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なかま2
「幸介? なにやってるの?」
「お? や、べつに?」
「うん? 遊んでるだけ?」
「そうそう!」
この中で唯一、片方に手透きがあるのは、幸介だった。
ともすれば、懐中電灯を託された彼は、足元のタイルへと、光線を刷きかける作業に熱中していた。
「これ! なんて書いたか分かる?」
「むん? よく分かんなかった。 もっかいやって?」
これに乗じた珠衣が、足元に描かれる光の軌跡を、熱心に目で追っていた。
その模様を眺めた後。 手の甲を使って眼鏡を正した望月は、史のもとへ、真摯な眼差しを定めた。
「それに、手ぶらで帰るわけにもいかないだろ?」
他でもなく、自分の発案によるところの、“お化け調査”である。
なんの収穫もないばかりか、早々にお開きになったとあっては、まるで無駄足だ。
勇んで付き合ってくれた仲間たちに、申し訳が立たない。
「か・え・る? 帰るっ!?」
「おっ! 正解! カエルなっ?」
「え……っ? 帰るの?」
「え? カエルな?」
「えー……っ? 帰るんだ?」
「え? なんだよ“んだ”って。 いつから田舎の人になったんだよ?」
「えー? わりと田舎だよ? 高羽」
「まぁなー」
お隣では、なにやら解散ムード全開。 お開きに向けて、早々(はやばや)と話がまとまりつつある様子だった。
しかし、このまま帰すわけにはいかない。
帰すのは忍びがない。




