13-幼女
赤龍が人化した姿は美少女ならぬ美幼女だった。
赤髪ツインテールにふくらみかけた胸、下は何もはえていない。
小学校3、4年生くらいに見えるだろうか。
何歳までが幼女のカテゴリーなのか分からないが、その姿は咲哉からすると幼女以外の何者でもない。
「色々と突っ込みどころはあるが、まず、服を着ろ!」
慌てて世界構築スキルで子供用のワンピースを作った咲哉は、セクメトに投げるようにそれを渡す。
いそいそとワンピースを着るセクメト。
動きまで幼女その者だ。
「まず、何で小さな子供の姿をしているんだ? 人の言葉は話せるな?」
「この姿が一番しっくりくるのー」
「そうなのか……」
納得できるような納得できないような微妙な理由。
本人がしっくりくるといっている格好を無理やり変えさせるのもな……と思い、とりあえず無理矢理にでも納得することにする。
「何で裸だったんだ?」
「人化したらハダカなのは、当たり前だよー」
「セト、そうなのか?」
「我は人化できぬから、知らぬわ!」
「そういえばお前は指輪の力で人化していたんだったな」
すっかりご機嫌斜めとなってしまったセト。
自分よりも若い龍であるセクメトが己の力で人化していることが気に入らなかったのだ。
そんなセト様子に気が付かない振りをして、咲哉は小声で話しかける。
「セト、こいつは雌なのか?」
「何処からどう見ても雌であろう」
「いや、人化した姿ではなくだな」
「だから雌といっておるだろうに! 雄雌の違いくらい分からんのか!?」
セトの不機嫌さは直らない。
『人間である自分に見ただけで龍の雄雌が判別できるかっ! ボケー!』と声を大にして叫びたかったが自重をする咲哉。
「まあ、そうだな、あれだ。人化する度に服を着せるのも何だから、今後は考えないといけないな」
「ん? ハダカのままでもいいよー」
セトの不機嫌さを横目に話を反らした咲哉だったが、セクメトの問題発言に顔が引きつる。
「いやいや、お前がよくても俺がダメなんだよ!」
「目にどくー?」
「お前……分かっていていっているだろ?」
「てへへ」
「てへへ、じゃねえ!!」
こんなことで、この先やっていけるのだろうかと本気で頭を抱える咲哉だった。
「まあ、いい。城を案内するから、さっさと入れ」
「わーい! 変なお城だー!」
「変な見た目の城かもしれないが、変形する!」
咲哉は城をどや顔で和風の形に変形させる。
「すごーい! 変形しても、変な見た目のままだー!」
和風の城は、異世界ではどう転んでも変な城に見られてしまうのであった。
セクメトの微妙な突っ込みに、多少凹みつつも城の中へと案内する咲哉。
大喜びで咲哉の後ろを着いてくるセクメトは、どこからどう見ても幼女その者にしか見えない。
さっきまで大火炎を吐き出してセトと戦っていた龍とは思えない変わりようだ。
龍の威厳はいったいどこに行ってしまったのだろうか。
「ワイズ、こいつが人化したセクメトだ。城の中を案内してやってくれ」
「かしこまりました」
「セトはゲームなり何なり好きにしていていいぞ。俺はちょっとやることがある」
そういうと咲哉は自分の寝室に引きこもる。
寝るわけではない。
片付けたい懸案次項があるのだ。
それはセクメトの服をどうするかであった。
「今のままだと、龍になると破れてしまうんだよな。かといって、伸縮自在の素材にすると外観が……」
必要以上に悩む咲哉だが、諦めてその都度服を着せてやれば、あっという間に問題は解決する。
しかし、幼女といってもふくらみかけている胸が何とも微妙だったので、それは避けたいところだった。
「ん!? 待てよ。この世界にアイテムボックスはあるのか?」
アイテムボックスとは、ゲームによくあるアイテムを収納する箱のことである。
小さい箱なのにも関わらずアイテムが100個とか入る、アレのことだ。
「まっ、なければないで作ればいいか」
アイテムボックスがつながる先は異空間かなと思いつつも、何となく不安のあった咲哉は、地下に広い空間を作ることにする。
1キロメートル先の地下に縦横10キロメートルの巨大な部屋を作ることにした。
地下室は例え地震があったとしても崩れることのないように、壁には破壊不能の効果を付与する。
「あとは、中に入れたものは現状維持されるようにして」
温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいままに保管されて、決して腐ることのないという仕様だ。
全てのアイテムは入れたときそのままの状態で保管される。
「保管スペースはこれでいいとして、何を経由させるかだな。箱だと持ち運びにかさばるし、腕輪か、うーん……。やはり、指輪が一番か」
地下に作った保管スペースと指輪をリンクして、アイテムの収納と取り出しができるように設定する。
指輪をはめた手でアイテムに触り『アイテムボックス』と念じると保管スペースに送られるという仕組みだ。
保管されているアイテムは、アナライズスコープを通してリストとして表示されるようにし、指定することでいつでも取り出しを可能とする。
世界構築スキルのお陰で、かなりゲーム感覚に近いアイテムボックスを作ることに成功したのだった。
「下準備はこれでいいな。あとはセクメトの服を作って、龍化したときは自動でアイテムボックスに入り、人化すると自動着用されるように設定すればOKと」
何とも回りくどいシステムを作って満足気な咲哉だが、実際は自動離脱と自動着用だけならアイテムボックスを作る必要なんてさらさらないのだ。
クローゼットや部屋なりに自動で戻る設定の服を作ればいいだけの話である。
まあ、アイテムボックスは今後も役に立つだろうから、作っておいて損はないのだが。
「せっかくだから、セクメトにどんな服がいいか聞いてみるか」
何だかんだいっても、女の子には優しくしなくてはと思う咲哉だったが、まあ、この決意がいつまで続くか分からない。
セクメトにきつい言葉をいってしまい、幼女虐待ともいわれないことを祈るのみである。
「おーい! セクメトー、いるかー?」
「なぁに、お兄ちゃん?」
ワイズの案内が終わったのか駆け寄ってくるセクメト。
咲哉は急に予期せず呼び方をされて絶句する。
「はあ? お、お兄ちゃんだと? な、なんだ、その呼び方は!?」
「うーん。何となく」
幼女にご主人様と呼ばれるのも微妙だし、サクヤと呼び捨てにされるのも気に入らない……というわけで、お兄ちゃんと呼ばれることに妥協をして受け入れることにする咲哉であった。
「まあ、いいか……。お前の服を新しく作ろうと思うんだが、どんなのがいい? 何か希望はあるか?」
「うーん。えっとねー、お兄ちゃんと同じ服がいいー」
「同じ服って、この特攻服か!?」
「うん! その服と同じのがいいー。けど、セクメトのはねー、白じゃなく赤色で、背中の龍も赤がいいー」
特攻服を着た幼女とか、かなりシュールな絵が想像できるが……希望を聞いておいて今更ダメともいいにくい。
まあ、異世界だし違和感は感じないかと、咲哉はセクメト用の特攻服を作成するのだった。
「ありがとー! 中の黒いのもつくってー」
「中の黒いの? あっ、チェーンメイルのことか」
セクメト語を訳すのも大変だなと思いつつ、インナー代わりにしている黒いチェーンメイルも作成する。
「ブーツも同じのがいいー」
「ブーツも同じのね。はいはい」
セクメトにいわれるまま、特攻服、チェーンメイル、ブーツと作成した咲哉。
まるでどっちが下僕か分からない、などと突っ込んではいけない。
セクメトのために作った装備品は、色や龍のデザインにこそ違いはあるが、全て咲哉と同じ効果のある仕様にしている。
作ってもらった装備品をその場で服を脱いで着替えようとするセクメト。
「ちょっと待て! 着替えは向こうでしろ」
「なんでー?」
「何でって……、目のやり場に困るからだ」
「目にどくー?」
またこのやり取りかと半ば強引に客間で着替えをさせる。
セクメトの扱い方にうまくならないとストレスが溜まるなと思う咲哉であった。
◆ ◆ ◆
「ワイズ、いるか?」
「はい。咲哉様。何かご用でしょうか?」
「セトは何をしている?」
「セト様は……」
ワイズがそういいかけたところで、セトが姿を現した。
「おお、サクヤ。やることは終わったのか? 一人で遊ぶのも飽きたところだ。我と格闘ゲームをしようではないか」
「また格闘ゲームか? さっきも散々やっただろ?」
「セクメトを倒した我は、一皮が剥けているはずじゃ。だから、勝負じゃ!」
「ねえねえー、お兄ちゃん、似合うー?」
すっかり機嫌が直ったセトの前に、特攻服を着てご機嫌な様子のセクメトが駆け寄ってくる。
その姿を見てセトはあからさまに嫌な顔をした。
「なんじゃ、その格好は?」
「うんとねー、お兄ちゃんからもらったの」
「サクヤよ。これはどういうことじゃ?」
「どういうことって、作ってやったんだよ」
「何故、我にはない? 下僕であるセクメトが咲哉と同じような格好をしておるのに! 何故、友である我にはないのじゃ!!」
「お前も欲しいのかよ……」
咲哉と色違いではあるが、ほぼ同じ格好をしているセクメト。
一人仲間外れにされて、拗ねまくりなセトである。
このあとセトのわがままに付き合い、必要以上に色々と作らされる咲哉であるが、城まで増築することになるとは想像だにしていなかった。
咲哉が何を作るのか予想できる人は少ないと思われる(微笑)
という訳で次回もお楽しみに~♪




