学生時代 下
ブレスレットブーム
「へ~、金運アップとかいいな~。うえ、高い」
高校の帰り道、なぜか薬局の店頭に並べられたブレスレット、その効能を見て石ってすごいな~などと考えていると、隣の商品台には山と積まれた多種多様なブレスレット。
『セール!一本千円!!』
何人かが集まって、山を崩しながら良さそうな掘り出しものを探していた。
「あの腕輪より自分が着てる上着の方がよっぽど高いって知らないのか?」
「知ってるだろうけど、無いと生活できないから必要経費って割り切ってるっぽい」
後ろでは竜一と春明がそんなことを話していた。
ぴく、と何かに気づいて修平へと近づく春明。
「修、どうした?」
「いや、なんかいいの無いかなって探そうとしたら、ちょっと手がピリッとした」
少し難しい顔をしていた春明だが、はっと何かに気がついて、ニヤリと悪い顔をする。
「竜、ちょちそっちの隅っこに場所作って、仕分けるから。あと、今いくらくらい持ってる?」
そして、三人は財布の中身を全て費やして買えるだけのブレスレットを持ち帰り。
神気と霊気の強いものは効果のあるお守り用としてほどほどの値段で、妖気を纏うものは色々と用途があるため高額で、最終利益を三人で山分けしたのだった。
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中学一年
神社の拝殿にて、胡座を描いて不貞腐れてる神様へ、春明はため息を吐いた。
「だから修平は元気にしてるって、卒業式と入学式の写真見せただろ?」
「写真じゃわからんもん」
「いい歳したじーちゃんがもんとか言うな。まだ穢れが残ってるから神気の調整きかないんだからしょうがない」
境内の草を引き抜きながら、チラリと伺うと、ほとんどわからないほどに薄まった陰の気配。
「そろそろ神主さんにも会うか?」
「……会いたくない」
そっぽを向く神様。
「向こうは会いたいらしいぞ?」
「……合わせる顔がない」
その正直な言葉に春明は吹き出した。
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小学六年生
健康診断
霊気
別室で、修平はハートのシールを腕に保健室の先生とおしゃべりをしていた。
「せんせー、後何分?」
「後1分ちょっと、大丈夫?」
「うん、ちょっと、ふらってするけど、まだ大丈夫」
この後、無事に五分間耐え抜いた修平だが、腕の半分ほどに及ぶ感覚の麻痺がバレ、少しだけ怒られた。
妖気
「はい、5分経ちました」
「っしゃ!ほとんど気持ち悪くならなかった!頭もクラクラしなかったし!」
そう叫んで勢いよく椅子から立ち上がった途端、修平は貧血を起こしてしゃがみ込んだ。
「はぁ、顔色は悪くなってたから、そりゃそうなるわ」
呆れ顔の先生は、それでも記録用紙に弱い、とだけ記入してくれた。
神気
「これは許可出てないからダメでーす」
星のマークが描かれたシールを、先生はきっちりと小6男子の手が届かない場所へと仕舞い込んだ。
「えぇ~、試すだけ!」
「だーめ。どうしてもって言うなら病院でやってもらうこと」
「はーい」
渋々ながら頷いて、修平は廊下で待っている二人の元へと向かい、小学生最後のパッチテストは終了した。
翌日、紫色に変色した隣り合った二つの丸を眺めてた修平、なんと声をかけたものかと横目で春明がチラチラ見ていたのだが……
「サングラス!」
修平のあげた声に盛大に噴き出す羽目になった。
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小学五年生
「うああぁぁ……後ちょっとだったのにぃ……」
恨めしげに半紙を睨みつける修平。残すところ四半分まで書き上げた漢詩を眺め、諦めきれずに画数を間違えた漢字へと一本付け足す。
そして、あまりの不恰好さに崩れ落ちた。
隣では結界術の本を読みながら、またやってると春明が笑いを堪えていた。
そんな二人の傍で、空気がぐるりと渦を巻いた。
「は?」
春明は本を置き、慌てて椅子から立ち上がる。
「え?何?」
修平は不思議そうに渦を眺めていた。
ぽん、と渦が凝って小さい何かが転げ落ちた。
それが発するのは弱いながらも間違いなく妖気。
「修、フード被れ」
春明はそれだけ言って小さなそれを両手で包み隠す。
慌てて上着を羽織り、フードまでしっかり被ったのを確認して、手の中へと意識を向ける。
モゾモゾして、時折固いものがツンツンと手のひらを突いている。
そこまで力のある妖魔ではないらしい。
そこへ、トイレに行っていた竜一が戻ってきた。
家の中なのに上着を羽織り、フードまで被った状態の修平、両手を合わせて中に注意を向けている春明。
「何があった?」
「わからん、なんか急にちっこい妖魔?っぽいのが出てきた。お前最近そう言うの調べてただろ、何かわかるか?」
「どれ、ちょっと見せて」
顔を近づけた竜一へと、春明がわずかに手の隙間を広げる。
ぴこり
飛び出してきたのは枯葉色の鳥の頭。
ぴぃ
ひとなきすると、竜一の顔を見つめてパチクリと瞬いた。
「……多分だけど、言盗?」
頭の上でスピスピと寝息を立てる小さな鳥に戸惑いながら、竜一が答えた。
「んで、なんでそんなんが急に現れて、お前に懐いて寝てんの?」
「可愛いね~」
手を伸ばしかける修平の腕を掴みながら、春明は怒ったように尋ねた。
「そんなの僕の方が聞きたい」
「あ、俺知ってる!」
そんな二人の話に割り込んで、修平が嬉しそうに語り出した。
「あれだ、今生まれたばかりだっただろ?んで、春が捕まえて真っ暗になった。そっから初めて見たのが竜だったから、竜をお母さんだと思ってる!!」
コトトリが目を覚まし、床に下ろして3人で歩き回ったところ、竜一の後ろをついて回り、修平の言が正しかったことが証明された。
「な~、こいつ何食うんだ?」
若干嫌がるコトトリを指先でつつきながら、春明が竜一へと尋ねた。
「本とか巻物から文字を食べるらしい。だから言盗。なんでも、筆耕や寺とかでよく見かけたとか。今はほとんど見ることもなくなったって話だけど……」
説明しながら、二人の視線は次第に修平へと集まっていく。
「仮説だが、書き損じを消し去りたいって感情が凝ったんじゃないかって一説があって……」
「え、俺?え、妖魔生んじゃうくらい強かったの!?俺の書き損じ」
「あ~、多分、うちの環境も大きかったんだろ、外から気が入ってこないようにって部屋ごとに切り分けてるから、溜まりやすかったんだろうな……」
「春~、見てみて!!」
手のひらにコトトリを乗せた修平を見て、春明と竜一は慌てたが、妖気酔いの様子は見られない。
「修、気分は?触って大丈夫なのか?」
「あれ?本当だ!?なんで?」
「……修の感情から生まれたから、親和性があるとかか?」
「ま、いいや。木の葉、お手」
ぴ
ひと鳴きして、差し出された修平の人差し指へと右足をかける。
「いい子、おかわり」
ぴぃ
続いては左足。かなり知能が高い妖魔らしかった。
「おぉ~、すげ~、んで、木の葉ってのは?」
「名前、木の葉色だし」
「……そっか、わかりやすくていいんじゃないか?竜ママはどうよ?」
「ママって言うな!ま、いいんじゃないか?本人(?)も受け入れてるみたいだし」
「…………気が乱れてる、書き直し」
自信満々に差し出した、木の葉の協力のもと書き上げた最高傑作を差し戻され、修平はしばらく落ち込んだ。




