落ちたと同時に、テーブルの向こうで威圧感を放っていた扉が音をたてて勢いよく開いた。

 その扉が恐怖への入口だとは知らずに中へ入っていくセトとセクメト。


「俺に着いてこい。決して、はぐれるなよ」

「うむ……」

「うん……」


 扉の中に入ると真っ暗な空間が広がっていた。

 咲哉とはぐれないように進んでいくセトとセクメト。

 しばらく暗闇を進んでいくと急に視界が開けて、和風様式の墓が建ち並ぶ場所へと移動していた。


「この無数に建ち並ぶ石はなんじゃ?」

「墓だな」

「墓じゃと? ゾンビが出るんじゃないだろうな!?」

「ゾンビ、でるの……?」

「まあ、大丈夫なんじゃないか?」


 軽く流す咲哉であったが、本当にゾンビは出ない。

 代わりに出るのは……。


「なんじゃ? あの蒼白い光は?」

「あれは人魂だな」

「お兄ちゃん、ひとだまって、なぁに?」

「この世に未練を残した魂がさ迷っている。それが人魂だ」

「ゴーストみたいなもんか? 大丈夫なのか?」

「まあ、ゴーストといえばゴーストだな。襲ってくることはないから安心しろ」


 ふわふわ漂う人魂を横目に、不安な顔で墓を通り抜けるセトとセクメト。


 ここからが恐怖の本番である。


「私の子供はどこ……?」


 急に背後から女の声がして振り向く一同。

 そこには白い着物をまとい髪の長い女が子供抱いてたたずんでいた。


「私の子供はどこ……?」

「びっくりさせるでない! 子供ならその手に抱いているではないか!」

「こども、だいてるよー!」


 突っ込みを入れる二人だったが、女はまた同じ言葉を繰り返す。


「私の子供はどこ……?」

「だから、さっきから抱いておると……!」


 そのとき、子供の頭がゴロッと落ちて地面に転がった。


「なな、なんなんじゃー!」

「あたまが、ころころしたー!」


 地面に落ちた頭はみるみるうちに白骨化していく。


「うわー! 頭がー!!」

「ほね、ほねー!」


 半狂乱でその場から逃げ出すセトとセクメト。

 そんな中で咲哉は慌てる様子もなく子供の頭を拾い、女へと差し出す。


「落としたぞ」

「……ありがとう」


 音もなく女はスーっと消えていくのだった。


◆ ◆ ◆


「はぁ、はぁ、なんじゃったんじゃ今のは……。むむっ、サクヤとセクメトはどこじゃ?」


 無我夢中で慌てて逃げ出し、二人とすっかりはぐれてしまったセトがそこにいた。


「むむっ、まずいぞ。すっかり、はぐれてしまったではないか!」


 墓地を抜けたのか辺りの風景は変わっており、見たこともないような建物の前にいたのだった。

 セトが見たことのない建物。

 それは、お寺である。

 この世界に教会はあっても寺はないのだ。


 襲ってくる不安を強引に押し退け、寺の中に足を進めていく。

 寺の一角には古びた井戸があり、その中を女が覗きこんでいるのが見えた。


「なな、何をしておるのじゃ……?」


 恐る恐る声をかけるセトに女はこう答えた。


「落ちたら死ぬの……」


 井戸を覗きこむセト。

 確かにかなりの深さがあり、落ちたら確実に死ぬと想像できた。


「これだけ深ければ、人であるならば、落ちたら死ぬかもしれんな」


 セトがそう答えた瞬間、女は井戸へと落ちていった。


 呆気に取られるセトであったが、急に背後から声がして……!


「落ちて死ぬのはお前だ!」


 井戸の中へと突き落とされてしまった。

 セトの背中を押したのは、井戸に落ちたはずの女であった。


◆ ◆ ◆


「ここはどこじゃ? 我は井戸に落ちたはず……。ううっ、寒い。凍えてしまいそうな寒さじゃ」


 セトの体は濡れており、井戸に落ちたのは確かなことなのだろう。

 しかし、今は見に覚えのない家の軒先で倒れていたのだ。

 異常に体は寒く、危険な状態とも判断できた。


「お風呂が沸いています」


 声のする方に顔を向けると、異様に美しい女が湯気の立ち上る鉄釜に向かって手を差し伸べていた。


「風呂じゃと?」

「服を着たままお入りください」

「うむ。そういうもんか」


 冷えた体を温めるために何の疑問も持たずに鉄釜に入るセト。

 この鉄釜はおそらく五右衛門風呂だろう。


 服を脱がずに五右衛門風呂に入ったセトに女が声をかける。


「湯加減はいかがですか?」

「うむ。ちょいと熱いが、まあ、いい感じじゃ」

「うふふ……。まだまだ熱くなりますよ」


 五右衛門風呂に薪をくべて、どんどん火力を高める女。


「あっ! 熱いではないか!」


 さらに薪をくべて、火力を益々高める女。


「ばかもん! 煮えてしまうわ!!」


 風呂から出ようとするセトの体を無理やり女は押さえつける。

 その力はSTR8000台のセトですら逃れることのできない力強さだった。


「うふふ。何をいっているんですか……? しっかり煮ないと、お前を食べられないだろうが!」


 そういった女の口は耳元まで裂け、美しさの欠片もなくなっていた。


「こやつ! モンスターか!」


 モンスターではなく口裂け女というお化けのたぐいなのだが、この世界では大した違いもないだろう。

 まあ、咲哉の主観では、お化けとモンスターを一緒にされたくなさそうであるが。


「ええい! どけい!!」


 つかまれている腕の隙間からセトのアッパーが炸裂し、口裂け女は天井高く吹き飛ばされる。

 セトは実態のあるモンスターには強気なのだ。


 安心して風呂から出ようとしたセトであったが、その顔はすぐに驚愕する。

 さっきまで透明だった風呂の湯は真っ赤に染まり、中から血だらけの手が何本もセトをつかんでいたからだ。


「ええい! 離せ!」


 暴れるセトであったが、そのまま風呂の中に引きずりこまれてしまうのだった。


◆ ◆ ◆


「お兄ちゃん、どこー? ついでにセトもー」


 その頃、案の定セクメトも咲哉たちとはぐれて途方にくれていた。

 しかし、ついであつかいのセトって、いったい……。


 セクメトが迷い混んだのは不気味な森。

 誰もいない森で一人きり、不安な心が高まってくる。


 そんなとき木の下でうずくまって泣いている女の子を見つける。

 自分と同じく道に迷った仲間かと、妙な共感を覚え安堵したセクメトは女の子に話しかける。


「どうして泣いているの?」

「しくしく……」

「どこか痛いの?」

「しくしく……。なくなっちゃったの……」

「何をなくしたの? こまっているなら、さがすの手伝うよ」

「なくしたのは……。私の顔だー!」


 叫びながら顔を上げた女の子には、目も鼻も口もない……のっぺらぼうだった。


「いやー! 顔ない! こわい! こわいー!」


 その場から脱皮のごとく逃げ出すセクメト。


◆ ◆ ◆


「えーん、こわかったよー。お兄ちゃんどこー?」


 無我夢中で走ったセクメトは森を抜けて、瓦屋根の古い民家が建ち並ぶ場所へと迷い混んだのだった。


 民家は人の気配がなく、ひっそりとしており、相変わらす不気味な雰囲気が漂っている。

 不安の高まりが増していく……。

 そんなときセクメトを呼び止める声がした。


「ねえ、ねえ」


 おそるおそる声がしたほうを見るセクメト。


 そこには民家の壁を背にもたれながら着物を着た女が立っていた。


「お兄ちゃんを探しているのね?」


 その言葉に安心して女へと近付いていくセクメト。

 不用意に近付くと必ずひどい目に遭うということを、そろそろ学習したほうがいいと思われる。


「うん。お兄ちゃんを探しているの」


 妖しい女の言葉に反応してはいけない。


「あなたはお兄ちゃんを探しているのね。もっと、こっちへ来てくれる?」

「うん」


 知らない人に着いていってはいけないということは、小学生でも知っている常識である。

 しかし、セクメトは咲哉の居場所を知っているのかもしれないと喜び勇んで女の傍へと歩いていってしまったのだ。

 そんなセクメトに女は奇妙なことをいう。


「私はね……。お兄ちゃんじゃなくて、腕を探しているの」

「うで……?」

「そう……。腕を探しているの」


 セクメトは女の腕を見るが、着物に隠れていて見えない。


「あっ、腕……見つかったみたい」


 そういうと、女がもたれかかっていた壁から無数の手が飛び出してきたのだ。


「いやー!!」


 セクメトはその場から一目散で逃げ出した。

 咲哉に会えるのはいつになるのか。


◆ ◆ ◆


 何処まで走ったか分からないが、未だに民家をさ迷い続けているセクメト。


「もう、こんなとこいやだー! お兄ちゃーん!!」


 咲哉を呼んでも答える声はない。

 セトは既に名前すら呼ばれるなくなっている。

 セクメトにとってセトの存在は、咲哉の『ついで』でしかないのだから、仕方がないのかもしれないが、何だかとても可哀想である。


 咲哉を探しながら歩いていたセクメトは、ふと視線を感じて上を見る。

 そこには民家の(へい)に頬杖をして、こっちを見ている女がいたのだった。


 さすがのセクメトも嫌な予感しかしない。

 後退りをしながら、いつでも逃げ出せるように準備をする。


 そんなセクメトの様子を見ていた女は何をしたかというと、そのまま地面にゴロッと転がり、落ちたのだ。


 一瞬頭が真っ白になるセクメトだったが、すぐに恐怖で顔がひきつった。


 なんと、女の下半身がなかったのだ。


 のそりと肘だけで態勢を立て直す女は奇声を張り上げる。


「テケテケテケテケ!」


 そして、左右の肘を交互に打ち付け地面を這うように走ってきたのである。


「いやー!」

「テケテケテケテケ! テケテケテケテケ!」


 走り出したセクメトの後ろを奇声を上げながら追ってくる女。

 もはやトラウマになってしまっても、おかしくない光景である。


 この女は都市伝説でも有名なお化け『テケテケ』だ。


 半狂乱で逃げ続けるセクメトは、テケテケに追い付かれてしまうのであろうか。

次はやっと咲哉の登場です☆

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