あさごはん
「俺の神社をな? 作ろうと思うんだけど」
「はぁ。 神社……、ですか?」
天野家の一階。 ダイニングに設けられた食卓にて、朝食の最中である。
そんな折り、史が気軽に持ちかけた話題に対し、穂葉は目を丸くした。
とくに、これといって脈絡もなく、他愛のない会話の延長線上だ。
「うん。 神社」
「神社……。 神社です? 史さまの?」
「うん。 俺の神社」
「神社……。 んー、そっかー」
手元のトーストにバターを塗りつけながら、提案の内容をかみ砕く。
そうして、ハタと手を止めた穂葉は、何かしら思い当たる節などあった様子で、ひとつ頷いてみせた。
「昨日からなにか考え込んでると思えば、そのことです? 神社の」
「うん。 神社のこと」
「ほー?」
通常、記紀神話に名を連ねる神々の多くは、その土地・土地に坐す産土神として、各方面で祀られている場合が一般的である。
当然、彼らは自身の神社・御宮を有しており、日夜人々の信仰を集めている。
けれども、如何せん史は古すぎた。
もっとも古めかしい神の一柱であるが故に、主立った神話に登場することは無い。
そんな彼には、現世に降りてからこの方、自身の御宮が存在しない。
じつに道理である。
「別に神社なんて無くても──」と、サラダにマヨネーズを“むにむに”とやりながら、穂葉が軽やかに笑んでみせる。
「この家が史さまの神社じゃないです? 私は大満足ですよ? 今のままで」
「まあなー……。 でもさ?」
対する史は、ゆるゆると漂わせた目線を、手元のマグカップへ落としてみせた。
「そりゃそうだけどさ? やっぱり鳥居とか……」
「鳥居? 鳥居がどうかしたんです?」
「や。 なんつーか、やっぱりさ? 鳥居とか欲しい」
「はぁ……」
そんな、若干子供じみた主張を、ポツリと零す家族。
あるいは、自身が長いこと支える神様へと、巫女という見地から述べる。
「じゃあ、家の前に建てればいいじゃないです? 鳥居を」
「え?」
悪意のない物言いで。 ことも無げに。




