見つからない答え
保健室での出来事以来、私は何となく先生が気になってしまい無意識のうちに目で追ってしまっていた。苦手なのに気になる、そんな不思議な感覚が私を悩ませていた。
「…。はぁ。」
いつものように授業をサボって屋上で横になり、青空を見る。空は綺麗な青なのに、私の頭は厚い雨雲がかかったように重たい。幾度となく理由を考えてみたけれど、答えはなかなか見つからない。考えて過ぎて、酷い頭痛に悩まされるほどだ。こんなの初めてだ。考えも答えは見つからなさそうなので、とりあえず寝てみようと目を閉じる。頬を爽やかな風がくすぐる。
「…。またサボりか?」
微睡みの中で、悩みの種の人物の声がした。夢にまで現れるとは…。私は顔をしかめる。物凄く頭が痛い。あんたのせいだよ、そう言いたかった。八つ当たりもいいところだと思う。でも、自分でもよく分からないけれど、鳴海先生のせい、ということだけは確かだ。
「───。」
…え?
さっきよりも近くで聞こえた声に驚き、ガバッと体を起こす。
「夢…だよね?」
そう自分に言い聞かせるように私は辺りを見渡す。屋上には自分以外に誰もいない。夢と現実が分からないほど、自分は疲れているのだろうか。ますます頭痛が酷くなる。
「はぁ…。身体が熱いし、何だか寒気もしてきた。風邪かも…。」
私はふらつく重たい身体を引きずりながら、屋上をあとにした。とりあえず風邪薬でも飲もう。そう思い、フラフラと保健室に向かう。
「……っ。」
保健室に向かおうと思ったは良いが、自分が思っていた以上に身体はいうことをきかない状態だった。これは……まずい。非常にまずい。まだ授業中なので、廊下には人影がない。イコール、助けを求める相手がいないということだ。視界がどんどん歪んでいく。だが、自分ではどうすることもできず、私はついに意識を手放してしまった。
────
「……。、ですか?」
「……こいつを、……では。」
誰かの会話とドアが閉まる音で、私はそっと目を開けた。
「ここは…。保健室?」
白い天井に消毒や薬品の香り。ぼんやりとする頭を振って、私はそっと起き上がった。ギシッとベッドが軋む。
「あれ?目が覚めたのかな?」
白いカーテンが開いて、心配そうに保健室の先生が顔を覗かせる。
「私…。どうやって…。」
どうやって保健室に来たのか全く覚えていない。保健室に向かう途中までの記憶しかない。
「廊下で倒れていたところを、なる…。」
「…?」
「あ、えっと…。倒れていたところを運んできたのよ。」
保健室の先生は、肝心の『誰が』の部分を濁した。言えない事情でもあるのだろうか。その人にお礼を言いたいから教えて下さいとお願いしたけれど、先生は苦笑いをしながら首を振るばかりだ。
「その人にね、言うなって言われているの。」
「そう…ですか…。」
顔を伏せる私を見て、先生は困ったような顔をした。
「まだ顔色が悪いから、もう少し休んだら?」
保健室の先生は私の額に手を当てる。その手がひんやりとしていて心地よく、そっと私は目を閉じる。
「───っ!!」
意識を手放す瞬間に聞こえた声。
抱きとめられた時に鼻をくすぐった煙草の香り。
自分を運んできたのは…。運んできたのは──。
「なるみ…せんせ…い。」
私は無意識のうちにそう呟いていた。
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