子守……ではあった
それから、さんざん俺で遊び倒したしのと人形達は満足したのか、しのが大きなあくびをしたのを契機に開放してくれた。
玄関の見送りに手を振って、眠たそうなしのの手を引いてドアを開けると、まず目についたのは若い男女。
「しの!」
駆け寄り、無事な姿を何度も確認して、女性はぎゅっとしのを抱きしめた。
「しのちゃん、よかった……」
男性の方は安心したように大きなため息。
「おばちゃん?」
瞳をぱちくりしながらされるがままのしの。俺はそっと手を離して一歩離れる。
そんな俺に近づいて、男性が一度頭を下げてから真剣な顔でこちらを見つめる。
「この度は、ろくに説明もせずに本当にすみませんでした。お礼は後日改めてうかがわせていただきますが、本当に、ありがとうございました」
再びの深い礼。
その後ろにいる五人の、年齢も様々な女性陣も一緒に頭を下げてきて、こちらとしては非常に、ひっじょーにいたたまれない。
「あの、頭を上げてください、今回の、その、説明って……」
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しののおじさんは、あの洋館へと女性の方々が桐箱を持ち込み、再び運び出して黒塗りの大きな二台の車へと運び込んでいる間に、簡単な説明をしてくれた。
何でもしのは、十六代続く人形使い一族の後継者だったそうな。
しのの両親が亡くなったのは本当に不幸な事故で、前々から準備を進めていたこの日を変えることはできずに決行をせざるを得なかったとのこと。
先代からの引継ぎができなかった場合、後継は何も知らない女児でないといけないという決まりから、断腸の思いで、それでも危険が無いようにと俺を子守として雇ったと。
「せめて事前に何らかの説明欲しかったんですが……」
「それが、何も知らないことが立会人の条件でして、三代ぶりの後継の儀だったのでどこまでお伝えしていいのかが分からず……」
まぁ、後継の儀とやら、人形達への名づけも無事に終わったんだし、結果よければすべて良し、か?
色々と聞きたいことはあったけれど、一族のことにそこまで口を挟むのも後が怖いし、いいか。
「大川君、本当にありがとう」
「いや、まぁ、はぁ。そういえば、何で俺のメールアドレス知ってたんですか?」
依頼人であるしののおじさんに両手をぎゅっと握られて、三度頭を下げられて、とても居心地が悪いので話をそらそうと聞いてみた。
「ああ、それは、上森学園の理事長に誰か良い人がいないかを聞きに行った時に、甥御さんが教えてくれたんですよ」
上森学園、理事長の甥っ子って……春じゃねぇか!?
釈然としないものを感じつつの帰り際、来たときと同じく運転手付きの車で駅まで送ってくれるというので乗り込むと、ようやく抱きしめから解放されたしのが駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん!」
「お、おばさん達ちゃんと帰ってきてくれて良かったな」
「うん!お兄ちゃん、あのね、あやちゃん達がお兄ちゃんにまた遊ぼうって。それとね、もう今日は終わっちゃったけど、これからもお兄ちゃんって呼んでいい?」
人形たちが積み込まれた黒塗りの車を見て、伝言を伝えるしの。後半は少し恥ずかしそうに、俺に顔を近づけてささやいた。
「しのが呼びたかったらいいよ。遊ぶのは……まぁ、暇があったらって言っといて」
「うん!」
そんなこんなで、途中まではホラーに、最後はあっけなく、今回のバイトは無事終了したのだった。




