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花影4
「………………」
とかく、現世には真実がある。
“真実”とは、良くも悪くも、唯一のものである。
しかし、誤魔化しが効かない故に、むしろ陳腐な内容である場合が多い。
“よくある話”
“ありふれた悲劇”
真実を欲する人間は、期待に胸を膨らませて、それを追求する。
しかし、いざ蓋をあけてみれば、まさに拍子抜けだ。
自分が躍起になって求めたものは、こんなにも些細な代物だったのかと、落胆し、後悔する。
ゆえに、真実を知る者には、それを秘匿する責任があるように思えて、仕方がないのだ。
「………………」
「んー……。 やっぱり、そう簡単に答えは出ないか……」
「悪い。 サクッと答えてやれれば良いんだけど……」
「や、史が気に病むことはないよ。 ほら、棚から出てきたぼた餅なんて、もしかするとカビが生えてるかも知れないし」
もちろん、人間を邪慳にするつもりなんて毛頭ない。
ただ、自分が保有する情報は、人間にとって有意義なものだとは、どうしても思えなかった。
同時に、自分が安易に答えを示すことは、人間の特権を奪い去る行為に他ならないとも思うのだ。




