どうするの?
その日の、夕刻のことである。
「穂葉はどうする? いっしょに行く?」
「はい?」
天野家では、台所責任者を預かる穂葉の手によって、本日も夕食の準備が進んでいた。
そんな中、できあがった料理の配膳を手伝おうと、ソファーから腰を上げたところ。
ふと思い立った史は、キッチンの方へ声をかけた。
本日の献立は、手がたく和食だろうか。
長芋の煮物。 スズキの塩焼き。
「え? 行くって、ドコにです? コンビニ?」
キッチンカウンターの向こう。
こちらに背を向ける格好で、鼻歌まじりに調理を進めていた穂葉が、ごきげんな表情を振り向けた。
なんだろうか?
その様子から、会話の食い違いというか、違和感めいたものが感じられた。
「や、コンビニ? なんか、買うものでもあるの?」
「むん……? や、特にないですよ? あ、強いて言うなら、ソフトクリームが食べたいです。 もうそろそろ、出てますよね?」
「あぁ、レジの横らへんに?」
「うん! レジの横らへんに」
この時期になると、どこのコンビニ店にも、ソフトクリームの無人販売機が設置される。
それを思い出しているのだろう。
穂葉は甘々な表情で、小首をかしげてみせた。
「史さまこそ、なに買うんです? コンビニで」
「や? ていうか、別にコンビニに用はないし」
「はぁ……。 ん?」
そこで、こちらもまた、この会話に何かしらの齟齬を見出だしたのか。
フキンで手を拭いつつ、本格的に調理を中断した穂葉が、ダイニングの方へ体を向けた。
カウンター越しに、不思議そうな表情をしてみせる。
「え? じゃあ、ドコに行くつもりなんです?」
「え? だからさ……。 えっ? つか、本気で忘れてる?」
「むん? なにを?」
会話の核心というか。
史が問いかけている事柄は、言うまでもない。
「ほら。 昼休みに計画立てたろ? 望月たちと」
「うん……?」
“お化けの正体を突き止める”
きっと、本人が言うとおり、一角の家系によるのだろう。
並々ならぬ探求心に駆られたクラスメートの発案によって、通学時の何気ない話題は、本格的なフィールドワークへ移行する運びとなった。
今晩、きっかりと決行される。
それに先立って、集合時間や持ち物など、詳細を決定すべく、話し合いの場が設けられた。
ちょうど、昼休みのことだ。
『…………………』
『あれ? 穂葉ー?』
『………………』
『あれー……?』
そういえば、ずっと放心していたっけ……。
話し合いが終わるまでの間、ずっと。




