かいだん3
当の大声に驚いたというよりは、どちらかと言うと、この場の雰囲気が効いた結果か。
怖い話の真っ最中という、現在のシチュエーションがいけなかった。
「もも……っ?」
「や。 おもしろそうな話をしているからさ? 盛り上がる演出を──」
「もももっ!!?」
「ももも? なんだそれ? 舌が回らないなんて、らしくないなぁ?」
“あっはっはっ!”と高笑いをつけ加えて、その人物は、嫌みの欠片もなく、幼なじみを煽ってみせる。
「あぁぁぁぁぁぁぁ……っ!」
「ももも……っ!」
すっかり怯えきる穂葉。
その肩を抱きながら、自分もまた、なかば縮み上がっている最中の珠衣。
そんな彼女たちの心中へ、悪意もなく、油をドバドバと注ぎ入れる人物。
こんな事ができるのは、恐らく、我が校に一人だけ。
それに、本当に仲の良い友人でなければ、できない行いだ。
「よ、望月! せっかくだから、一緒に行こか?」
「よ。 うん、そうするつもり」
気さくに持ちかける史に対し、当の問題児は、楽しそうに応じた。
「びっくりさせないでよぉーっ!?」
「なに? あの程度でびっくりしちゃう? あのタマちゃんが?」
「なにをっ!?」
日々、このクラスメートには、頭を悩まされる珠衣である。
生徒会の一員という肩書きからすると、何を置いても、職務を全うしたい。
しかし、“幼なじみ”という肩書きを、他でもなく、この仇敵と共有しているので、始末が悪い。
片方を立てれば、角が立つ。 まさに、板挟みだ。
「ほら!? 穂葉にもちゃんと謝って!」
「ん。 ごめんな? ほのっち。 驚かせるつもりが無かったわけじゃないけど……。 まさかなぁ? ここまでとは」
「うぅ……」
珠衣・望月・幸介。
この三名は、幼なじみである。
なんでも、幼稚園の頃から付き合いを続ける仲らしく、互いの心根を、よく理解している。
ともすれば、限界に達しつつある珠衣の心中を、理解しているのか・いないのか。
一行に加わった望月は、あっけらかんとした口ぶりで、話の続きを促した。
「続き、聞かせてもらえる? その女子生徒が、廊下に出たら何が起こったの?」
「……話すのはいいけど、後で生徒会室に来てもらうからね? 絶対に!」
やはり、珠衣としては、自首を勧めたいのだろう。
この親友が、自らの罪を認め、おとなしく身柄を差し出せば善し。
それが、双方にとって、もっとも平和的な解決法である筈だ。
「え? なんで?」
「なん……っ!!?」
けれど、決して“お約束”を放逐することのない望月である。
俄に不思議そうな顔をして、人情味あふれる勧告を往なしてみせた。




