エピローグ
あの家さえ無くなれば!
幼いころから子守歌代わりに育った。大切な役目だって言い聞かされていた。
だからって、生贄のようにわが子を差し出せとか正気とは思えない。
「こんな遅くに伺っても大丈夫なのかな?」
運転席、不安そうに夫が呟いた。
明後日、一族にしの以外の女の子がいないという理由で一日閉じ込められる家。
かつて、私が逃げ出した家。
「運転お願いしちゃってごめんね?あの家は手入れはされてるけど、誰も住んでないから大丈夫よ。ちょっと必要な準備を忘れてて……」
灯油の入ったペットボトルとライター、いつもより重くて膨れたバックをぎゅっと抱きしめた。
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きゃいきゃいと楽しげな声がするドアの向こう、俺は一人で廊下にたたずんでいた。
コツコツ
ドアをノックして声をかける。
「そろそろ帰っていーい?」
子供達が迎え入れてくれてようやくの明るさにほっと息を吐いた。
「ただいま~」
『おかえりなさ~い』
ぞろりと人形としのの笑顔が並ぶ。やっぱ、笑ってる方が可愛いな。
「お父さん!ごはんにする?お風呂にする?」
『お父さん!お馬さんして!!』
わちゃわちゃと足元を取り囲まれて、四つん這いになった背中に人形たち全員にのしかかられて、そこにしのまで飛び込んで来て、俺の腰は死にかけた。
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「……って感じだったな~」
河上家の竜一の部屋にて、修平は出されたせんべいをかじりながらそんな言葉で締めくくった。
「ずいぶん楽しそうなことに巻き込まれてたんだな」
竜一はパソコンのキーボードをたたきながらも感想を述べる。
春明は修平のスマホを受け取って設定から何かを確認していた。
「俺の話聞いてた!?途中までは大変だったし結構怖かったんだけど?」
「聞いてる聞いてる……人形使いで代が途切れてたっていうと、伊藤か?」
竜一はパソコンのメールボックスに届いていた、退魔関連のニュース案内をクリックしてから確認した。
「あ、うん。結構有名な家だったのか……しのはお母さんが結婚して佐藤になってたんだけど、おじさんとこの養子になるから伊藤になるらしいよ」
山道に「動く影」、夫婦死亡の惨劇 人形師伊藤分家の男、退魔法違反で逮捕
——ぬいぐるみを操作し、走行車両を急襲か
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春明がスマホの電源を切り、修平には返さずにそのまま立ち上がった。
「修、バッテリーかなりやばいことなってるから新しいの買いに行くぞ」
言いながら、部屋に丸めて置かれていた上着を拾って放り投げる。
「は?え?いや、新調する金無いんだけど……」
受け取りながら、とまどった声で返す修平の腕をつかんで無理やり立ち上がらせた。
「今回の紹介料入ったからな、買ってやるよ」
「へ?……っ!?そうだ!!お前、春!勝手に人の個人情報もらすとか、プライバシーの侵害だろ!?」
おそらく、ニュースが下火になるまでの数日間は、何かと理由をつけてテレビや新聞から引き離すんだろうな。
そんなことを考えながら、竜一は騒がしい友人二人を見送った。




