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あの頃の19
「……あなた、寂しいんですよね? ひとりぼっちで」
このザリガメさんは、きっと遊びたかっただけ。
そりゃそうですよ。
賑やかな公園が、住処の近くにあるんだもの。
遊びの輪に加わりたいって思うのは、当たり前ですよね。
池に近づく子どもを見ると、お友達になりたいなと思う。
池の近くにボールが飛んでくると、ついつい嬉しくなっちゃう。
でも、如何せん異形なわけですよ。 力の加減だって知りません。
自分の姿をみた人は、みんなビックリ。
恐れおののいて、逃げて行っちゃいます。
よく解るんですよ……。 この子の気持ち。
“私のほうは、まだ人の形をしているだけマシ”だとか。 そんな風に、自分のことを棚に上げるつもりはありません。
この子と私は、まったく同じ立場なんですよね。
「よっ!」
指先から通じる霊びな糸をたぐり寄せ、“庖丁”を上手くキャッチする。
刃渡りはおよそ40cmと、小刀としての目新しさは特にないが、切先が大きく延べており、凄みがある。
それをくるりと下に向けて、足元に転がるコンクリの残骸に打ち当てる。
「ふんッ!!!」
そうして、酸鼻の絵巻物があしらわれた柄頭に、ガツンと一撃。
刀身の緩みを、乱暴に正してやる。
この荒療治を経て、鬼の庖丁は、当面の生命線を取り戻した。
しばらくは、使用に耐えうる筈だ。




