おまけ2
尋問中
「んで、なんで修の緊急離脱の札をミルさんに使ったんだ?」
春明からの心底不思議そうな問い。
竜一は諦めのため息と共に応えた。
「咄嗟だったんだよ、ミルさんが蜂の群れに囲まれて、つい手が伸びてた」
「……身体が十全ならお前一人でも対処できた妖魔共相手に?うちで最強のミルさんを?」
竜一父の解せぬと言った顔。
「絵面が悪すぎたんだよ!……ぁふ…くっそ、これ、なんか他に……も、混ざってんだろ……」
ふらりと頭を揺らし、毒づく竜一。
春明と竜一父は深いため息をつき、質問を続けた。
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竜一は昼食のお粥をスプーンでかき混ぜていた。
残りは四半分、胃袋の容量的には問題ないが、流石に飽きた。
「1週間……そろそろ普通のご飯食べたい」
体調的には問題ないはずだ。痛いところもない、急激な運動をしなければ日常生活も十分に可能だ。
ぴし
わずかに家鳴りに似た音。
部屋の周りには対竜一用の籠が囲っていた。
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夕食、刻んだ青菜の混ぜられたお粥を持ってきた怜子が見たものは、机の上で突っ伏している兄の姿だった。
一瞬慌てたものの、本を読みながら寝落ちしたらしい。
「はぁ……お兄ちゃん、ご飯だよ?」
「……う?あ、もうそんな時間か、ありがと……はぁ、またお粥か」
顔を上げた竜一はすぐに頭を目覚めさせると、お盆に乗せられた器を見て不満顔。
それを見て、怜子は反応を予想しながら紙パックを差し出した。
療養用のドリンクだ。
「うぇ……」
「好き嫌いしないの」
「好き嫌いってレベルじゃないだろ、これ。はぁ、飲むけど」
その後、お盆を置いて部屋を出るまで、怜子は気づかなかった。
竜一が読んでた本をさりげなく隠していたことに。
『結界術~初心者から中級者まで~』
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翌日、用意された白がゆを全て口に流し込み、竜一は部屋を抜け出した。
わずかな綻びから隙間を編み目を解くように開けられた穴に、術者は頭を抱えたらしい。
ミルさんの朝のお散歩時間を見計らい、気配を伺いながら、竜一は廊下をぶらぶらと歩いていた。
ふと、あかりの消えた厨房が目に入る。
「なんかおやつでも調達するかな~」
無事に出し抜いたことでいつもよりテンションが上がっているらしい。
軽口を叩きながら、向かった厨房、冷蔵庫を開くと使いさしのハムのパックが目についた。
「1枚くらい、バレない、よな?」
ぺろりと引き剥がして畳んでパクリ。
「~~!?」
久しぶりの濃い塩気と旨みに舌が喜んでいる気がした。
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数分後、廊下で壁に縋るようにうずくまっている竜一が、お手伝いさんにより発見された。
即時大量の白湯を飲まされて胃の中を空っぽにさせられ、無事部屋へと押し込まれ、部屋の本棚から結界関連のものは全て没収されたのだった。
夕食
「…………」
「そんな顔で見るなよ。兄貴があんなことしなけりゃ、昼からおじやにするかって話だったのに……」
呆れ顔の弟、樹に衝撃的な話を聞かされ、竜一は五分粥を前に打ちひしがれた。
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一月半後
「あ、そろそろ復帰しようと思ってるんだ。ほら、体ももう治ったし……」
「復帰って!あなた、死にかけたのよ!?お父さんももうちょっと休ませるって……」
「あ~、うん、そうだね、もうちょっと休もうかな……」
「……はぁ、なんで最近部屋くるの母さんばっかりなんだ……」
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二月後
「……そろそろ行けるか?」
自室にて、竜一は拳を握っては開き様子を確かめていた。
ぐっと握り締め、結界を壊せるだろう強度の力を込める。
「っせーの……っんぶ!?」
大きく腕を引き、拳を突き出そうとした途端に後ろから巨体にのしかかられた。
べしゃりと床へと這いつくばり、顔面を結界に強打する。
「~~っつぅ、ミルさん!?」
ぞり
まぶたを舐められて慌てて顔を手で覆った。




