あさごはん2
「いやいや。そういう問題じゃないだろ? なんでそう──」
「はぁ。 じゃあ、どういう問題なんです?」
パタパタと首を振った史は、とりあえずの手札として、もっともらしい理屈を並べることにした。
「自分の神社に居たほうが、何かと便利でしょ? ほら、あれ。 神域に身を置いてるとな? 神力の回復だって早いよ? めっちゃ早い!」
「どのくらい早いんです?」
「え……? F1くらい?」
「え? F1って車ですよね? 言うほど速いです?」
「え?」
陸上における“はやさ”の代名詞に対し、あまりピンと来ない様子で、眉を顰めてみせる穂葉。
「や、ごめん。 例えが悪かった?」
その模様を得た史は、指先で蟀谷を押さえつつ、次なる一手を早急に打つ。
「でもほら、他にもな? 祭りで……、穂葉の好きな祭りで、地域活性なんてことも出来るんだよ? 神社があれば」
「お祭りですか? ほぉ……? それはなかなか……」
昔から、お祭りが大好きな穂葉である。
ベーコンを摘まむ細指が、ピタリと止まった。
次いで小首をかしげ、思案に耽る。
この機会に、史が大仰な身振りで、一気に畳みかけた。
「祭りだぞ!? 祭り! 花火とか! ドォーンって!!」
「むぉ? 花火ー……」
「そう! 花火花火! 花火といえば夏祭りだろ? 夏祭りといえば!? ん!」
「神社……、です?」
「そう! 神社!! めっちゃ神社!」
「ふほぉ……」
勢いのまま、なかばテーブルに身を乗り出す史の真向かいで、穂葉は目をポチポチ。
ゆっくりと瞬いた後、手元のカップを器用に弄んでみせた。
「神社。 夏祭り。 花火…………」
そうして、持ち前の生真面目な表情で、思案の淵へと沈んでしまう。
もちろん、彼女に否定の意志はない。
他でもなく、家族である史のことだ。
その志を蔑ろにする理由も、否定する理由もありはしない。




