できること
「う……っ?」
対する白蛇は、なにも動じていなかった。
長大な尻尾が、またしても風雨を薙ぐ。
列車のような質量をしたそれが、落下の途中にあった史の身体を、難なく飲み込んだ。
目の覚める衝撃が、雨模様の町並みにひた走った。
「こンのぉ……ッ!」
住宅街の中ほどに設けられた手狭な公園。
図らずも、史の身体を受け止めた滑り台が、惨たる有り様に変貌した。
「ナメてんのか!? この野郎ッ!!!」
苛立ちまぎれに、その残骸を蹴り飛ばす。
途端に、そんな行いを恥じて、頭を冷やす。
“神足通”をつかって、白蛇のもとへとって返す。
「……白橋!」
ふたたび眼下に五体をさらし、燃え立つ玉石を、まっすぐに見据えてやる。
「もう、いい加減にしてくれよ……。 頼むから」
真紅色の双眸は、なにも応じない。
先頃から変わらず、顕著な敵意のみが、メラメラと在るのみだった。
「頼むから……」
前髪から垂れてくる雨粒が、ひどく煩わしかった。
けれども、真摯な眼差しを脅かすには至らない。
「もういいだろ? な?」
彼の──、白橋の思いはよく解る。
何に対して怒っているのか。
なにが赦せないのか。
痛いほどよく判る。
「きっと、なんとかするから。 俺が。 お前の思うように……。 きっと、なんとかしてみせるから」
完全に安請け合いだとは思う。
彼のために何ができるのか。 何をしてやれるのか。




