野生動物は危険です。2
「……いい加減にしろよ? この野郎」
まだ……。
まだ、腹をたてる道理はない。
こんなもの、じゃれ合いの延長線上だ。
「こんだけ暴れたら、十分だろ? 気は済んだろ? なぁ?」
「………………」
「もう止めとこう? な? 終わり! もう終わり!」
「………………」
「……これ以上はダメだ。 これ以上やったら──」
彼の興味が、自分に向いている間はいい。
けれど、万が一にも、その牙が人間に向けられるような事にでもなったら……。
この昔なじみが、もしも人間を襲うような真似をしたら──
「討らなきゃならないんだぞ!? お前を!! 分かってんのかッ!? えぇッ!!?」
もちろん、そんな事したくない。
したい筈が無いし、そんな手段など、考えたくもない。
「く……っ!」
しかし、現在の白蛇には、陳腐な友情など、露聊かも理解できないようだった。
背後。 長大な物体が、グンと躍動する気配がした。
それを察知するや否や、史はそばに植えられた街路樹を、たちまちの内に駆け上がった。
先細りの枝を蹴って、虚空へ離脱する。
「やめろ! コラ!?」
空振りを喰わされた尻尾が、著しく雨滴をはらい飛ばした。
やにわに“ビュンビュン”と勢いをつけたかと思うと、中空へ一直線。 しつこく追撃する。
「“ひとつ”」
その模様を眼下に認めるや、簡潔に詠唱をむすぶ。
すこし乱暴な手段だけど、仕方がない。
「“砲門”!」
落下の最中。
真っ逆さまに、ふたたび地上へかえる道すがら。 照準を定めた史は、光弾を発砲した。
牽制か。 あるいは、威嚇射撃のつもりかも知れない。
掌から放たれた光輝の弾丸。
それは狙い目の通り、大きな白蛇を避けて、近くの路面へと斜めに射入。 アスファルトを直線に咬み砕いた。
その末に、中学校の裏手──、おそらくは、掃除用具などを収める倉庫か。 そこに着弾し、これを炸裂せしめた。




