幼少期
入学準備
ピカピカのランドセルに反射板を貼り付けながら、隣で何か改造できないかと悩んでいる春明を見て、修平の脳裏に電流が走った。
「は、春、お兄ちゃんって……何歳?」
「俺?何言ってんの?来年一緒に小学校上がるだろ?」
衝撃で固まる修平。春明も、竜一も、自身よりはるかに背が高い様子から、てっきり年上だと思い込んでいたのだ。
「お、おれ、おれ……これからは春って呼ぶ!!」
ぴしり
と、次に固まったのは春明の方だった。
翌日
ランドセルの見せ合いっこということで、竜一が上森家へと遊びに来たのだが。
「竜!竜も同じ歳だから、おれ、もうお兄ちゃんって呼ばないから!!」
キラキラした瞳でそう宣言され、修平の目の前以外の場所で、しばらく2人は落ち込んだのだった。
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工作
そこらじゅうに散らばる破片、切り損じてくしゃっと丸められた布テープ。
河上の家で3人のちびっ子が、部屋の真ん中で工作をしていた。
「修、そっち、ちゃんと持っててよ~?」
「うん!」
フードを被った1番小柄な修平が、しっかりとダンボールを支えていた。
春明と竜一は2人がかりで布テープを長く伸ばし、絡まないように気をつけながら切り取った。
そしてダンボール同士を張り合わせていく。
「はるお兄ちゃん、なんか斜めになってる?」
「あ、ほんとだ……ま、いっか。竜、もう一回ガムテープ切ろう」
途中までしか貼り合わせる役目を果たさなかったテープの残りを適当にダンボールへと貼り付けて、春明は再び布テープへと手を伸ばし、竜一に止められた。
「なに?」
「いっぺんに伸ばすよりも何度か小さく切って貼ったほうが良く無い?」
「あ、ほんとだ!りゅーお兄ちゃんすごい!」
修平の言葉にわずかに頬を赤くしつつ、竜一は春明と布テープでダンボールを貼り合わせる作業へと戻ったのだった。
この後、完成した段ボールハウスは無事ミルさんに入居していただけるのだが。
接着面が剥き出しになっていた布テープにミルさんの長毛がくっつき、良かれと思った春明がハサミで毛を切り取り、ミルさんに張り飛ばされる未来を、3人のおチビたちはまだ知らない。
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パッチテスト
霊気
診察室にて、椅子に座った4歳の少年にお医者さんが話しかけていた。
「今から修平くんの腕にシール貼るからね~、その後色々聞くけど、思った通りに答えてくれていいよ~?」
「うん」
修平は頷いて、ピンクのハートが描かれた丸いシールが貼られるのを見つめた。
5秒後、シールの周りを指でなぞられて質問が始まった。
「触ってるの、わかる?」
「うーん?よくわかんない、なんで?」
「えっとね、霊気に弱い子は感覚の麻痺、えっと、何されてるのかちょっとわかんなくなっちゃうんだよ」
「ほへ~」
そんなことを話しているうちに、修平はぼんやりと口を半開きにして、頭を揺らし出した。
「あ、意識の混濁確認、1分以内か、1番マシだろう霊気でこれとなると、あとの二つが怖いな」
お医者さんはそう呟きながら、ぺりりとシールを剥がすのだった。
妖気
「辛かったらすぐ言うんだよ?我慢しなくていいからね?」
「う?うん」
心配そうな顔で覗き込まれて首を傾げる修平。
お医者さんは赤く丸い跡の残る横へと青い魚の描かれたシールを貼った。
それから数十秒、見る間に白くなっていく顔色を見ながらはらはらしていたお医者さんと看護師さんは、修平が喉を鳴らしたのを見て規程の時間を切り上げることを決めた。
「ごめんね、辛いね、一回全部おえしちゃおう?」
そんな声をかけながら修平の背中をさすっている看護師さんと、えぐえぐと泣きながら洗面器を抱える修平。
お医者さんはやるせ無い気持ちでカルテに結果を書き込んだ。
神気
黄色い星の描かれたシールを貼った途端、椅子に座っていることもできずに落ちかけた修平を、看護師さんが抱き抱えた。
お医者さんは即時の中止を決定して、シールへと指をかけたのだが。
べろり
円形に剥がれた皮膚。
慌てたお医者さんが、心霊科で通常使われる希聖水液を洗浄に使ったことにより、被害の範囲が広がり、修平の腕にはしばらく包帯が巻かれることとなった。
検査結果
霊的抵抗性パッチテスト
霊気 極めて低い
妖気 極めて低い
神気 極めて低い 要注意
通常の生活は難しいです。
抵抗性の訓練は、必ず専門家の指導の元行ってください。
符や呪で常に外気との遮断が必要です。
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初対面
「この度はうちの遠縁が不始末を……」
庭で散歩をしていたところに現れた和装の少年。
今回の河上家が引き起こした事件の謝罪行脚に付き合わされ、殊勝な顔で近づいてこようとするのを、春明が声で静止した。
「待て、こっち来んな!そこで止まれ!!」
その必死な声に、河上の少年は戸惑ったように足を止める。
春明は慌てて隣の修平へと声をかける。
「大丈夫か?修?フード被って……」
「きゅぅ……」
一歩遅かったらしい。
河上の少年が纏う霊気に当てられて、ふらりと頭を揺らしたかと思うと、修平はその場で崩れ落ちた。
「っ!?大丈夫か?」
何かが起こったことを察して、河上の少年が駆け寄ろうとするも、再び怒鳴られる。
「来るな!そこで止まれって!てかいっぱい出すな!ぎゅーってしろ!その霊気!!」
繰り返される理由のわからない命令に、ついに少年の被っていた猫が剥がれ落ちた。
「は!?こっちがごめんって言ってんのに偉そうに!何も知らないくせにれーきぎゅってしろとか、おばかさんかお前!?」
「何だよいきなり!?はっ、何だ、自分の力もまともに使えないはんぱものか」
「はんぱ?……いい、じゃ、止めてやるよ、こーかいすんなよ?」
その後すぐ、集まった保護者たちが見たものは、河上の少年こと竜一の、妖魔に好まれるという生まれ持った体質により集まった、彼が隙を見せるのを待ち構えていた妖魔の群れ。
そして、ギャースカ喧嘩しながら敷地内に入ってきた妖魔たちを蹴散らしてる2人の少年の姿。
霊気酔いだけではなく、妖気酔いも引き起こしていた修平はすぐに病院へと搬送され、2人の少年はそれぞれの親から拳骨と共に厳しいお怒りの言葉を喰らったのだった。




